御上先生
Episode 6 -confession-
2月23日(日)放送分
俳優の井之脇海さんと金子大地さんがダブル主演するテレビ東京「水ドラ25」(水曜深夜1時)枠の連続ドラマ「晩餐ブルース」。晩ご飯を一緒に食べるだけの、グルメドラマで、同局の「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(通称・チェリまほ)」(2020年)や「今夜すきやきだよ」(2023年)、「SHUT UP」(2023~24年)など話題作を手掛け、今作のでプロデューサーを務める本間かなみさんが、制作秘話や作品に込めたこだわりなどを語った。
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「晩餐ブルース」は、友人の離婚をきっかけに再会した高校時代の友人の田窪優太(井之脇さん)と佐藤耕助(金子さん)が、ただ一緒に晩ご飯を食べる“晩餐活動(略して晩活)”を通して心を通わせていくというストーリーで、ドラマディレクターとしてテレビ局で働く優太が仕事に疲弊し、料理人として順調だったが、人知れず辞め、ニート生活を送る耕助と温かいご飯を囲むことで互いを癒やしていく様子に視聴者の共感が集まっている。現在TVerで第1~4話を配信中。
社会で頑張っている人たちへのエールになればいいなと思って作っている作品なので、全話共通して、私たちが生きている世界と地続きの物語として捉えてもらえるよう意識して制作しています。
毎回作品のファーストシーンとなる、第1話の冒頭はこだわって作っているのですが、今回は仕事に向かっていく戦士たち、その閉塞感のようなものをイメージして作ったシーンでした。
第1話では、洗い物をしながら優太がポツリポツリと話し始めた今日の出来事を、耕助が事情も分からないのに「いいよ、聞いてる」と言いながら受け止めるシーンがあります。あの「いいよ、聞いてる」というせりふからは耕助のパーソナルな部分が見えますし、さらに、誰かと一緒に食事の時間を過ごすこと、ただ自分を受け止めてくれる人がいる尊さが伝わったらいいなと思って作りました。
第1話で耕助が料理を作るとき、エプロンをつけてから「よし」と言っていましたよね。あれは、実は久しぶりに料理を作る緊張や気合が入り混じった「よし」だったんです。もう一度第1話を見てもらうと、あのシーンから読み取れるものが少し変わってくると思います。
第2話の、優太が耕助に“仲間宣言”するシーン。うそをついている耕助にどう寄り添えるか考えての精いっぱいの気持ちを、「俺らも、仲間だよな」という一言のせりふに込めました。それを言うまでの優太の表情も最高なんですが、言葉を受け取ったときの耕助の表情がすごくすてきで。現場で見ていて、グッときてしまいました。監督に「ここは耕助のワンショットも撮ってください!」とお願いしたくらいです(笑)。
第3話は、蒔田葵(草川拓弥さん)のくすぶりが見え隠れする回。公園のベンチを眺めて過去の自分を思い出し、それを振り切るようにスマホを開くシーンがあるのですが、台本上のト書きには「自分で自分の回想を振り切る」としか書かれていませんでした。ここのお芝居はどうなるんだろう?と気になっていたのですが、草川さんがとても繊細ですてきな表現をしてくださったので、視聴者の皆さんにもそこに注目していただきたいです。
次から次へと仕事が舞い込んで、さばけているかさばけていないのかも分からなくなっている部分ですね。降りられないランニングマシーンに乗せられているような焦燥感は、優太を通して描けたらいいなと思っていました。また第4話にあった、上野ゆい(穂志もえかさん)の「私が女だからダメなのか、頑張り方が間違ってるのかとか、いろいろ考えたけど、たぶん私が私だからダメなんだよね」というせりふ。これは、自分の経験をベースにしたところがあります。
テレビ業界に限らず、女性やホモソーシャルになじめない人が男性社会で生きていくとき、自信をなくす瞬間はおそらく何度もあると思うんです。本当は根深い構造のせいで理不尽に奪われているだけでも、自分自身に問題があるとか足りないって思わされてしまう。どんな仕事をしていても心を寄せられるよう、“接地面の広さ”は意識しました。
耕助の部屋は、「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」で美術を担当してくれた伊藤圭哉さんにお願いをしました。伊藤さんの美術デザインには温かみがあり、ちゃんとそこに“人が生きている”ような、手触り感のあるいとおしいお部屋にしてくれました。
冬に食べたくなるものをネットでリサーチして、ストーリーと関連性のあるものを探りながら決めていきました。第2話に登場するグラタンにカボチャとズッキーニを入れたのは、二つともウリ科の仲間だからです。先ほどお話しした「仲間宣言」の言葉のトリガーになる何かを探していたのでピッタリだと思い、さらにグラタンに入れたらおいしそうだと思い(笑)。そういうふうに、他のエピソードに関してもレシピを決めていきました。
第1話に登場したポテトサラダです。ジャガイモが雪のようにふわふわしていて、さらに、そこに落とされるマヨネーズも天使みたいで可愛いんです! 今のところ、それが一番のお気に入りです。フードスタイリストの飯島奈美さんが作る料理はどれもおいしかったのですが、今回、カメラマンで鈴木陽平さん、照明で鈴木馨悟さんとCM業界でも活躍するお二人が入ってくださり、料理のおいしさがより伝わるように撮影してくださいました。
私自身、心のバランスを常に健やかに保てるタイプではなく、そんな自分が嫌いでした。でも、弱い部分、暗い部分を拒否して、否定して……の繰り返しに疲れてしまって。そんなことをしたって、弱い部分・暗い部分はなくならない。「このまま弱さや暗さと一緒に生きていけたらいいな」と思ったことが、企画の出発点でした。
そんな中で、学生の貧困や女性への性暴力を描いたドラマ「SHUT UP」を作っているとき、ホモソーシャルについて考える時間があって。ホモソーシャルを解体できるような、男性同士がケアし合う作品ができたらいいなと、なんとなく思っていました。登場人物の性別をどうするか考えたとき、その思いを掛け合わせたら、ホモソーシャルに抗える作品にできるのでは、と思って「晩餐ブルース」が出来上がりました。
「SHUT UP」は作品の性質上、女性にとっては当事者性の高い作品で、見る負担の大きい作品だったと思うんです。なので、「晩餐ブルース」は女性視聴者の方に負担を感じずに見ていただける作品を目指しました。
物語を作るにあたり仕事のディティール描写が大切な作品ですが、準備期間が短い作品でした。他業種を取材することを考えると、時間が足りないなと。そこで、自分が見えている世界から話を広げられることもあって、身近な職業を選択しました。あとは最近、使い捨ての消費物のようにコンテンツが量産されている風潮にも思うところがあった、というのもあります。
「日常の一部として、淡々と描写すること」です。悲劇的、同情的に捉えず、“ただの日常の一部”の温度感で描いていこうというのは、脚本の段階から心がけていました。何か大きな出来事をチョイスするのではなく、日々私たちが「大丈夫だ」と乗りこなせてしまう程度のもの、だからこそ気づかないうちに蓄積してしまう痛みや、些細なすり減りを意識して作っていきました。
私が直接キャストさんたちにディレクションすることはないので、監督と共有していました。つらいときにつらい顔をしない、しんどくても笑えるし全然大丈夫。自分の痛みや感情に無自覚であってほしい、だけど、本当はこれってちょっと痛いやつだよね、ということが伝わるようにしたいよね、と話していました。
井之脇さんは、とても真面目な方。金子さんはムードメーカーで、現場を盛り上げてくれました。一時期カリカリ梅にハマっていたみたいで、大量に差し入れてくれて、スタッフ間でもカリカリ梅ブームが巻き起こったことがありました(笑)。草川さんは「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」でもご一緒させてもらいましたが、周りを見つつも、自分のペースを大事にする方だという印象です。
他作品を見ていて、井之脇さんはチャーミングなお芝居をされる方だなと。表情を動かしてお芝居のアプローチをするのが達者で、そこが彼の健やかさ、朗らかさのイメージにつながっていると思いました。その一方で、優太のような役柄でフラットなお芝居をされたときにも、伝わってくる情報量がとても豊かなんです。別に言葉を発さなくても、ただ立っているだけでこちらに訴えかけてくるものがあると感じました。
金子さんは、感情がふれる瞬間のお芝居がとても魅力的。心が動く音が聞こえるような、ハッとさせられる瞬間がありました。耕助は内省することの多い難しい役どころだったと思うのですが、相手の言葉に細かく繊細に反応してくれて、その絶妙な表現が本当にお上手なんですよ。ドラマは作り物ですが、金子さんを通すとうそがない、本当になるというか。誰が相手でもどんな場面でも、シーンのトーンのダイヤルは金子さんが握っていたように思います。
草川さんの演じる葵も、難しい役だったと思います。優太と耕助とは違って自己開示があまり得意ではない性格で、だからこそ周りには明るく振る舞うキャラクターなのですが、周囲の雰囲気に引っ張られることなく、役としての軸をぶらさずに葵の足で立ち続けてくれる。先ほどお話しした「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」と「SHUT UP」でもご一緒させていただきましたが、今作で初めて見る表情もたくさんあって、改めてすてきな役者さんだと思いました。
ドラマはフィクションでありエンタメだけど、“社会と地続きであること”というのは大事にしています。あとは自分がドラマや映画に励まされたり救われたりしてきたので、自分が作る作品も、誰かにとってそうなれたらいいなというのは思って作っています。
この作品で、ということではないのですが、いつも作品を作るときに、“社会性とエンタメ性の両立”みたいなものを目指しているつもりです。エンタメ性という部分で私には足りないものがある気がしていて、そこをもっと磨いていきたいですね。
見終わったあと、シンプルに“面白い!なにこれ!”となれることです。「SHUT UP」の場合、その社会問題に対してアンテナを持っている方は熱を持って見ていただけたかもしれませんが、そういったアンテナがそこまで立っていない方にも楽しんでもらえたのか?と考えることがありました。その社会問題に関心がない人が見ても楽しめて、ドラマを楽しんでいるうちに社会性にアンテナが向くというのがエンタメの力だと思うし、私の理想とする形です。
私自身、配信をとても活用させてもらっています。特にテレ東は、地上波放送では見られない地域のある放送局なので、TVerのお陰で全国の方に見てもらえるチャンスを与えてもらっていて、本当にありがたいですね。
人生につまずいた大人たちと、おいしいご飯が出てくるドラマです。忙しない日々の中で、頑張っている自覚がないまま頑張り続けている人が立ち止まれるような場所になれたらうれしいです。
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