海に眠るダイヤモンド
最終話後編(10話)記憶は眠る
12月22日(日)放送分
伊藤沙莉さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「虎に翼」(総合、月~土曜午前8時ほか)が、ついに最終回を迎えた。男性ばかりの法曹の世界で奮闘する寅子と、彼女を取り巻くサブキャラクターたちが骨太な物語を彩ってきた。その中から、文字通り寅子の“戦友”だった明律大学女子部同期メンバーの、“戦いの記憶”を振り返る。
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かつて寅子が通っていた明律大学女子部法科の同期メンバーは、山田よね(土居志央梨さん)、“ヒャンちゃん”こと崔香淑/汐見香子(ハ・ヨンスさん)、竹原(大庭)梅子(平岩紙さん)、桜川涼子(桜井ユキさん)の4人だが、ここでは、涼子の元お付きで、現在は“親友”となった玉(羽瀬川なぎさん)も同期の一員として捉えたい。
全く違うバックボーンを持つ5人は、それぞれが個性豊かでありながらも、一つのチームとしてまとまりを見せていた。ぶっきらぼうで口は悪いが、人一倍熱いものを胸に秘めたよね、覚悟を持って生きる香淑、おおらかで包容力のある梅子、気高く優しい涼子、けなげで努力家の玉。彼女たちの魅力あふれるキャラクターが、主人公・寅子の個性をより一層、際立たせていた。
寅子とは犬猿の仲のようで、実は腹心の友であるよねは、猪突猛進(ちょとつもうしん)に突き進む寅子を怒ってくれる大切な存在だった。よねは戦後、再会した轟(戸塚純貴さん)と法律事務所を立ち上げ、一念発起して司法試験に合格。念願の弁護士になってからは、雲野(塚地武雅さん)、岩居(趙珉和さん)と共に原爆裁判に携わったのち、尊属殺人の罪に問われた美位子(石橋菜津美さん)の弁護を担当した。
第126回(9月23日放送)では、美位子の事件で法廷に立ったよねが、寅子の口癖の「はて?」を口にし、熱い弁論をふるった。理不尽な虐待にさらされ続けた美位子を救おうと必死で訴えかけるよねの姿に、視聴者からは「よねさん劇場」「心が震えた」など、感動の声が上がった。
朝鮮半島からの留学生だった香淑は、弁護士の道を諦めて一度朝鮮へ戻るが、そこで出会った汐見(平埜生成さん)と結婚。娘の薫が生まれたことを機に「汐見香子」として生きていくことを決意。朝鮮出身である過去を封印し、薫にさえ長年、事実を隠したまま生きてきた。子育てが落ち着き、法律の勉強を再開。司法試験に合格し、弁護士となった。
第120回(9月13日放送)では、過去を隠してきた香淑が、薫(池田朱那さん)の前で「崔香淑を取り戻してみたい」と宣言し、これまで会うことを避けていた明律大の同期・小橋(名村辰さん)と稲垣 (松川尚瑠輝さん)と久しぶりに対面。長い年月をかけて、本当の自分を取り戻した香淑の生きざまに、目頭を熱くする視聴者が相次いだ。
大学時代、唯一の既婚者だった梅子は、モラハラ夫と離婚して親権を獲得すべく、法律を学んでいた。夫の死後は、遺産相続をめぐる騒動を経て、夫の遺産も、嫁の立場も、母の務めも全てを放棄し、家族と決別することを決意。一人で家を出て、よね、轟と暮らし始める。甘味処「竹もと」を継ぐため、あんこの修行を積み、その後は、寿司と甘味が楽しめる店「笹竹」を道男と共に営む。
第64回(6月27日放送)で、遺産を巡る調停のさなか、梅子の三男・光三郎(本田響矢さん)と亡き夫の妾・すみれ(武田梨奈さん)がつながっていたことが判明。梅子は高笑いし、「私は全部失敗した。結婚も家族の作り方も息子たちの育て方も、妻や嫁としての生き方も全部!」と吐き出すと、「ごきげんよう!」と言い放ち、家を出て行った。自分の人生を生きることを決めた梅子の吹っ切れた姿は、視聴者に鮮烈な印象を残した。
元は華族生まれのお嬢さまだった涼子は、ファッションや行動が雑誌で取り上げられるほどの有名人だった。家を守るため結婚の道を選び、弁護士の夢をあきらめるが、戦後の憲法により華族の身分を失ってしまう。その後、新潟で玉と共に喫茶「ライトハウス」を含めた二つの店を経営。香淑に触発されて司法試験に挑戦し、合格を果たした。
第124回(9月19日放送)で、司法修習を受けるつもりがないことを明かした涼子。よねがその理由を尋ねると、「強いて言うなら、世の中への私なりの股間の蹴り上げ方かしら」「この先、弁護士になるもならないも私の手の中にある。せめて、そうしたかったの」と笑顔で返答。芯の強さや反骨精神を感じるせりふに、胸を打たれる視聴者が続出した。
そんな涼子の元お付きで、涼子を敬愛する玉は、戦争の空襲でけがを負い、車いす生活に。涼子に対して負い目を感じていたが、互いの本音を伝え合い、“親友”同士になった。「ライトハウス」で働くかたわら、学生たちに英語を教えている。
第84回(7月25日放送)で、本音をぶつけ合った玉と涼子。玉が英語で「あなたなしの人生は考えられない。私の親友になってくれませんか?」と問いかけると、涼子も英語で「あなたはもう親友ですよ」と返答。主従関係にあった二人が対等な関係となった場面に、「美しいシスターフッド」「高潔で美しい関係に胸を打たれた」など、感動の声が上がった。
振り返ると、法曹の世界で奮闘する寅子はもちろん、寅子と切磋琢磨(せっさたくま)し、長きにわたる友情を築いてきた同期メンバーの魅力に、改めて気付かされる。「虎に翼」は終わりを迎えたが、彼女たちの名シーンや奮闘ぶりは、この先も記憶に残り続けることだろう。
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