解説:「虎に翼」寅子を支えた“愛すべき男たち” 夫や師匠、法曹界の先輩も

NHK連続テレビ小説「虎に翼」で星航一を演じる岡田将生さん(C)NHK
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NHK連続テレビ小説「虎に翼」で星航一を演じる岡田将生さん(C)NHK

 伊藤沙莉さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「虎に翼」(総合、月~土曜午前8時ほか)の放送も、残すところ最終週のみ。法曹界で奔走する寅子と、彼女を取り巻く個性豊かなキャラクターたちが、物語を色鮮やかに彩ってきた。そんな魅力的なキャラクターの中から、寅子を支えた“愛すべき男たち”を紹介しよう。

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 ◇寅子を愛した男たち

 寅子の一人目の夫・優三(仲野太賀さん)は、寅子の実家・猪爪家に下宿しながら弁護士を目指していた青年で、人が良く真面目だが、緊張すると腹を下してしまい、なかなか試験に合格できないというコミカルなキャラクターとして登場。早くに両親を亡くし、天涯孤独であったが、やがて弁護士になった寅子と結婚。2人の間には娘の優未も生まれるが、召集令状が届き戦地に赴くことに。出征前、寅子と二人きりになった優三は「トラちゃんが後悔せず、心から人生をやり切ってくれること。それが僕の望みです」とほほ笑んだ。その後、優三の戦病死が判明するが、亡くなった後も寅子の心の支えとなり続けた。

 寅子の二人目の夫・航一(岡田将生さん)は、初代最高裁長官・星朋彦(平田満さん)の息子で、朋彦の著書の改稿作業がきっかけで寅子と出会う。初めは「なるほど」しか言わず、何を考えているか分からない人物だったが、寅子が赴任した新潟で再会し急接近。やがて二人は「永遠を誓わない愛」を育み、「夫婦のようなもの」となる。常に冷静沈着でつかみどころのないキャラクターだったが、寅子と共に過ごす中で次第に変化が。娘ののどか(尾碕真花さん)の婚約者と対面し、動揺のあまり畳に倒れ込んだり、桂場(松山ケンイチさん)に真っ向から意見し、興奮のあまり鼻血を出して卒倒したりと、感情をあらわにする場面が増えていった。

 ◇寅子を法曹界に導いた男たち

 10代の寅子を法の道に導いたきっかけとなった人物が、法学者で最終的には最高裁判所判事の一人となる穂高(小林薫さん)だ。寅子にとって「生涯の師」であるが、一方で、穏健派の精神が寅子の逆鱗に何度も触れた人物でもある。穂高が妊娠中の寅子に、結婚した以上、出産と育児が最優先の務めであり、寅子の犠牲は決して無駄にはならないと話したことで、2人の関係に亀裂が。長い間、確執のあった2人だが、やがて互いの思いをぶつけ合い和解。穂高は寅子に「君もいつかは古くなる。常に自分を疑い続け、時代の先を歩み立派な出がらしになってくれたまえ」とメッセージを残し、天へと旅立った。

 寅子の成長を、穂高と共に見守り続けてきたのが、第5代最高裁長官に就任した桂場だ。司法の独立を重んじ、寅子にとって「法の世界」の手ごわい先輩でもあるが、実は大の甘党。仏頂面の桂場があん団子をおいしそうに食べる姿は、ドラマの恒例シーンとなっており、穂高を悼む酒の席では、皿をかじって口が血だらけになるなど、突然の“奇行”で視聴者を驚かせた。最高裁長官に就任してからは、熱心に勉強会を開いていた若手裁判官を“左遷”するなど、これまでには見せたことのない側面を見せるように。あん団子を食べるシーンも描かれておらず、視聴者から「あん団子が足りてないんだよ」など心配の声が寄せられた。

 ◇寅子を支える法曹界の先輩たち さらには…

 寅子の上司として、ともに家庭裁判所を設立したのが、多岐川(滝藤賢一さん)だ。基本理念を作り上げ、“家庭裁判所の父”と呼ばれる人物で、かなりの変わり者だが、家裁への情熱は誰にも負けない。多岐川は滝行をするシーンで初登場し、その後も縁起を担いでふんどし姿で水行をするなど、変人ぶりをさく裂させた。その後、がんを患い、療養していた多岐川は、少年法改正反対の意見書を残して他界。その意見書を手にした桂場の前に幻影として現れ、「お前の掲げている司法の独立っちゅうのは、随分寂しくお粗末だな」と苦言を呈し、死してなお、見る者に強烈なインパクトを残した。

 戦後、裁判官を目指していた寅子の実力を買い、採用に力を貸してくれたのが久藤(沢村一樹さん)だ。寅子の上司として民法改正を主導したのち、最高裁秘書課長、司法研修所長を経て、東京家庭裁判所長に就任した。久藤は自身を「ライアン」と名乗り、寅子を「サディ」と呼ぶなど、誰にでもニックネームをつけてフレンドリーに接するクセの強いキャラクターで、海外の事情にも詳しく、振る舞いのすべてがスマート。いつも笑顔で、寅子らとコミカルなやり取りを繰り広げている。

 さらには、「原爆裁判」を最後に、長い記者人生に幕を下ろした竹中(高橋努さん)、「傍聴マニア」のすし職人で、“トラちゃん推し”を貫いた笹山(田中要次さん)も、視聴者にとって、忘れられないキャラクターとなったであろう。

 法曹の世界で奮闘する寅子を、優しく、時に厳しく見守り続けてきた男たち。彼らの支えによって成長してきた寅子の物語も、いよいよラストスパートを迎える。どんな結末が待ち受けているのか。最後までしっかりと見届けたい。

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