鋼の錬金術師:実写映画がついに完結 “座長”山田涼介への信頼と荒川弘が感じた“ハガレン愛”

「鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成」のシーンカット(C)2022 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会
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「鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成」のシーンカット(C)2022 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会

 荒川弘さんの人気マンガ「鋼の錬金術師(ハガレン)」が原作で、人気グループ「Hey! Say! JUMP」の山田涼介さんが主演を務める実写映画シリーズの完結編が、2部作「鋼の錬金術師 完結編 復讐(ふくしゅう)者スカー/最後の錬成」(曽利文彦監督)として公開されている。完結までの道のりを関係者への取材を元に振り返った。

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 「鋼の錬金術師」は、2001~10年に「月刊少年ガンガン」(スクウェア・エニックス)で連載された、荒川さんの人気マンガ。錬金術が科学のように発達した世界を舞台に、エドとアルの兄弟が、失った体を取り戻すため「賢者の石」を探す旅に出る……というストーリー。アニメ化もされ人気を博し、2017年には1作目の実写映画が公開された。

 新作は、マンガ「鋼の錬金術師」の連載20周年を記念した新プロジェクトとして公開される。2部作の前編となる「復讐者スカー」は、原作でも人気のキャラクターである“傷の男(スカー)”を中心としたストーリー。かつて国軍によって滅ぼされたイシュヴァールの民の復讐のために、すべての国家錬金術師の抹殺を誓うスカーが、エドと相対することになる。後編「最後の錬成」は、“お父様”との戦い、その後のエドとアル、仲間たちの物語が展開し、原作の最終話までを描く。

 ◇完成度高い原作 2人の“キーパーソン”の熱意

 荒川さんの初連載作だった「鋼の錬金術師」。担当編集だったスクウェア・エニックスの下村裕一さんによると、読み切り作品として提出されたネームのあまりの完成度の高さに、急きょ連載作品として作り直してもらったという。連載当初からラストまでの大筋はほぼ固まっていたといい、「荒川先生が練り上げた世界観、ストーリーを薄めず、最後まで描き切っていただくために」連載期間の引き延ばしも行わなかったという。

 そうした高い完成度を持って作り上げられた「鋼の錬金術師」。連載20周年を記念した新プロジェクトとして製作されたのが実写映画シリーズの完結編だった。完結編を製作するきっかけの一つになったのが、作品に携わった2人の“キーパーソン”の熱意だったという。

 1人目はエドを演じた山田さんだ。“ハガレン愛”がとても強かったという山田さんについて、プロデューサーの葭原弓子さんは「エドが、アルの体を取り戻すところまで自分で演じきりたいということをずっとおっしゃっていた。前作の公開が終わった後も、お会いする度にハガレンへの熱意を伝えてくれました」と明かす。

 そしてもう一人のキーパーソンが物語の生みの親、荒川さんだった。「(前作の)オリジナルキャストでハガレンの最後を見たい」という思いがあったといい、葭原さんは「お二方の声が製作陣の強い原動力になって。そこに突き動かされた」と振り返る。

 ◇キャストが語った“座長”山田涼介への絶大な信頼

 人気キャラクターのロイ・マスタングを演じたディーン・フジオカさんをはじめとした前作キャストや、エドとアルの父親、ヴァン・ホーエンハイムと“お父様”の2役を演じた内野聖陽さんら今回の新キャストが口をそろえて語るのがエドを演じた山田さんへの絶大な信頼だ。

 今回、若い頃の“お父様”も演じている山田さんは、原作のイメージに近づけるため、半年もの筋トレを敢行し15キロ増量。役作りへのストイックな姿勢が話題を呼んだ。さらに、グリーンバック撮影も多かった製作現場では、絵コンテを元に映像の出来上がりを出演者に説明するなど、“座長”としてスタッフとキャストの間に立った。「山田君がいなかったら成立しなかった」(ホークアイ役の蓮佛美沙子さん)、「躍動感があって、魅せてしまう力がある」(ブラッドレイ役の舘ひろしさん)と、共演者も絶賛する座長ぶりだったという。

 山田さん自身も取材に対し「細かい部分に関しても、演じるからこそより良くしたいという思いから気づいたことは提案させていただきました。演者でもあり(ハガレン)ファンでもあって原作にリスペクトがあるので、できる限り寄せていきたい」とコメント。完結編の最重要人物でもあるホーエンハイムと“お父様”を演じた内野さんとは、親子役ということもあり、初共演ながら綿密なコミュニケーションをとったという。さらに内野さんのしゃべり方や仕草も観察して、若い頃のホーエンハイムと“お父様”を演じ切った。

 ◇荒川弘が感じたスタッフ、キャストの“ハガレン愛”

 担当編集の下村さんによると、実写映画化にあたり荒川さんからは「必ずこうしてほしい」という話は特になかったといい、スタッフ、キャストの“ハガレン愛”を感じていたという。

 「マンガとは異なる、実写にしかできない表現が必ずあると思っていたので、そこを大事にしてほしいという思いはありました。特に近年はCGがすごく進化していますし、マンガにはない迫力が見られるのだろうなと。実際出来上がった作品を見ると、監督が『鋼の錬金術師』をすごく愛してくださっていることが伝わってきますし、山田さんをはじめとしたキャストの皆さんのたたずまいもキャラクターそのもので。ちょっとした動き、ポーズすらも完璧だなと映画の世界に没入してしまいました」

 千葉県鋸南町に大規模なオープンセットを建築して行われた撮影を、荒川さんが見に来ることもあったといい、葭原さんは「荒川先生が喜んでいる姿を見ると、俳優部もスタッフもものすごくテンションが上がった。私たちにとっては、偉大な原作を生んだ、自分たちがバイブルのように見ている作品の生みの親なので、その方が見ているのはモチベーションにつながりましたね」と振り返った。

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 「独創的だが王道の少年マンガ。緩急のある演出や独特な間、シリアス一辺倒ではないエンタメ性」(下村さん)、「年齢、性別、環境などの要素で受け取るテーマが左右され、自分の成長とともに感じ取れることが変わっていく作品」(葭原さん)、「エドが強くなりすぎず、ブレずにエドワード・エルリックの成長や人としての物語を描いている」(山田さん)など、スタッフやキャストにハガレンの魅力を尋ねてみると、実にさまざまな言葉が飛び出す。ファンの数だけ魅力があるという希有(けう)な原作の実写化を堪能したい。

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