海に眠るダイヤモンド
最終話後編(10話)記憶は眠る
12月22日(日)放送分
11月12日からWOWOWで放送される「連続ドラマW OZU ~小津安二郎が描いた物語~」(日曜午後10時)の第1話で主演を務める俳優の田中圭さん。小津安二郎の初期のサイレント映画を現代に置き換えた設定でリメークしたオムニバス形式。映画「女子高生に殺されたい」(2022年)でタッグを組み、本作の脚本・監督を務める城定秀夫さんとの再会、役作りや作品の印象、40歳を控えた心境を聞いた。
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◇小津作品から俳優として向き合うことを再確認
田中さんが出演する第1話は、1933年のキネマ旬報(キネマ旬報社)ベスト・テンで第1位を獲得した人情喜劇「出来ごころ」をリメーク。工場に勤務する喜八(田中さん)は、相棒・次郎(渡邊圭祐さん)の助けを借りながら息子・富夫(森優理斗君)と暮らしていたが、ある日出会った春江(白石聖さん)に熱を上げ、恋仲になろうと奮闘する。しかし、春江は次郎に思いを寄せていて……と展開する。
今作のオファーを受けた田中さんは、「(城定さんと)以前組んだとき、(映像の)上がりを見て画の強さやカッコよさがあり、すてきな監督だなと。またご一緒したいと思っていた」と話し、「僕(のキャスティング)は城定さんからのリクエストと伺って、声がかかったことにわかりやすく浮かれました」と笑顔を浮かべる。
原作を見て「どうして自分なのだろう」と違和感を覚えたという田中さんは「ビジュアル面ではズボラさやだらしない感じを出すのに無精ヒゲはわかりやすいけれど、自分はヒゲが生えない」と苦労を告白。「監督のこだわりが込められた衣装と、姿勢やトーンとか雰囲気などで喜八のイメージを表現しました」と役作りを説明する。
小津作品の印象について「語れるほどすごく詳しいというわけではないですが」と前置きしつつ「昔の作品に触れるときに感じる普遍的なものの強さは、何年ぐらい前からずっとそうなのだろうと思うことがあります。愛され続けたり、後世に語り継ぐべきだと多くの人が思ったり、求められるものは大事な何かをがっちりつかんでいると今作で改めて勉強させていただきました。そういうところと向き合うのが俳優の仕事でもあるので楽しい作品でした」と充実感をにじませる。
来年には40歳を迎える田中さん。「思ったよりも年齢を重ねることへの恐怖はない。先輩たちがすてきなのでまったくないです」という。
自身の30代を「豊か」と表現。「公私とも周りにも仕事にも恵まれ、さまざまな経験をさせてもらった」と振り返り、「年代で分けるとするのであれば、40代に向けて、30代で出会った人たちは、これから先も一緒に仕事をしたいと思える方ばかり。いろいろ恵まれていた」と感謝する。
30代でやり残したことはと聞くと、「やり残したことはないです」ときっぱり。「30代では俳優としてまた一つ自覚も出てきて、周りの皆さんが評価してくれる“基準”のようなものが、良くも悪くもできて、ダイレクトに感じるようになりました。40代でさらに伸ばすのか壊すのかわからないですが、それは大きかったです」といい、「そこを作るまでにもがき苦しむ時間はあったので、そこができたことは大きいかもしれません」と語る。
近年では多くのドラマや映画に出演しているが、田中さんは「求められているのであればうれしいですが、そこは不安とも戦っています」と意外な言葉を口にする。
「シンプルに出過ぎじゃないかなって(笑い)。ただいろいろ考えても現場に行くと楽しいし、人と作品を作ることや芝居することが楽しい。忙殺されることなく、自分が上がっていけばいいだけ。自分に負けないで、どんどん楽しんでいけたらと思っています」
「連続ドラマW OZU ~小津安二郎が描いた物語~」は、11月12日から毎週日曜午後10時にWOWOWプライム・WOWOW4K・WOWOWオンデマンドで放送・配信される。全6話。(取材・文・撮影:遠藤政樹)
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