薬屋のひとりごと
第13話 外廷勤務
12月27日(金)放送分
「映画 聲の形(こえのかたち)」「リズと青い鳥」「きみの色」などで知られる山田尚子監督のオリジナルショートアニメ「Garden of Remembrance(ガーデン オブ リメンバランス)」が、アニメタイムズ、ABEMA、Hulu、Leminoほかで配信されている。アネモネの花をテーマとして“きみ”と“ぼく”と“おさななじみ”の3人の揺れ動く感情や“さよなら”を描いたアニメで、マンガ「花のズボラ飯」の作画を担当するマンガ家の水沢悦子さんがキャラクター原案を担当し、サイエンスSARUが制作した。セリフがないアニメで、シンガー・ソングライターのラブリーサマーちゃんが担当した音楽が、繊細な感情を見事に表現した。山田監督、ラブリーサマーちゃんに制作の裏側を聞いた。
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ーーラブリーサマーちゃんが参加することになった経緯は?
ラブリーサマーちゃん 山田監督のご指名だったそうなんです。光栄なことです。
山田監督 プロデューサーさんから「MVのようなショートフィルムに興味ありませんか?」とお話をいただいて、音楽とアニメというところから始まっているんです。好きなことができそう! こんな企画ができるんだ!という素敵なお話で、ラブリーサマーちゃんとご一緒してみたい!とお話しました。彼女の世界観を絵にしてみたかったんです。これは褒め言葉と受け取っていただきたいのですが、すごく女の子くさく、わがままな感じが歌に出てきていて、それが格好いいし、思いっきり臭いのするガーリーな世界をアニメにしてみたいと感じ、ご提案させていただきました。
ラブリーサマーちゃん まさか!ですよね、高校は軽音部で「けいおん!」ドンピシャ世代ですし、「たまこまーけっと」も歌を全部歌えるくらい好きなので、ウソでしょ!という気持ちが一番大きかったです。山田監督は、音楽通なのを小耳に挟んでいたので、その方に選んでいただけて光栄です。
ーー最初に会った時の印象は?
ラブリーサマーちゃん 楽しかったですよ。泥酔したんですよね。自分が謎の恋バナを打ち明けたり。
山田監督 打ち合わせ後の食事会の席で焼酎のカメが用意されていたんです。ラブリーサマーちゃんはロックな方で、感動しちゃいました。お話すると、すごくクレバー、博識で、自分で学んできたものなどの芯がありつつ、感性でも見ている。すごく面白い方だなと感じました。
ラブリーサマーちゃん もったいないお言葉です。ドキドキでした。気さくな方で「私が山田尚子よ」みたいな感じでもいいのに、全然そんなことなくて、救われた気持ちでした。
山田監督 そんなに堅苦しくはなかった気がします。初日で、ラブリーサマーちゃんがパッと心を開いてしゃべってくださったのがすごく大きくて。
ラブリーサマーちゃん 山田監督が開示してくださったからだと思います。山田監督はオープンな人ですよね。
山田監督 そういっていただけるとうれしいです。馬が合ったんでしょうね。
ーーコンセプトはどうやって決めていった?
山田監督 ラブリーサマーちゃんと私でキーワードを持ち寄って、自分がポエムにして、それを基にコンテを書いて、ラブリーサマーちゃんが音楽を作るという流れでした。初めてのことです。いっぱいアイデアをいただき、面白かったです。最初、ポンポンポンとアイデアを出し合って、そこから見えてきたものもあります。
ラブリーサマーちゃん こういう作品にしたくて、こういう曲を書いてほしいというオーダーではなく、骨子から作っていきました。具体的に言語化されているのではなく、史跡や童話の挿絵などもご提案していただき、ブレーンストーミングをしていき、軸になるポエムができました。余白を残していて、あまり具体的にしないまま制作が進みました。
山田監督 具体的な提案をしてしまうと、そこで固まってしまい、つまんないなと思っています。私は考えることが好きなので、考えることが好きな人とご一緒したいっていう気持ちがあり、余白を残しました。実際にお話しして、考えるのが好きな人だと受け取ったので、広めに余白を作り、「一つ、我々のわがままに作ってみませんか?」みたいなことを言ったのを覚えています。格好よすぎますね。なんかすみません!
ラブリーサマーちゃん 言語で具体的に決めるのではなく、イメージでやり取りするのは初めてで、面白かったです。
山田監督 音楽がどうやって作られているのかは分かりませんが、やっぱり余白が広い方がいいと思ったんです。言葉の意味だけではまかり通らないような考え方で作られているんだろうなと思って。お互い苦しんでいたと思うんですね
ラブリーサマーちゃん いくつかキーワードをいただきましたが、「喪失と向き合う」という話なんだと思っています。それ以外の要素もありますが。自身が祖父の散骨をしたことをお話させていただき、そのイメージがすごく強く、作っている中で、祖父がいないことと向き合っていました。言葉にしたり、音楽にしたりするのは大変でつらいし、タフなことでもありました。
インタビュー(2)に続く。
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