ザ・トラベルナース:「ドクターX」モデルのスーパードクターが出演 医療従事者がエンターテインメントに携わる意義

「ザ・トラベルナース」最終話に出演する加藤友朗さん=テレビ朝日提供
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「ザ・トラベルナース」最終話に出演する加藤友朗さん=テレビ朝日提供

 12年間続いたシリーズが劇場版で完結して話題のドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)。米倉涼子さん演じる主人公の天才外科医・大門未知子には、数人のモデルがおり、そのうちの一人が、米ニューヨークのコロンビア大医学部外科教授の加藤友朗さんだ。臓器移植の世界的権威で、世界で初めて成功させた「多臓器体外摘出腫瘍切除術」は、劇中で大門未知子の術式として描かれている。そんな加藤さんが、12月19日午後9時放送のドラマ「ザ・トラベルナース」(テレビ朝日系)最終話に出演する。撮影のため日本に一時帰国した加藤さんに、医療従事者がエンターテインメントに携わる意義などを聞いた。

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 ◇日本の医療レベルは本当に素晴らしい

 「ザ・トラベルナース」は、岡田将生さん主演で2022年10月期に放送された同名ドラマの続編。「ドクターX」で知られる中園ミホさんのオリジナル作で、フリーランスの看護師“トラベルナース”の那須田歩(岡田さん)と、“スーパーナース”の九鬼静(中井貴一さん)のコンビが患者第一で医療現場を改革していく。

 --「ザ・トラベルナース」は、加藤さんのお話にインスパイアされた中園さんが執筆したと聞きました。

 「ドクターX」の時に中園さんと対談したことがあるのですが、中園さんとさまざまなアイデア交換をした中で、トラベルナースの話をしたんですよ。そうしたら、中園さんが「それ良いな」と思ってくれたようです。アメリカでは、フリーランスの看護師さんがたくさんいます。実際、ニューヨークがコロナで大変なことになった時にも、全米から集まったトラベルナースが大活躍しました。

 --加藤さんが実際に見聞きした体験もエピソードに採用されたのですか。

 見聞きしたというよりも、私自身が看護師さんに助けられたエピソードが採用されました。現在は回復しましたが、4年前に僕自身コロナに感染して重症化し、4週間意識を失って……死線をさまよったんです。意識を取り戻した後もICUで過ごした日々があったのですが、その時に痰(たん)が喉に詰まって、窒息して死んじゃうんじゃないかっていう恐怖が続いたんです。声も出にくくて、なかなか喉の奥にあると伝えることも難しいんですよ。困っていた時に、ある男性の看護師さんが気付いてくれて、指を口の奥に突っ込んで取り出してくれた。患者の身になり、看護師さんの存在の大きさを改めて感じました。

 --中井さん演じる静の言葉に「医者は病気を見つけて病気を治し、ナースは人を見て人を治す」というセリフがありますが、まさしくその言葉を体現しているような看護師ですね。

 医師は、どうしても患者さんに関わる時間は短くなってしまう。そういう意味で、 患者さんのことを分かっているのは看護師さんなんですよね。患者さんを見て理解するということに関しては、恐らく医師よりも全然上なんじゃないかな。

 --アメリカで働く医師として、日本の医療レベルについてどう思いますか。

 日本の医療レベルは本当に素晴らしいです。コロナの時に日本で「医療崩壊」という単語が使われていましたが、ニューヨークやイタリアでは人工呼吸器が足りなくて、人工呼吸器を付けるか付けないかで患者を選択しなきゃいけない事態が起こっていたんですよ。 それで亡くなった方がたくさんいたのですが、あの時こそ完全に崩壊していたと思います。日本は卑下する必要は全然ない。日本人は、自己評価が厳しいからね(笑)。

 ただ一点、日本の医療は“日本人に特化した医療”だというのはあります。体型や生活習慣がほぼ同じの単一民族なので、発症する病気も似てくるんですよね。そこに特化した医療に関してのレベルはすごく高いです。

 ◇「ドクターX」のように長く愛されるシリーズになるといいな

 --今回「ザ・トラベルナース」への出演を決めた理由はなんなのでしょうか。

 そんな大仰なものではなくて、ただ単に昔からエンターテイメントに対する興味があったので、単純にドラマに出てみたかっただけなんです(笑)。僕の話から生まれた作品だとは聞いていたので、なら「ちょっと出してよ」ってお願いをして、叶(かな)えていただきました。出たと言っても、エキストラ的な出演なんですが、うれしかったですね!

 --勝手が違うと思いますが、緊張はありましたか。

 緊張とかは全然なかったです。というのも、(撮影の)セットが本当に自然で“日本の病院そのまんま”なんですよ。研修医時代は日本で過ごしていたので、分かるのですが、本当にそのもの。そしてキャストの皆さんも、佇(たたず)まいが本当の看護師さんそのもので、そういった雰囲気に助けられたのかもしれません。何の違和感もなかったですね。

 --加藤さんは、医療従事者がドラマや映画に携わることについてどのようにお考えですか。

 やっぱり、ドラマや映画で、医療のことを知る人ってたくさんいらっしゃると思います。そこで描かれた治療法を見て、患者さんがその医療にたどり着くこともあると思うんです。
多くの人に“治療の可能性”を知ってもらうため、正しい医療を知ってもらうため、医師がエンターテインメントに監修として携わる意義はあると考えています。

 ドラマや映画が、医療を志す人にも影響を与えていると思っていて。それこそ「『ドクターX』を見て医師になりました」という方が僕のところにも来ますし、このドラマも、看護師を目指す人や、いま現在誇りを持って働いている方たちに、とても良い影響があったんじゃないかな。

 これは、僕たち医療従事者はみんなそうなのですが、厳しくて、つらいことは多々あります。でも、それが報われる瞬間っていうのはあるんですよ。その報われる瞬間の感動を知ることができて、希望を持っていただけるエンターテインメントは大切な存在だと思います。

 --加藤さんから見て、日本の医療ドラマで「ここをもっと描いてほしい」という部分はありますか。

 日本の医療従事者が一番つらいのは、仕事の大変さに比べて、なかなか給料がもらえないところだと思います。結果的に、医学部のすごく優秀な人たちが医者にならずにコンサルティング会社に行ったりしている現実があるので、そこの問題を取り上げるドラマがあると面白いんじゃないかな。「ドクターX」では、少しコミカルに描いていましたけどね(笑)。

 --最後に「ザ・トラベルナース」に期待していることを教えてください。

 医療の中で看護師さんが果たす役割に注目していただけることは素晴らしいことなの
で、やっぱりシーズン3、シーズン4と続いていってほしいですよね。看護師さんの希望者がものすごく少ないわけではないのですが、やはり人材不足は常にあります。そういう意味でも、このドラマは「ドクターX」のように長く愛されるシリーズになるといいなと思います。

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