瀧内公美:「私は役を客観視して演じるタイプ」 「光る君へ」明子の役割は? 呪詛後「教育ママ」化、“負け犬感”も「大事」に

NHK大河ドラマ「光る君へ」で源明子を演じる瀧内公美さん(上) (C)NHK
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NHK大河ドラマ「光る君へ」で源明子を演じる瀧内公美さん(上) (C)NHK

 俳優の吉高由里子さん主演の大河ドラマ光る君へ」(NHK総合、日曜午後8時ほか)で源明子を演じている瀧内公美さん。父・源高明の仇(かたき)である兼家(段田安則さん)に対する明子の強い情念、鬼気迫る呪詛シーンの印象の強さから“憑依型”かと思いきや、瀧内さんは「私は役を客観視して演じるタイプ」と語る。では実際に明子役をどう捉えているのか、話を聞いた。

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 ◇役柄のヒントは“六条御息所” 呪詛シーン「先入観を一回捨てて」

 明子は、父・源高明が政変で追い落とされ、幼くして後ろ盾を失ったが、道長(柄本佑さん)の“もう一人の妻=妾(しょう)”となる。二人の間に子供も生まれるが、のちに、まひろ(紫式部、吉高さん)の存在に鬱屈がたまっていく。昨年3月の出演発表の際、明子について「制作者の皆様からは、役柄のヒントは『源氏物語』でいう“六条御息所”と、現段階では言われております」とコメントしていた瀧内さん。

 「私は日本舞踊をやらせてもらっていて、『葵の上』という演目を通じて、六条御息所のことは知っていました。あとは瀬戸内寂聴さんがお書きになった『女人源氏物語』を読んだのですが、すごく勘違いしている女性なんですよ、妄想が激しくて。いまみたいに建物がしっかりしていないから、隣の声が聞こえてくるんですね、ちょっとしたうわさ話でも。そこで自分の中で妄想と想像が広がり、それが恨み妬みになり『呪い殺さなきゃ』ってなる。そういう怨念が溜まりに溜まって、自分の中であらぬ物語を作っていく人なんだろうなって」

 「源氏物語」の中で、強い嫉妬のあまり、生霊となって恋敵をとり殺す六条御息所。一方で明子も、おなかの子を(結果的に)犠牲にしてまで、兼家を呪い殺すことに成功する。話題になった第14回(4月7日放送)の呪詛シーンだが、瀧内さんとって初めての経験となった。

 「私、呪詛したことないので(笑い)、まずやり方が分からなかったです。平安時代の映像作品ってそんなにないですけど、配信されている映画を見たりして。そういったものの中で、野村萬斎さんの『陰陽師』のイメージが一番強い。最初に呪詛シーンまでの台本は顔合わせのときまでにいただいていましたので、打ち合わせの段階で演出の黛(りんたろう)さんに『どういった形でやりますか』と相談はして、私の方からもいくつか提案させてもらいました」

 陰陽師指導を受けながらも「先入観を一回捨てて」挑んだというシーン。

 「リハーサルを積み重ねて、最終的に放送した形になったのですが、私の中では、ブツブツ何かを唱えてからスッと息を吸って“ハッ!”というイメージだったのですが、黛さんには黛さんのイメージがあって、『明子はもっと燃え上がってやります』と言われて、先入観は一回捨てよう、捨てきって明子なりの呪詛をやろうと。平安時代を生きていた人、今誰もおりませんから(笑い)、『それ違う、間違い』と誰も言わないから、とにかく自分たちで見つけた呪詛を提示しようと演じさせてもらいました」

 明子が呪詛をやり切った瞬間、兼家から手に入れた扇が「パーンッ!」と音を立てて割れる演出だったが、同シーンは、その日の瀧内さんの撮影を締めくくるもので、終わったときは拍手喝采だったとか。

 「でもちょっと恥ずかしいですよね。平安といえばたおやかで、サロンで集まって他愛もないお話やお遊びをして、(黒木華さん演じる)倫子さんだと猫を愛でたりとか、そういう世界観にあって、私だけって。でも呪詛は、生きている中で経験できるものではないですから、お芝居ならではの醍醐味(だいごみ)ではありましたね」

 ◇母親になったことでパワーアップも、一番強いキャラクターは「倫子」

 呪詛後、再び道長の子を妊娠し、出産した明子。元々は醍醐天皇の孫ということで、位は高く、子供にも「いい位を」と考える「教育ママ」へとなっていく。

 「呪詛したことで一つ落ち着き、母親になったことでパワーアップしている。台本にも『教育ママになっている』と書かれていて、決して優しいお母さんって感じではないですし、明子が出てくるシーンって自分の子供のことや、子供の位に固執して、そのことに執拗になっていきます」

 そんな明子だが、第22回(6月2日放送)では、道長のことが本当に好きになってしまったこと、道長の父・兼家を恨んでいたことのすべてを告白。“心変わり”が描かれた。

 「『殿にもいつか明子なしには生きられぬと言わせてみせます』というせりふの『殿にも』がすごく気になって。『殿にいつか明子なしには』なら分かるのですが、なんで『殿にも』、この“も”は何だろうって。大石静さんの本って、言葉一つにたくさんの意味を想像させてくださるので、いろいろな読み方ができるんですよね。それをどう感じるかは人それぞれですから、なるべくフラットに演じるようにしていますけど、そういう言葉一つにすごい奥行きがある。こちらの想像が広がる本だなって思っています」

 俳優としては役に入り込むことはなく、客観視して「その役の役割はこうなんだろうなとか考え、演じていく」と明かす瀧内さんにとって、「光る君へ」における明子はどんな存在なのだろうか。

 「道長の妻、妾(しょう)として存在していて、道長を中心にいろいろな女性がいる中で、明子は六条御息所みたいなキャラクターで、執念深く、ほかの女性には負けられないという思いを持ちながら立っている。血筋もよく、歳を重ねれば重ねるほど威厳が出るように明子像を作ってはいますが、ちょっとの“負け犬感”は大事だなって思っています」

 瀧内さんから見た一番強いキャラクターは「倫子」だ。

 「彼女ってすごく出自もいいですし、黒木華さんの演技を見ていても、ねたむことを知らない女性に見えるんですよ。それが逆に怖いというか。明子は、父親が失脚したせいで、血筋しかないのですが、倫子には有無も言わせぬ財力があるし、位もある。何不自由なく、猫と共に生きている。それが豊かさの象徴だなって思っています」

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