薬屋のひとりごと
第13話 外廷勤務
12月27日(金)放送分
「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載中のマンガが原作のテレビアニメ「【推しの子】」の第2期。7月にTOKYO MX、BS11ほか35局で放送をスタートし、声優陣の熱い演技、ハイクオリティーな映像が話題になっている。毎話、アニメのラストを盛り上げるのが、オルタナティブロックバンド「羊文学」が手がけるエンディングテーマ(ED)「Burning」だ。第2期では、アクアや有馬かな、黒川あかねらが2.5次元舞台「東京ブレイド」で共演する姿が描かれ、EDではアクアの内に秘めた葛藤を表現しようとしたという。羊文学のボーカル、ギターの塩塚モエカさん、ベースの河西ゆりかさんに楽曲に込めた思いを聞いた。
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「【推しの子】」は、「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」の赤坂アカさんと「クズの本懐」などの横槍メンゴさんの豪華タッグが原作を手がける人気マンガで、「週刊ヤングジャンプ」で2020年4月に連載をスタートした。突然の死を遂げた天才アイドル・アイがのこした双子の兄妹の物語が描かれる。双子の妹・ルビーは母に憧れ芸能界に入り、兄・アクアはアイ殺害の協力者であろう実の父親への復讐(ふくしゅう)を誓う。
塩塚さんは、原作を読み、「人物の気持ちの表現の仕方がすごく面白いなと思いました。私も同じように舞台に立つ仕事をしていて、すごく重なる部分があって、勉強になることも多いなと思う作品でした」と魅力を語る。
河西さんは、2023年4~6月に放送されたテレビアニメ第1期の第1話を見て「【推しの子】」にハマったといい、「色遣いや絵柄はすごく可愛いんですけど、内容は復讐が描かれていたりと対比が大きくて。物語が進んでいく中で、アクアの10代らしい気持ちや人間らしい気持ちと、普通の人じゃ絶対感じないような気持ちとのギャップもあって、すごく新しくて面白い作品だと思っています」と語る。
羊文学が第2期のEDを手がけることになり、アニメ制作サイドからは二つのオーダーがあった。塩塚さんは「物語からエンディングに移り変わる時、シームレスにいけるようなイントロがあること。あとは、オープニングがすごく派手な舞台の“表”だとしたら、エンディングではアクアのパーソナルな姿を描く。その二つが大きいことだったと思います」と説明する。
第2期では、アクアは、2.5次元舞台「東京ブレイド」で、劇団ララライの看板役者・姫川大輝、黒川あかね、元天才子役の有馬かなら実力派俳優と共演することになる。アクアは、彼らと比べて演技の経験が少ない上、過去のトラウマから強く感情を出す“感情演技”に苦戦する。
塩塚さんは、楽曲作りにおいて「第2期では、アクアの自分に自信がないというところが大きな特徴になっているんじゃないか」と感じたという。
「作詞をする上では、キャラクターみんなのことを考えたのですが、特にアクアのことを考えていて。アクアは、幼少期の傷があった上で成長をしていて、そのトラウマは簡単に解決することじゃないんだけど、人生でうまくいかないことがあった時にトラウマを言い訳にしているところもあるんじゃないかと。これは私の解釈で、先生方がどう考えているかは分からないんですけど、絶対的なアイドルであるアイを自分は超えられないとどこかで思っている。どうせそこに届かないんだったら、はじめから『あくまで復讐のため』と自分の動機を収めたほうがラクだと思っているように私には見えて」
ただ、アクアには「演技が好き」という思いもあるのではないかと考えた。
「そんないろいろな葛藤がある中で、でも実際に舞台に立つと、『これが好きだし、やりたいのかも?』と再確認するというか。この歌の中では何も解決しないんですけど、その瞬間を書いてみました」
「Burning」は、「都合良い理想ばっか並べたって現実は暗い 傷つくのが癖になってる 誰を許せないの?」というフレーズから始まり、歌詞はアクアの内面の重々しい感情を描いているが、楽曲自体は爽やかにさっそうと始まる印象がある。塩塚さんは「結果的に、曲調が今までやったことのない感じになったかもしれません。ひねくれたロックみたいな楽曲はこれまでもやっていたんですけど、堂々としたロックみたいなのは初めてだったので、新しいなと思いました」と挑戦を語る。
「本当に作品が面白かったし、共感することもたくさんありました。舞台の上で、バン!と登場人物たちが動いている姿を妄想したりしていたら、こういう曲調になったのかなと。歌詞自体は『こんなのめっちゃ不健康だし、こんな感じで生きてちゃダメだよ』みたいに、すごくひねくれているんですけど(笑い)、曲調としては、すごくつらい状態でも何事もなかったかのように舞台の上に仁王立ちしているような、堂々とした曲にしたかったんです」
EDは「(この気持ちは誰にも言えない)」という歌詞で締めくくられる。
「この歌詞に書いてある思いは、表に出すようなことじゃなくて、役者さんが舞台に歩いて行くまでに考えていることをイメージしています。最後の(この気持ちは誰にも言えない)は、舞台に立つ瞬間に自分の“日記”をパタンと閉じる、みたいな感じにしたかった」
アクアの葛藤、表現者の葛藤を表現しようとした「Burning」。塩塚さんは「役者さんは、バンドとはまたちょっと違うので、私の想像なのですが、やっぱり人間ですし。みんないろいろネットでたたいたりもするけれど、『人間なんだけどな……』みたいなことも日々考えていて。そういう気持ちも込めて書きました」と思いを込める。
河西さんはレコーディングを振り返り、「力強さ」が一つのポイントとなったと明かす。
「力強さや、Aメロの混沌(こんとん)とした感じを出したかったので、あまりエフェクトをかけないで、ストレートな“ひずみ”を乗せて。あとは手でアタック感、ロック感を出しました。歌は力強いけど苦しそうで、泣いているのかな?というような。そういう意味での強さを感じました」
河西さんは、「表に立った時の感情と裏にいるときの感情、二面性を歌っていて、物語の登場人物とリンクしている感じを聴いてもらえたらと思います」と語る。
いよいよ舞台の幕が上がる「【推しの子】」第2期。羊文学の「Burning」と共にアクアたちの戦いを見守りたい。
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