秘密~THE TOP SECRET~:原作・清水玲子と脚本・佐藤嗣麻子が対談 板垣李光人と中島裕翔のバディー感が見どころ つらい話は続くが「最後は救われる」

連続ドラマ「秘密~THE TOP SECRET~」の原作者・清水玲子さん(左)と脚本を担当した佐藤嗣麻子さん=カンテレ提供
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連続ドラマ「秘密~THE TOP SECRET~」の原作者・清水玲子さん(左)と脚本を担当した佐藤嗣麻子さん=カンテレ提供

 俳優の板垣李光人さんと、人気グループ「Hey! Say! JUMP」の中島裕翔さんがダブル主演を務める連続ドラマ「秘密~THE TOP SECRET~」(カンテレ・フジテレビ系、月曜午後10時)。マンガ誌「メロディ」(白泉社)で掲載された清水玲子さんの「秘密-トップ・シークレット-」とスピンオフ作「秘密 season 0」が原作で、脚本は、「アンフェア」シリーズ(同局系)や映画「陰陽師0」(2024年)などを手がけた佐藤嗣麻子さんが担当している。清水さんと佐藤さんは2月中旬、そろって千葉県内にある「第九」捜査室のセットを訪問。ドラマの撮影現場を見学したあと対談に臨んだ。ドラマ公式X(旧ツイッター)に寄せられた2人への質問をもとに、ドラマ化のいきさつやキャストの印象、ドラマへの思いを語った。

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 ドラマは、科学警察研究所の法医第九研究室、通称“第九”が舞台。第九の室長・薪剛(まき・つよし)を板垣さん、かつて第九メンバーで、ある事件で命を落とした鈴木克洋と、その後、第九に配属される、鈴木とうり二つの新米捜査員・青木一行を中島さんが一人二役で演じる。

 ◇セットは「クラシカルな作り込みがおもしろい」

 --撮影現場の見学を終えられたばかりですが、雰囲気はいかがでしたか?

 清水玲子さん:ドラマの内容はピリピリしているものが多いんですけど、現場は皆さん和気あいあいとしていて楽しそうですね。(セットは)クラシカルな作り込みがおもしろいなと。ちょっと昭和初期のような。

 佐藤嗣麻子さん:そうそう、昭和の感じ。あれは、セットデザイナーさんが「昔の秘密基地っぽい感じにしたい」と言って。MRI映像をさかのぼって再生するときにキュルキュルってくるくる回すのはいいですよね。

 清水さん:そう!「あ、マンガの感じを生かしている」と思った。

 --お二人の出会いについて教えてください。

 清水さん:(佐藤さんが)萩尾望都先生のCD-ROM作品集の監督をされてらっしゃったんですよね。それでインタビューに来てくださって。

 佐藤さん:そこで知り合いになって、その後も舞台を萩尾先生と一緒に見に行ったり。あと、よくマンガ家さんのパーティーに呼ばれて出入りしていたので、しょっちゅうお会いしていましたね。

 清水さん:基本、少女マンガ脳の方だから(笑)。その上に映像が乗っかっているみたいな人なんですよ。

 佐藤:そう、基本が少女マンガ(笑)。元々、萩尾先生の作品を勉強して、ページ数とコマ割りを見て起承転結を覚えたんですよ。だから脚本を書くにしても萩尾先生のマンガがベースになっていますね。

 ◇人間関係が見どころのドラマ

 --「秘密」の映像化は何度か企画が立ち上がったというお言葉がありましたが、どのような経緯を経て今回実現したのでしょうか?

 佐藤さん:長いお話なので、私はやっぱり連ドラがいいと思っていたんですが、なかなか引き受けてもらいづらかったというか、内容が激しいので(笑)。

 清水さん:そうですよね。そこは読者の方々も心配していたところだと思います、「地上波で大丈夫なの?」って。マンガのほうはかなりグロいので(笑)。

 佐藤さん:マンガはそのグロさが美しい画(え)でオブラートに包まれているんですが、ドラマだとどうしてもそこがリアルになってしまう。でも本当はそれをやりたかった、デヴィッド・フィンチャー監督の「セブン」みたいな感じで。

 清水さん:あはははは。そういう意味では、映像の怖さではなくて、“人間関係”が見どころのドラマになっていますよね。

 佐藤さん:そう。やっぱり薪・鈴木・青木・雪子(門脇麦さん)の4人の人間関係がどう変わっていくかという話を作りたくて。Xで募集した質問の中にも「どうやってエピソードを選定していますか?」とありましたけど、4人の関係が変わるエピソードを選んでいます。あと、「どうして(露口)絹子の事件が1話目だったのか?」という質問もありましたが、それは、4人の関係が変わる話じゃないんですけど、もったいないから絶対やりたいと(笑)。大好きなエピソードだったので。

 清水さん:わかります。私も絹子のエピソードは、「秘密」最初の12巻の中ではかなり好きなほうです。

 ◇薪の気持ちをきちんと視聴者が追体験してほしかった

 --ドラマをご覧になった感想はいかがでしょうか?

 清水さん:もう感無量ですね。生きている鈴木を自分でもあまり描いたことがないので、1話目でがっつり生きている鈴木を見ることができて、「あー鈴木をもうちょっと描けばよかったな」と思っちゃいました。なので、それを読切作品として描きました。鈴木をちょっと回想するお話です。

 --それが「メロディ」4月号(2月28日発売)に掲載される特別編ですね。鈴木が1話目から出てきたことについてどう思われましたか?

 清水さん:すごくサディスティックですよね(笑)。マンガでは最初から死んだものとして描いていますけど、ドラマでは、あんなに優しくて頼っていた鈴木がいなくなっちゃうんですから。

 --鈴木を1話目から登場させるというのは、どのような意図で?

 佐藤さん:映像作品だと、フラッシュで出てくる過去回想はどうしても弱いんです。「これなんなの?」って思っているうちに終わっちゃって感情移入ができない。やっぱり視聴者の方には、薪と同時に貝沼に会ってほしいし、鈴木に会ってほしいし。で、鈴木に死んでほしいし、貝沼に死んでほしい。その薪の気持ちをきちんと視聴者が追体験してから青木に会ってほしかったんです。そうじゃないと、薪がなぜあんなに悩んでいるのか、なぜすぐに気絶しちゃうか、一緒に体験しないとわからないと思うんですよね。

 --そういった原作からの変更は、どのような話し合いのもとに進めていかれたのでしょうか?

 佐藤さん:もともと最初に作った構成を清水さんに「いかがですか」って感じで見せていたんです。

 清水さん:なので、貝沼の設定が違うということは当初から知っていました。

 佐藤さん:その後も、違うかなと感じる部分はお互いに話をしてきました。清水さんから「いや、ちょっとこれは」って言われたら直して、こちらから「ここはこうしたい」って御相談したり。

 ◇板垣李光人と中島裕翔の印象は?

 --薪役・板垣李光人さんの印象を教えていただけますでしょうか?

 清水さん:回を重ねるごとにどんどん本当に薪みたいになってきて。寝ているだけでも薪みたい(笑)。「silent」(2022年)も見ていましたし板垣くんを知ってはいたんですけど、もう「silent」の顔と違うんですよ。顔そのものは変わってないのに、こんなに変わっちゃうんだって感じですね。驚きました。

 --鈴木克洋・青木一行の一人二役の中島裕翔さんについての印象はいかがでしょうか?

 清水さん:素晴らしいです。中島くんファンになりそう(笑)。演じ分けも見事ですね。止まった映像でも青木と鈴木だと顔つきが違うかなと。声の出し方も違う。相当気持ちから持っていって変えているんだろうなと思います。

 --視聴者からの質問にもありましたが、なぜ「一人二役」にされたのでしょうか?

 佐藤さん:それしかないというか、別人だと視聴者の方が見ても「あ、同じ」って思わないじゃないですか。同じ人が髪形や雰囲気を全部変えてやるからこそ「似ている」となるのであって、絶対同じ人がやるべきってもう最初から私は思っていました。

 清水さん:そうなんです。でも期せずして、“中島くんの一人二役演じ分け”っていうところも見どころになった感じですね。

 ◇貝沼の設定変更は「薪をもっと苦しめようと」

 --貝沼の人物像が原作からガラッと変わりました。佐藤さんはどのようにこの設定を思いつかれたのでしょうか?

 佐藤さん:いやもう、薪をもっと苦しめようと(笑)。

 清水さん:あははははは。だから薪は信頼している人に裏切られ続けちゃう(笑)。

 佐藤さん:あと、貝沼には鈴木とも関係していてほしかったんです。原作は薪と貝沼の関係だけなんですが、鈴木もそれを知っていてほしいし、その関係に加わっていてほしかったんです。それと、MRIがすごく複雑で説明が大変なので、誰かそのエキスパートが説明してくれたほうが楽だな、というところから貝沼が教授になりました。

 清水さん:そう、描いているときも思ったんですよ、ホームレスのような貝沼がどうやって少年院のセラピーに行ったのか。そこは確かに脳科学の教授だったらできますよね。

 佐藤さん:催眠も脳科学の教授ならかけやすいだろうと。

 清水さん:しかも、貝沼が鈴木をターゲットに決めた理由が、“薪が鈴木に視線を送っていたから”、それでロックオンって。恐ろしいですよね。鈴木くんに見せて狂わせてやろうって感じがもう。最初から催眠術のためにお香焚(た)いていたもんね。それもサディスティック(笑)。

 佐藤さん:余計に薪が苦しむ(笑)。当たり前だけど、ドラマだとマンガより表現がマイルドになっているでしょ。だからそこは心理戦で攻めていかないとな、と。

 --國村隼さん演じる貝沼清孝の印象はいかがでしょうか?

 清水さん:怖いですねえ。それこそアンソニー・ホプキンスみたいな怖さが。立っているだけで怖いっていうのはなかなか出せないですよね。実は國村さんがキャスティングの第1希望だったのでうれしいです。國村さんは本当に声がよくて、鏡を見てしゃべっているだけなのに、どうしてこんなに怖いんだろうって。だから、貝沼の映像を見た薪がフッて倒れるのも、確かにそうなるよなって思います。本当に怖い。

 ◇薪と青木がバディー感を強めていく関係を見てほしい

 --原作ファンの方や周囲の反応についてどうお感じになっていますか。

 清水さん:いろいろな感想を拝見しましたが、「とにかく3話まで見てくれ」と思っていました。でも、「よくぞこのキャスティングにしてくれた」って方が多いですよね。

 佐藤さん:そうですね。原作物のドラマをやると必ずこっち側からあっち側までいろいろな意見をいただきますが、今回キャスティングにしてもストーリーにしても肯定的に受け止めてもらっているなと感じています。私は清水さんの大ファンですし、「秘密」も大好きだから、ファンが怒っちゃうとほんとに悲しいので、そうならなくてよかったなと思っています。

 --最後にドラマの見どころ、ご覧になっている方々へのメッセージをお願いします。

 佐藤さん:テーマとしては“罪と赦(ゆる)し”、そして、“死と再生”の話になっています。そこに向かっていくので、つらいお話は続きますが、最後は救われると思いますから、ぜひ最後まで見てください。

 清水さん:鈴木の面影を見て、薪がだんだん青木とのバディー感を強めていくという関係もぜひ見てほしいですね。この先、青木が大変な目に遭っちゃうので、中島くんがんばって(笑)。

 ◇原作者・清水玲子さんのプロフィル

 1983年、「三叉路物語(ストーリー)」でデビュー。2002年に「輝夜姫」で第47回小学館漫画賞を、2011年には「秘密-トップ・シークレット-」で第15回文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞。現在は「MELODY(メロディ)」(白泉社)で「秘密 season 0」を連載中で、最新作「DNA」編11・12巻は2月20日に同時刊行された。麗かつ繊細なタッチで描いた絵と、深く壮大な世界観の少女マンガ作品は、熱狂的なファンを獲得している。

 ◇脚本家・佐藤嗣麻子さんのプロフィル

 映画監督、脚本家。1987年、ロンドン・インターナショナル・フィルム・スクールへ留学後、脚本・監督を務めた日英合作映画「ヴァージニア」(1992年)で東京国際ファンタスティック映画祭「アボリアッツ賞」を受賞。また、1995年の監督作「エコエコアザラク」が、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で批評家賞(南俊子賞)を獲得。映画・ドラマの「アンフェア」シリーズやドラマ「サイレーン 刑事×彼女×完全悪女」、映画「陰陽師0」など数々のヒット作を手掛ける。

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