おむすび:北村有起哉、下積み時代の目標だった“朝ドラヒロインの父役”に 「役者として父を超えてやる」亡き父・北村和夫さんへの思い

連続テレビ小説「おむすび」で米田聖人を演じる北村有起哉さん(C)NHK
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連続テレビ小説「おむすび」で米田聖人を演じる北村有起哉さん(C)NHK

 俳優の橋本環奈さんが主演するNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「おむすび」(総合、月~土曜午前8時ほか)で、主人公・結(橋本さん)の父、米田聖人を演じている北村有起哉さん。下積み時代に「朝ドラのヒロインの父親役を演じたい」という目標を掲げていたという北村さんが、朝ドラにかける特別な思いや、ドラマの見どころなどについて語った。

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 ◇19歳の頃の目標「朝ドラに出演するぐらいの役者に」

 「おむすび」は、NHK連続テレビ小説の第111作。元号が「平成」に変わった日に生まれたヒロイン・米田結が、福岡でギャルと交流したあと、あるきっかけから関西で管理栄養士を目指す……という“平成青春グラフィティー”。NHKのドラマ「正直不動産」などで知られる脚本家・根本ノンジさんのオリジナル作品となる。

 北村さんは「役者を始めた19歳の下積み時代に無謀な目標を掲げまして、その一つが朝ドラのヒロインの父親役を演じたいということでした。僕がヒロインの相手役というのはちょっと無理があるかなとそこは謙虚に」と笑う。

 「冗談はさておき、父の北村和夫が『おしん』のしゅうと役を演じていたというのも理由の一つだったかもしれません。役者として父を超えてやるという若気の至りもありました。役者をやるなら、朝ドラに出演するぐらいの役者にならないと。おこがましいですけれど、目標が高くてもそこが一つの通過点であるぐらいの役者にならないと、と思っていました。今回、ヒロインの父役が決まって僕としてはホッとしたという気持ちが強かったです。うちのおふくろもすごく喜んでくれましたね」と感慨深げに語る。

 ◇亡き父と「親子げんかをすればよかった」

 北村さん演じる聖人は、娘のことが心配でしょうがない真面目な性格。奔放な父の永吉(松平健さん)とは言い争うこともしばしば。 元理容師で、現在は糸島で農業にいそしんでいる……という役どころ。

 そんな聖人について、北村さんは「最近の僕が演じてきた役柄のなかでも、裏のない真面目な普通の役です。娘に対しては異常なほど心配性ですね。ドラマですからその性格をどこかで共感してもらえるように、憎めない部分もみせないといけないと思っています」と話す。

 「実際の僕は割とのんびりとのんきなほうなので、父親はそこまで心配するもんかなと想像しながら、それを成立させるために現場でいろいろ試しています。聖人が心配性になった理由が描かれますが、やりすぎかもしれないけれど、一本筋が通っていると思っていただけるのではと思います」

 松平さん演じる父・永吉と聖人の関係については、「聖人と永吉は非常に折り合いが悪く、相当仲が悪い親子です。しょっちゅう親子げんかしていますね。監督とも相談して、けんかのシーンはなるべく派手にやったほうがいいと、暴れさせてもらいました」と明かす。

 「親子げんかというのは楽しくてすごくすてきなことなのだなと感じました。僕の父はもう他界していて、振り返ってみると、生前に親子げんかをしたことがなくて。僕もこうやって親子げんかをすればよかったなと少し感傷的になり、僕にとっては大切なシーンになりました」

 ◇避難所のシーンでは「予想していたものとは違う感情が出てきた」

 第5週で描かれた阪神・淡路大震災のリアルな描写も話題になった。北村さんは「エキストラさん含め、本当にリアルに学校内の避難所を再現していただきました。ここでなんとか歯を食いしばりながら頑張ったうちの一人ですから、この風景に溶け込めるようにしなければと思いました」と心境を語る。

 第23回(10月30日放送)では、永吉が糸島から神戸の避難所に駆け付ける様子が描かれたが、北村さんは「避難所に永吉が来て『糸島にいくぞ』と言った時に聖人はまず反対しましたが、そのシーンのテストで、予想していたものとは違う感情が出てきたんです」と明かす。

 「本当に、『それだけはできない』って思いました。こんなに悲しくて悔しい。聖人ってこういうやつなんだ、と驚きました。永吉は聖人のそういう部分を見抜いているから、『子どもとどっちをとるんだ』と迫るんですね」

 この場面で、聖人は永吉に、世話になった神戸が大変な時に糸島に行けるわけがないと返すが、「ある意味、聖人は神戸に親父と離れたくて糸島から避難してきたようなもんですからね。右も左もわからない神戸でとにかくがむしゃらにやっていたんだと思います」と説明する。

 「そんな時に、セリフにもありますが地元の商店街の人たちが温かく迎え入れてくれて、多分18歳の聖人を親身になって支えてくれたのでしょう。聖人はそういう恩を決して忘れないタイプ。ものすごく義理堅く、人並以上にそういうものを大切にするので、被災して神戸から離れることになったことを『ひどいことをした、中途半端なことをした』とより強く感じているのだと思います」

 最後に、視聴者に向けて「登場人物のほとんどの人が、やさしくて温かい人たちばかり。それゆえに、人から頼まれたことを断れなかったり巻き込まれたり翻弄(ほんろう)されるヒロインが、どんどん成長していき、父親である僕と親子げんかが起きたりと日常によくあるような出来事が丁寧に描かれます。そしてこのドラマは、明るいシーンの後に、大きなうねりとともに急にシリアスなシーンが起きるなど展開が読めません。そのあたりも楽しんでいただけたらと思います」と呼びかけた。

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