べらぼう:“やるせなさ”残した源内の死 壊れっぷりと悲哀を体現した安田顕の「いい加減」で「適した」芝居

大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第16回の場面カット (C)NHK
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大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第16回の場面カット (C)NHK

 俳優の横浜流星さん主演のNHK大河ドラマべらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(総合、日曜午後8時ほか)。4月20日放送の第16回「さらば源内、見立は蓬莱」では、副題の通り、安田顕さん演じる平賀源内の最期が描かれた。源内の壊れっぷりと、獄中で我に返りながらも逃れられなかった死は、蔦重(横浜さん)や田沼意次(渡辺謙さん)、さらに視聴者に“やるせなさ”を残したが、チーフ演出の大原拓さんが源内役の安田さんに求めたものとは?

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 第16回では、家基(奥智哉さん)の急逝した事件は、確固たる証拠を得ぬまま幕引きとなる。意次は、源内にこれ以上詮索を控えることを告げると、源内は激怒する。一方、蔦重は、源内の住む“不吉の家”と呼ばれる屋敷を訪ね、正月に出す戯作の新作を依頼するも、時折、奇妙な言動を繰り返す様子が気になっていた。

 そんな矢先、蔦重や意次のもとに、“源内が人を斬った”という知らせが入る。意次は獄中の源内から、意次が回したとされる丈右衛門の屋敷の普請話を聞かされるが、当の意次はまったく心当たりはなかった……。

 この丈右衛門、実はにせ者で、何者かがその名を語り、源内に偽りの普請を頼んでいたというからくり。また丈右衛門は、大工の久五郎と手を組み、源内を錯乱状態に陥りさせると、久五郎を斬り捨て、その罪を源内にかぶせたのだが、当の源内は記憶を失くしていて、自分の無実を証明する手立てはなく、獄中からすがるように意次に胸中を明かす姿は悲哀に満ち満ちていて、手前の“壊れっぷり”からの落差に、身につまされる思いになった視聴者も多かったはずだ。

 すべては、安田さんの熱演があってこそのもの。そんな安田さんに「べらぼう」の源内役として大原さんが求めたのは「適当」と「早口」だったといい、「とにかく源内は適当で早口であってくださいというのが演出的なオーダーでしかなかった」と明かす。

 この「適当」は、大原さんいわく「いい加減って部分と適している、当たっている部分の両面」で、それを見事に安田さんが「立体的に表現してくれた」結果が今回の源内だという。

 第16回に関して、大原さんは「源内の狂気的な部分、精神状態をどう表現していくか、それはセットの中でどういうふうに動いていったらいいのかを含めて、相談していった」というが、一方で「安田さんには預けているので、自由にやってもらいたいな」と思ったといい、大原さんの意を汲(く)んだ田さんの「いい加減」で「適した」芝居あってこその源内の壊れっぷりと悲哀だったと言えるだろう。

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