女優の奈緒さん主演で放送中の連続ドラマ「ファーストペンギン!」(日本テレビ系、水曜午後10時)。実話を基にしたストーリーで、漁業の世界に飛び込んだシングルマザーを描く。企画プロデューサーを務める武澤忠さんは、その実話について「まさに『ごくせん』の漁師版であり、女・半沢直樹」と表現する。武澤さんに今作で訴えたいことや見どころを聞いた。
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ドラマは森下佳子さんの脚本で、奈緒さん演じるシングルマザーの岩崎和佳(のどか)が、経営難に苦しむ漁師たちと出会い、古い常識や慣習を次々と打ち破りながら漁船団を立て直す。
和佳のモデルは山口県萩市の坪内知佳さん。漁業の素人ながら、既成の漁業の仕組みにとらわれず、漁師たちの捕った魚を市場を通さずに加工・直販する「6次産業化」を実現した。当時、坪内さんは20代だった。
武澤さんは4年前、坪内さんの実話を知ったといい、理不尽な状況に正論でもって“世直し”をする様に「ドラマにしたら絶対面白くなる。まさに『ごくせん』の漁師版であり、女・半沢直樹だと思いました」と語る。
漁師というテーマは一見地味にも思えるが、武澤さんは「面白さには絶対の自信がありました。漁師の話ではありますが、どこの会社や組織にもある『古い考えの者を、新しい考えの者が上書きして塗り替えていく話』です。確かに画(え)はおじさんばかりかもしれませんが、話の中身は全世代に通じるものです」と話す。
ドラマ化にあたり、苦労したことを聞くと「多少尾ひれをつけてドラマとして面白くするので、実在の人物に配慮しなければいけません。また、坪内さんの思いやポリシーをしっかり踏襲し、坪内さんが『こういうつもりじゃなかった』とならないよう、丁寧に進めています」と語る。
では、坪内さんの思いやポリシーとは何なのか。
「『三方よし』という言葉があります。坪内さんは、決して漁協をやっつけたいわけではありません。漁協、自分たち、消費者の皆にとって良いシステムがあるはずだ、それを一緒に作り上げることが本当の成功だ、という思いがあります。へこたれそうな時でも、自分がやろうとしていることの先には、にぎやかになる浜、おいしい魚が食べられる豊かな国があると信じている。坪内さん本人の言葉でもありますが、行動の裏にある彼女なりの『ロマン』を制作陣も大切しています」
坪内さんをモデルにした和佳役は、ゴールデン・プライム帯(午後7~11時)の民放連ドラ初主演となる奈緒さんが担当。「確かな演技力と可能性を持っています」と起用理由を説明する。
和佳に「浜の立て直し」を依頼する漁師・片岡洋は堤真一さんが演じているが、この配役に武澤さんは「堤さんしか考えられませんでした」と話す。
「企画書を書いた時からの当て書きで、この役は堤さんのイメージで固まっていました。ぶっきらぼうで頑固でありながら、どこか少年っぽさを忘れず、男として可愛い部分がある、人間として素直な部分がある。そういうことが演じられるのは堤さんが一番いいなと思いました」
今作を通じて訴えたいことを聞くと、武澤さんは「思いとどまるより、一歩踏み出してみることの素晴らしさを伝えたいです。この一つのサクセスストーリーをもって、日本中を元気にしたいとシンプルに思います」と語る。
今後の見どころについては「『こんなに展開が早くて話持つの?』とよく言われますが、まだまだいろいろな紆余(うよ)曲折があります。これまで以上に憎たらしい組合長を梅沢富美男さんがチャーミングに演じる回、漁師たちのおちゃめなシーンと共に、けんかあり涙ありのペンギンたちの成長物語を楽しみにしてください」と話した。
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