東京サラダボウル:高い関心集めた三上博史の起用とその裏側 62歳“俳優としての価値”を最大限濃縮し、存在感

「ドラマ10『東京サラダボウル』」最終回の場面カット (C)NHK
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「ドラマ10『東京サラダボウル』」最終回の場面カット (C)NHK

 俳優の奈緒さんと松田龍平さんがダブル主演を務めるNHKの「ドラマ10『東京サラダボウル』」。3月4日に最終回(第9話)が放送された本作において、終盤の3話(第7~9話)にわたって、現在と4年前の過去を繋ぐ、“真相”を握る刑事・阿川博也を演じ、存在感を放ったのが三上博史さんだ。久しぶりの地上波ドラマへの登場で、視聴者からも高い関心を集めたが、その姿はドラマスタッフの目にはどう映ったのか。「今の自分だから出せる俳優としての価値を、最大限濃縮してもらえた」と明かす制作統括・家冨未央さんに話を聞いた。

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 ◇怒涛の終盤「ものすごく考え尽くして、阿川として立ってくれた」

 ドラマは、「クロサギ」で知られる黒丸さんのマンガ「東京サラダボウルー国際捜査事件簿ー」が原作。約70万人の在日外国人が暮らす東京を舞台に、ミドリ髪の国際捜査の警察官・鴻田麻里(奈緒さん)が、ワケありの中国語通訳人・有木野了(松田さん)とのコンビで、日本社会からこぼれ落ちそうな人生を拾い上げていく社会派エンターテインメントだ。

 三上さん演じる阿川は、中国語を駆使する非常に優秀なベテラン刑事だったが、外国人コミュニティーに深入りしすぎて過ちを犯す。かつて外国人の聴取で意図的に誤訳を行い、有木野の“最愛の人”織田覚(中村蒼さん)を巻き込む事件に発展。一時干されていたが鴻田の相棒として復帰する。

 2月18日放送の第7話から本格的に登場。ドラマは最終回にかけて、阿川が4年前に起こした“誤訳事件”と情報漏洩、そこに関わった当時の相棒・織田の自死の理由など、すべての真相が有木野の過去と共につまびらかにされるなど、怒涛の展開を見せた。

 その中で、過去の過ちと“陥った闇”とに向き合い、一人決着をつけようと行動する姿が、原作よりも掘り下げて描かれていたように思える阿川として、映像の中で異質なまでの存在感を放ったのが三上さんだった。

 家冨さんは「ものすごく考え尽くして、阿川として立ってくれたなと思います」と感謝する。

 「寺山修司さんのところから始まっているキャリアであるとか、トレンディードラマだけでなく、芸術性の高い作品にも参加されてきて、一時代を築いてきた方であることは間違いないですし、本当にモノ作りと人生について考えていらっしゃる方だなと感じました」

 ◇映像界に何か残せないか──三上博史の姿「劇中の阿川、そのままだった」

 62歳となった三上さん自身、阿川について「10年前の自分もできない、10年先の自分でもできない」役と捉え、「原作を読み、阿川博也という男は、ギリギリで生きている男なのかなと思いました。人生で燃えるべき“最後の炎”がくすぶっている感じがしたんです。面白いと思いました」「ギリギリさの質は異なるけれども、今の年齢の自分が、体全体から発する自分のギリギリな表現を生かして見せれば、この役にハマるかもしれない──そう感じながら挑みました」とも語っていた。

 家冨さんも「そういう三上さんじゃなければ成立しなかったのが今回の阿川」と認める。

 「きっといろいろな葛藤や緊張があったにもかかわらず、『やってみよう』と思ってくれた62歳の三上さんにすごく敬意を感じたというか。途中のエピソードからの登場で、必ずしもやりやすい形ではなかったかもしれませんが……そこも含めて新しい出会いを楽しんでもらえて、今の自分だから出せる俳優としての価値を最大限濃縮してもらえたなと。“本物の芝居”をたくさんやってきた人が、龍平さんや奈緒さんにぶつかっていく、というのは単純に力学として面白いなとオファーした部分はありますが、それ以上に、映像界に何か残せないか、芝居に対してやれることは何だろうかっていう三上さんの姿は、劇中の阿川、そのままだったと思います」

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