松坂桃李:「御上先生」主演 自身の子にも“御上イズム”を伝授? 人生観にも影響を与えた言葉とは?

連続ドラマ「御上先生」の一場面(C)TBS
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連続ドラマ「御上先生」の一場面(C)TBS

 俳優の松坂桃李さん主演のTBS系日曜劇場御上先生」(日曜午後9時)の第9話が3月16日に放送される。今作では、文科省官僚の御上孝(松坂さん)が私立の進学校「隣徳学院」に派遣され、3年2組の教壇に立つと、身近に起こった社会的な問題に対して、生徒たちに「考えて」と問いかける。松坂さんが「これほどまでにやる意義のあるドラマは初めて」と話す今作の役作りについて、また自身も2023年に父になり、作品から得た自身の子どもに伝えたいメッセージを語った。

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 ◇「教師役でしか得られない緊張感」教壇に立つと視線が集中

 ドラマは、日本の教育を変えようという思いを持つ文科省官僚の御上孝(松坂さん)が、自ら私立高校の教壇に立ち、令和の時代を生きる18歳の高校生を導きながら、権力に立ち向かっていく、オリジナルの“大逆転教育再生ストーリー”。松坂さんの主演映画「新聞記者」(2019年)以来のタッグとなる詩森ろばさんが脚本を担当。「VIVANT」(2023年)など話題になった日曜劇場を担当してきた飯田和孝さんがプロデューサーを務めている。

 取材は、御上が兄の話を告白した第6話の放送のあと、撮影中の現場で実施。ドラマの前半を振り返り、松坂さんは「ようやく折り返し地点を過ぎたなという感じもして、でも、まだまだ詩森さんが伝えたいことや、飯田プロデューサーが込めたメッセージ、各話を担当した監督たちが見せたいものなど、たくさん残っているので、本当に最後まで気が抜けないなという思いでいっぱいです」と気を引き締めていた。

 第6話で、御上が3年2組の生徒の前で兄の話を告白したシーンは、「生徒それぞれの表情を撮るときに、監督の『鮮度を保ちたい』という思いもあって、頭から(もう一度)やりますかと、撮影する生徒分、(何回も同じシーンの)お芝居をやりましたが、そのときは久しぶりに疲れました」と笑顔で語る。

 御上を演じる上で とくに気を配ったのは教壇に立つシーンだ。「教室での目線です。ちゃんと生徒一人一人に向かって授業をするということは、自分の中で意識しました。何となく全体を見ているような目線の動きではなくて、ちゃんと一人一人を見るように。本当に授業をするような感覚でやろうという意識はありました」と話す。

 教壇に立って話すシーンは「結構カロリーを使います。生徒を前にして教壇に立つと、立った人にしか分からないことだと思いますが、ものすごく視線が集中するんです。そうすると一気に緊張感が口から胃の中に急激に入ってくるような感じというか、そういった教師役でしか得られない緊張感みたいなものがやってくるんです」と明かす。

 ◇御上孝は「クール一辺倒では絶対にいけない」

 一見クールに見える御上先生だが、中身は熱いものを持っている人物。演じるに当たって松坂さんは「クール一辺倒では絶対にいけないと思ってこの現場に参加しました」という。

 「一面的にやるのは多分、そこまでカロリーを使わないと思います。クールでいればいいので。御上自身も官僚でエリートでクールで冷徹でというワードでくくればその通りですが、でもそれだけではない。やっぱりちゃんとした人間ということを踏まえて考えると、多面的であるべきだと思うんです。どんな人であれ、絶対にいろんな面を持っている。その多面的な部分、御上なりの深みを表現できればいいなと思ってやっています」

 御上を他面的に演じる上では、「僕一人でこの人物を作り上げたというより、キャストの方たちそれぞれとお芝居をすることによって、御上孝という人が形成されている」と他者との関わり合いの中で御上の多面性を表現している。

 御上のキャラクターの幅とは?「根本は、彼の教育を変えたいという思いの強さがあり、そこへ思いが至ったのは兄の事件があったから。兄に執着している理由、それは兄に尊敬と憧れがあったから……このように深掘りをしていく中で、御上なりの深みを表現した」という。

 ◇御上の「考えて」で自身の人生観も変わった

 御上を演じていて、一番印象的なせりふは「考えて」という言葉だった。

 「毎話毎話、御上が生徒に対して、授業をするシーンが、本当に印象に残っていて。どのシーンにおいても御上は『考えて』って必ず言うんです。たった3文字ですが、場面によってニュアンスが少しずつ自分の中でも変わってくるというか。物語が進むにつれて『考えて』のニュアンスが生徒の皆さんのお芝居を見て少しずつ変わっていく。それは僕自身も本当に初めての経験で、すごく印象に残っています」

 「考えて」という言葉には自身の人生観も変わったという。

 「考えても答えは出ないことかもしれないですが、考えて考えて考え抜いていく。その考える力というものが、きっとそれぞれの歩んでいく人生で必要なことなのかなと。今、世の中はものすごく情報が飛び交い、うそも真実もさまざまある中で、簡単に手のひらを返されてしまうようなこともある。そういう情報化社会で、自分主体で考えること、想像力を働かせながら、一面だけの情報に惑わされずに、ちゃんと自分の中で考え続ける力が必要なんじゃないかっていうことを、改めて教えてくれる作品。僕自身にとってもすごく学びになりました」

 2023年に1児の父となった松坂さん。「僕自身が父親になったからこそ、10年後、20年後の日本の教育の環境がどうなっているのかすごく気になります」と父の顔で語る。

 「なにより、生徒自身が主体性を持って考え、発言に責任を持って、物事に向き合っていく、そういった教育環境が主体となれば、また(今とは)違った世の中になっていくんじゃじゃないかなと思っています」と力を込める。

 これから成長していく自身の子どもに伝えたい御上の言葉を聞かれると、やはり「考えて」だと答えた。

 「まだそんなに言葉も分からない年齢ですけど、『一緒に考えてみよう』ということを言い続けようと心に決めました。親が歩んできた人生経験から答えを出すというのはそれほど難しくないことだと思いますが、子どもと一緒に成長しながら考えるということの大事さを、改めてこの作品で学ばせてもらったので、この作品で得たものはしっかりと自分の人生においても持ち続けなきゃいけないと思っています」

 松坂さん自身の人生観にも影響を及ぼしている「御上先生」。主演として「メッセージ性とエンタメ性を融合させて、視聴者の方にお届けしたい」と力を込める今作は、本日(3月16日)に第9話を迎える。のちに語り継がれるドラマになるであろう「御上先生」がどんな大団円を迎えるのか、最後のシーンまで見届けたい。

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