UEFA EURO 2024:決勝トーナメントが開幕 サッカー元日本代表・坪井慶介がGSの総括、優勝予想を語る WOWOWで全試合を生中継

(左上から時計回りに)クロース選手、エンパベ選手、ベリンガム選手、クリスティアーノ・ロナウド選手、モドリッチ選手、デ・ブライネ選手、ロドリ選手、ファン・ダイク選手 Getty Images
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(左上から時計回りに)クロース選手、エンパベ選手、ベリンガム選手、クリスティアーノ・ロナウド選手、モドリッチ選手、デ・ブライネ選手、ロドリ選手、ファン・ダイク選手 Getty Images

 4年に1度、欧州各国の代表チームが争うサッカーの祭典「UEFA EURO 2024 サッカー欧州選手権」は、激戦のグループステージ(GS)突破を決めた16チームが出そろい、負ければ終わりの決勝トーナメントが日本時間の6月29日深夜に幕を開ける。WOWOWでは決勝トーナメント全15試合を日本語の実況・解説付きで生中継する。

ウナギノボリ

 WOWOWで解説を務める、サッカー元日本代表でサッカー解説者の坪井慶介さんに、これまでの試合の印象や決勝トーナメントの展望などを聞いた。坪井さんは7月15日(日本時間)にベルリンで行われる決勝の解説も担当する。

 ーーGS全体の印象を聞かせてください。

 W杯でもそうですが、どの国もGSは苦労するんだなと感じました。スムーズに勝ち上がっているのはスペインとドイツ、ポルトガルぐらいで、あとはどの国も苦労している印象があります。もしかしたらW杯よりもGS突破が難しいと言える大会かもしれません。強豪国と呼ばれる国以外のチームでも非常に良いサッカーをしていると思います。そういう意味で、GS突破はやはり厳しいものだなと感じました。

 優勝候補にも挙げられるイングランドは、メンバーは良いけどいつも苦戦する印象がありました。今大会もここまでは難しい状況にあるなと感じます。メンバーを見れば見るほど、とんでもないチームだと思っていましたが、ふたを開けてみると“おやおや?”という印象が正直なところです。良い選手が集まるだけでは勝てないというサッカーの面白さを感じます。

 ーー改めてポテンシャルの高さを感じた国はどこですか?

 スペインとドイツは、選手層もそうですが、戦術的にも4ー3ー3、あるいは4ー2ー3ー1で洗練されている印象です。ボールポゼッションはもちろんですが、ボールを奪ってからも速い。中も外も使える。なんでも出来るチームだなという印象です。選手層とやっているサッカーは頭一つ抜けていると感じていますし、順調にいけば準々決勝で両国が当たってしまうのはもったいないですね。

 また、ポルトガルは個人的に注目している国の一つです。若くて良い選手もたくさんいますが、ぺぺ(ポルト、41歳)など、同世代の選手が活躍している点も注目している理由の一つです。クリスティアーノ・ロナウド(アル・ナスル)も39歳ですよね。その年齢でトップレベルで活躍しているのは本当にすごいことです。

 個が強すぎるゆえにチームとしてはうまくいかない可能性もある中で、ちゃんと結果を出してきている点は素晴らしいなと思います。ある記事で、ジョアン・カンセロ(バルセロナ)が「(C・ロナウドは)ピークを過ぎているけど、色々な意味で影響力があるし、チームのために戦っているから代表でもできるんだ」といった趣旨の発言をしていました。若い選手が“彼はピークを過ぎている”と言えている環境は良いことだと思います。

 僕はチームが結果を出していく上では、必ず経験豊富な選手が必要だと思っています。一方で、若い選手が育っていかないとチームのサイクルは回っていきません。そこをどれだけうまくやるかが監督の仕事だと思っています。僕自身、自分では(ベテランとしての振る舞いが)出来ていると思っていても、周りから見るとそうじゃないといったジレンマを感じていた時期がありました。ポルトガルの状態を見る限り、そういう意味でもとてもいい状態にあるんだろうなと感じます。

 ーー優勝候補に挙げられているフランスの印象は?

 点が取れない印象ですね。エンバペやデンベレ(パリ・サンジェルマン)、テュラム(インテル)など個の力で点が取れる選手たちが揃っているのに、ここまでは点が取れていない。その背景には、欧州各国の守備の固さとGKのレベルの高さが影響しているのかもしれません。

 今大会は4ー3ー3とか4ー2ー3ー1のシステムを採用しているチームが多いですが、守備時には5バックに可変して守ったり、そのまま中盤でガチっとはめて守ったりと、守り方がすごく洗練されている印象があります。強力なサイドアタッカーがいるときは、後ろの枚数を増やすだけでなく、前の選手たちもおりてスペースを消すといったやり方がかなり洗練されている印象は受けます。一方、攻撃の部分ではウイングが非常に重要だと思っていて、ここで1枚2枚とはがせると一気に相手の守備組織が崩れます。ウイングが中に入ってサイドバックが上がってくる形でも良いですが、どちらにしてもサイドではがせる選手がいるかどうかが重要かなと思います。

 ーーGS全体を通して最も印象的なチームを教えてください。

 スペインはやっぱり強いと感じました。ラミン・ヤマル(バルセロナ)もそうですけど、ニコ・ウィリアムス(アスレティック)もすごい。ロドリ(マンチェスター・シティ)やペドリ(バルセロナ)といった真ん中のラインもそうですが、ウイングが強烈です。現代のサッカーは中央のラインだけではなく、ウイングの部分で相手をはがせるか否かはかなり重要だと思っています。その点でスペインの両翼は状態が良いなと感じます。

 ーー今大会を通じて、日本サッカーが見習うべき点はありますか?

 僕は守備の人間なので、ディフェンスのところに注目しています。先日、遠藤航(リヴァプール)と話す機会がありましたが、やはりボールを奪いに行くところに欧州と日本ではまだ差があるなと。ボールを奪いに行くスピードと寄せる距離感が違う。奪うためにはボールホルダーの近くに行かないといけないけど、ひるんで間合いを空けたらボールは取れないし、下がったらチームとして怒られるそうです。ボランチが抜けていった選手についていく方がDFラインは崩れずにリスクは小さく済むかもしれないけど、欧州の選手はそこでDFの選手がボールを奪いにいく。自分のスペースを捨てて、後ろがマンツーマンになっても前に出てボールを奪いに行くといったリスクを負っている。だからこそ攻撃的な守備になるし、見ていても面白いのだと思います。日本でももっとそういった守り方がスタンダードになっていくと良いなと感じています。そこは“意識”と普段からの“習慣”が重要になってくる部分だと思います。一瞬でもちゅうちょしたら間に合わない世界なので、日々の練習から徹底していくことが大事なんだろうと感じます。

 ーー守備の話になりましたが、気になるDFの選手はいましたか?

 イタリアのリッカルド・カラフィオーリ(ボローニャ)はクロアチアのヨシュコ・グヴァルディオル(マンチェスター・シティ)が出てきたときのような衝撃を受けました。もちろんサイズもあるし足元も強くて守備は間違いないですが、左足でボールを前に持ち運ぶこともできるので注目しています。現代のDFには、パスが出せることとボールを前に運べることが求められますが、僕はいつも言っている通り、DFはまず守れないといけません。その点でもグヴァルディオルやカラフィオーリはやっぱり守備もすごい。それがベースにあった上で、攻撃のタスクをあれだけこなせるのはすごいなと思いますね。

 ーーいよいよ決勝トーナメントがはじまりますが、気になるチームは?

 GSを3位通過となりルーマニアと対戦することになったオランダは気になります。DFラインはサブも含めてすごい選手がそろっています。統率という意味でコンパクトさと対人の部分は世界トップクラスだなと感じています。ただ、前線とDFラインの選手は充実している一方で、フレンキー・デ・ヨング(バルセロナ)を欠く中盤が若干手薄なのかもしれません。それが影響してか、得点力がイマイチといった印象があります。

 ただ、GSで苦労したチームが決勝トーナメントで復調するケースは多々あります。そこにはすごく注目しています。ドイツ、スペインやポルトガルなど、順当にGSを突破したチームと、イングランドやフランス、イタリア、オランダなど、GSで苦労したチームのどちらが決勝トーナメントで勝ち上がるのか。連戦ですし、スペインなど、ターンオーバーをしているチームが有利に思えますが、必ずしもそうは行きません。とは言え、スペインは相当良い勝ち方をしてきていますし、ポルトガルなども良い状態です。どちらの状態のチームが勝ち上がっていくのか、すごく気になっています。

 ーー大会中、チームがうまくいっていない時に重要になってくることは?

 大会が始まっているので、監督と選手の関係がどうとかを言っても仕方がありません。ピッチで選手たちが「俺たちがやろうぜ!」という状態になることが一番大切だと思っています。GSでうまくいかないなりにもなんとか勝ち上がったのであれば、ピッチ内で選手たちがやるだけだと思います。ベンチメンバーも含めチームが一丸となり割り切って戦っていけるかが大事だと思います。

 ーーずばり優勝予想は?

 面白くない無難な答えとしては、スペインだと思いますが、個人的にはベルギーにも期待しています。FIFAランキング2位とかにいながら、国際大会で優勝したことのないベルギー。実は現役時代からベルギーが好きで、チーム内で優勝予想をした際にはいつもベルギーを挙げていました。デ・ブライネ(マンチェスター・シティ)はキレキレですし、フィニッシュの面でうまくはまれば勝ち上がっていけると僕は思っています。今大会まで知りませんでしたが、ドディ・ルケバキオ(セビージャ)も、ものすごく良い選手です。ベルギーとポルトガルの中盤から前のタレントは本当に素晴らしいですね。

 ーー決勝トーナメントに向けて、視聴者へのメッセージをお願いします。

 自分が応援していないチームを見ても、W杯に匹敵するくらい面白い試合ばかりです。僕は仕事を通してそのことを改めて感じています。もちろん世界的に名の知れた選手たちのプレーを見ることも素晴らしいですが、「こんな選手がいるんだ!」という発見がある大会でもあります。大会が終わった後、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)やUEFAヨーロッパリーグ(EL)が始まったときに、ここで戦った選手たちの活躍を見るのも面白い。現役時代はあまりユーロを見てこなかったので、今大会が僕にとって思い出のユーロになるはずです。みなさん、一緒に思い出を作りましょう!

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 WOWOWの決勝トーナメントの放送・配信日程は以下の通り(いずれも日本時間)。

 スイスvsイタリア=6月30日6午前0時45分(WOWOWプライム・WOWOWオンデマンド)▽ドイツvsデンマーク=6月30日午前3時45分(WOWOWプライム・WOWOWオンデマンド)▽イングランドvsスロバキア=7月1日午前0時45分(WOWOWプライム・WOWOWオンデマンド)▽スペインvsジョージア=7月1日午前3時45分(WOWOWプライム・WOWOWオンデマンド)▽フランスvsベルギー=7月2日午前0時45分(WOWOWプライム・WOWOWオンデマンド)▽ポルトガルvsスロベニア=7月2日午前3時45分(WOWOWプライム・WOWOWオンデマンド)▽ルーマニアvsオランダ=7月3日午前0時45分(WOWOWシネマ・WOWOWオンデマンド)▽オーストリアvsトルコ=7月3日午前3時45分(WOWOWプライム・WOWOWオンデマンド)

 準々決勝=7月6日午前0時45分、7月7日午前3時45分▽準決勝=7月10日午前3時45分、7月11日午前3時45分▽決勝=7月15日午前3時

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