海に眠るダイヤモンド
最終話後編(10話)記憶は眠る
12月22日(日)放送分
俳優の吉高由里子さん主演のNHK大河ドラマ「光る君へ」(総合、日曜午後8時ほか)。4月7日放送の第14回「星落ちてなお」では、段田安則さん扮(ふん)する藤原兼家が、3人の息子たちの中から、自身の後継者を選ぶ様子が描かれたが、道兼役の玉置玲央さんの演技について、「玉置さんの表情筋がすごい」「道兼の表情がほんとに百万点」「よくあんな顔が動くなぁと感心しちゃった」などと視聴者の注目を集めた。
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第14回のオープニングのタイトルバック開け、兼家は道隆(井浦新さん)、道兼(玉置さん)、道長(柄本佑さん)を集め、息子たちにこう告げる。「今日は気分がよいので、お前たちを呼んだ。出家いたす」と──。
続けて「望み通り関白になったが、明日それを辞し、髪を下ろす」と口にすると、「わしの跡は……」と“後継者”の指名に移る兼家。ここで道兼は、信じて疑わない父と目が合い、期待に満ち満ちた顔になるが、聞こえてきたのは「道隆、お前が継げ」との道兼にとっては聞きたくなかった言葉。道兼は驚きながら、道隆から兼家へと視線を移すと、「父上は正気を失っておられる。父上の今日あるのは、私の働きあってこそ。なぜ兄上に!」と自分の“手柄”を主張し、兼家の決定への不満をぶつける。
しかし、兼家からは「黙れ。正気を失っているのはお前の方じゃ。お前のような人殺しに一族の長が務まると思うのか!」と言い返され、さらには「大それた望みなぞ、許し難し。下がれ」とまるで相手にされない状況に、道兼は顔をわなわなとさせ、見る見るうちに怒りの感情を膨らませる。
抑えきれなくなった道兼は、ここで「父上こそ、帝(みかど、一条天皇)の父の円融院に毒を盛り、花山院の女御様とその子を呪詛し、そのあげくあやめ奉った張本人ではないか!」と裏の悪事を暴露。それでも兼家には響かず、逆に「道兼はこれからも、我が家の汚れ仕事を担って兄を支えてまいれ。それが嫌なら身分を捨て、どこへでも流れてゆくがよい」と言われてしまう始末。道兼は怒りに震え、かつ今にも泣き出しそうな顔になると「この老いぼれが……」と切り出し、憎しみに満ちた憤怒の表情で「とっとと死ね!」と言い放った。
まひろの母を殺めた“人殺し”でありながら、父に認められたい一心で“汚れ役”を、ある意味“喜々として”引き受けてきた道兼。後継者指名については、勝手に自分でかけたハシゴを外されただけのことで、「自業自得」と言ってしまえば自業自得だが、同情を禁じ得ずにはいられなかったのも、また確か。それも玉置さんのなんとも人間臭い道兼像を、表情筋を総動員してここまで作り上げてきたからこそ。絶望からか、その後、参内しなくなり、妻と娘にも去られてしまった道兼だが、その行く末と共に、引き続き玉置さんの演技には注目したい。
「光る君へ」は63作目の大河ドラマ。平安時代中期の貴族社会が舞台で、のちに世界最古の長編小説といわれる「源氏物語」を書き上げた紫式部(まひろ)が主人公となる。脚本を、2006年の「功名が辻」以来、2度目の大河ドラマ執筆となる大石静さんが手掛け、きらびやかな平安貴族の世界と、懸命に生きて書いて愛した女性の一生を映し出す。
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