奥田瑛二:「まどか26歳」主演・芳根京子の印象明かす 「つらい顔をしているのを一度も見たことがない」

ドラマ「まどか26歳、研修医やってます!」に出演する奥田瑛二さん(C)TBS
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ドラマ「まどか26歳、研修医やってます!」に出演する奥田瑛二さん(C)TBS

 俳優の芳根京子さん主演の連続ドラマ「まどか26歳、研修医やってます!」(TBS系、火曜午後10時)。清桜総合病院で「神」と医師たちから尊敬を集める診察部長で泌尿器科医師、角田茂司を演じているのは、奥田瑛二さん。主人公・若月まどか(芳根さん)を見守り、背中を押してきた。奥田さんに、芳根さんの印象や、角田をどう演じているのか聞いた。

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 --角田を演じてきて、どんな人物だと思われましたか。

 角田は清桜総合病院の中で“神様”と呼ばれる存在です。全てを理解し、病院や医学という惑星を見守り、知り尽くしている人物。研修医たちの成長を見守ることも役割の一部なので「1+1=2」のように、気持ちを単純に作ることはなかなか難しかったです。

 角田を演じる中で、全ての先入観を取り払い「無」になった感覚がありました。それでも意識や人格、技術、そして医師としての心を持っている。小学5年生の頃に医師になることを志して以来、ずっと向上心を持ち続けながら、若手医師たちを見守り生きてきた人物。それが角田なのではないかと思います。今、即席で彼のキャラクター背景を作りましたけれども(笑)。

 --診察部長として全体を見守る役ですが、奥田さんは撮影現場でどのように過ごしていますか。

 常に皆さんを見ていますね。そうすると、ある瞬間にその人の新しい一面や本質と出会うことがあるんです。その本質が役とシンクロすると、それが何とも言えずおもしろい。

 そうしたら、相手がまどかであり、木村多江さん演じる手塚冴子であり、佐藤隆太くん演じる城崎智也であると感じられる。それは意図的にそうしようとしたわけではなく、台本を読んでいく中で自然とそうなりました。役を演じることで自分自身も変化し、日常生活でもその気持ちを持ち続けるようになったと感じます。

 --芳根さんの印象を教えてください。

 共演させていただくのは本作が2作目なんですけど、素晴らしいですよね。前回ご一緒した時は時代劇で、撮影が一緒だったのが1日だけだったので、今回芳根さんが主演と聞いて、楽しみというよりも「よし、これで本格的に芳根さんを見られるな」と思いました。彼女の人柄や熱心さ、そしてまどかという役への取り組み方は、まさに彼女だからこそ演じられるものです。迷いながらも医師として成長していく姿を見事に表現しています。

 何より、芳根さんがつらい顔をしているのを一度も見たことがない。そういう主役だからこそ、他の出演者もつらい顔を見せずに撮影に臨んでいる気がします。僕が撮影へ行くたびに、芳根さんと他愛もない話をしているのですが、まるで角田とまどかのようです。

 --角田はまどかに対して、決めつけるのではなく、問いかけるような感じでアドバイスをしていますが、そのアドバイスについて、奥田さん自身はどのように思われていますか。

 まどかの本質を見抜き、医師としての将来を考えた上でアドバイスをする。そういう役割ですね。「こうしろ」と指示するのではなく「どうするんですか?」と優しく問いかけることで、彼女自身が答えを見つけようと冒険し始めるんです。良い作品ほど、錯覚のように役が自分の中になじんでいくものですが、本作もその感覚がありました。

 --印象に残っているシーンを教えてください。

 まどかと2人で病院の庭を散歩するシーンです。彼女に語りかけるように伝える場面は、僕もこれまでに経験したことのない芝居でした。彼女の真剣な眼差しが印象的で、その瞬間に彼女の脳内で何かが動き、角田の言葉を受け止めているのが分かりました。

 また、病室を案内しながら、医師が患者とどう向き合っているのか、日常会話など「あり方」を伝える場面も印象的でした。まどかが角田を見て学び、成長していく様子が感じられました。最終回の台本をもらうまで、僕はまどかが何科を選択するのか知らなかったので、ドキドキと期待感を持って、まどかに語りかけていたと思います。

 このドラマで“スーパーローテーション”を知りましたし、医療指導の方とお話をさせていただいて、実際の研修医も「まどかたちのようだ」と聞いて驚きましたし、こんなに大変なんだと感じました。昔は徹夜で働いていたけれど、今は「お客様」と言われる研修医たち。時代に合わせた考え方が必要ですね。僕たち世代は昭和を懐かしむことも良いが、昭和元年から100年が経った今は現代の良いものを取り入れ、新しい時代に適応しながら共に生きていくことが大切。そんな姿勢を示している本作はとても面白いです。

 --角田は研修医の気持ちを理解していますよね。

 分かっていますね。第5話で、吉村界人くん演じる桃木健斗のSNSへの投稿に対して、角田が叱る場面があったのですが、本作を通してその時だけ一番強い目をしたと思います。以前だったら「貴様、なんだと思っているんだ。言ってみろ」「やめちまえ」というようなセリフが入ってきたと思うんです(笑)。

 そこを角田はグッとこらえている感じがしますね。ただそれは、あきらめるという意味で言わないのではなく、彼の本質が変わらないと何も始まらない。なので、本質を変えるためにはどうしたらいいのか、他の医師にも相談して、彼を導いてやろうと会議でもしたんでしょうね。そういったシーンでは描かれていない裏側も想像しながら演じています。

 --モルック(「モルック」と呼ばれる木の棒を投げ、数字の書かれた「スキットル」という木の棒を倒して点を取るゲーム)に挑戦されるシーンもありましたね。

 最初、「モルックってなんだろう」と思っていたのですが、やってみたらとても楽しかったです(笑)。倒せなかったら、もう悔しくて仕方がなくて……倒せた設定で喜ぶ演技をしなくてはいけなかったのですが、芝居でうそがつけないくらい夢中になってしまいました。孫がこういう遊びに夢中になる年頃なので、一緒に遊べたらと思っていますし、家族全員で遊べますよね。値段も(ベテラン患者・橋口健太役の)森田(哲矢)くんに聞いたから、買いたいなって思っています(笑)。

 --本作を通して、昭和世代とイマドキ研修医のギャップをどのように感じましたか。

 世代間の違いは確かにあります。ただ、本作は「医師とは何か」をしっかり描いている作品です。だから、研修医をテーマにした作品なのかと思いました。その一方で、ニュースを見ていると、医師によるずさんな診察が問題になることがありますよね。そうしたニュースに憤りや悲しみを感じます。そうした社会問題に、役者として医療について勉強したり、短い期間ですが疑似体験することで、一喜一憂するなと改めて実感しました。

 さらに角田を演じることで、自分自身も人に対して、しゃべり方も含めて優しくなった気がします。これまでは相手が話の途中でも自分の意見を言ってしまったり、論破してしまったりしたのですが、最後まで聞くようになりました。それが自然にできるようになったのは、大きな変化だなと思います。

 また、本作に携わるスタッフには女性が多く、それが良い影響をもたらしています。男女問わず、それぞれの力を発揮し合う環境は、今後の作品作りにも重要だと感じますし、僕が目指している世界です。

 --終盤の見どころを教えてください。

 研修医たちが、それぞれの未来に向かって歩み始める姿が描かれます。医師としての道を見つける過程を通じて「人のために生きる」ことの意味を考えさせられるのではないでしょうか。この作品は、ただの青春ドラマではなく、深い人間ドラマになっています。最終回に向け、彼らがどのような選択をするのか、ぜひ見届けてほしいです。

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