アンサング・シンデレラ:石原さとみ主演作、「泣ける」理由は患者への「フォーカス」 “薬剤師ドラマ”だから描けた“その後の日常”

連続ドラマ「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」の一場面(C)フジテレビ
1 / 1
連続ドラマ「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」の一場面(C)フジテレビ

 日本の連続ドラマで初めて病院薬剤師を主人公にした、女優の石原さとみさん主演の「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」(フジテレビ系、木曜午後10時)。石原さん演じる病院薬剤師の葵みどり(石原さん)が、患者一人一人に真摯(しんし)に向き合い、奮闘する姿を描く物語で、SNSでは「毎回、泣ける!」「今日も涙腺が…」と反響を呼んでいる。最終回の放送を前に、ドラマの野田悠介プロデューサーに、制作のいきさつやドラマに込めた思いを聞いた。

あなたにオススメ

 ◇窓口の奥の世界を「知ってもらいたい」

 野田さんは、これまで「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」「グッド・ドクター」「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」といった数々の人気医療ドラマの演出を担当し、今回が初のプロデュース作となる。
 
 原作は、マンガ誌「月刊コミックゼノン」で連載中の荒井ママレさん作、富野浩充さん医療原案のマンガ「アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり」。原作を読んだ野田さんはこれまで、ドラマで薬剤師をメインで描いている作品を「見たことがなかった」ことに気付き、患者に薬を渡す窓口の奥の世界を知ってもらいたいという思いで「縁の下の力持ち(=アンサングヒーロー)」の“薬のプロフェッショナル”たちを題材としたドラマ化の制作に動き出した。

 しかし、薬剤師の主戦場は、いわゆる医療ドラマでいうダイナミックなオペシーンがある手術室などではなく、調剤室だ。ドラマ化するにあたり、野田さんは「オペシーンに代わるものは何なのか」と考えた末、調剤室で「薬をスピーディーにさばくかっこよさ」、薬剤師が患者と深く接触する「服薬指導」で「患者一人一人との接し方を丁寧に描けば、ドラマチックになるのではないかと思いました」と話し、「指摘されないとついついやってしまう服薬ミスだったり、患者さんの生活背景を含めて指導することをドラマの主軸にしました」と力を込めた。

 ◇エンディングまで患者一人一人にフォーカス

 ドラマは、ゲストとして登場した人物の後日談を描く毎話異なるエンディングも、視聴者の涙を誘う印象的なシーンとなっている。主要キャラクターたちが登場せず、毎話登場するゲストに焦点を当てた“異例”の演出も、患者が入院という非日常から、みどりたちの指導を経て、“当たり前の日常”を取り戻していくメッセージが込められているという。

 医師が主役の医療ドラマであれば、手術を終え、患者が退院すればひとまず一件落着だ。しかし、実際のところ、退院後も通院し、服薬しながら日常生活を送る患者も多く、薬剤師はそうした患者の日常に近い存在だといえる。野田さんは「患者一人一人にフォーカスを当てることが、このドラマの特色だと思いますし、そこにうれしい反響をいただいているので、やってよかった」と、笑顔を見せた。
 
 「泣ける」という反響がある一方で、みどりが患者の服薬している薬を調べるため、自宅や患者が通うドラッグストアに行くといった、一人一人に真摯に向きあうという姿勢に、「現実的には難しいのでは?」といった厳しい意見もある。これについて、野田さんは「薬剤師の仕事がどこまでか、という線引きは病院によって異なると思いますが、薬剤師が絶対にやってはいけないという大枠の範囲を超えてはいないと思っています」と丁寧な口調で説明。「みどりは一人一人の患者に尽くすというやり方で、刈谷(桜井ユキさん)はひたすら調剤をさばくというやり方で、キャラクターそれぞれが抱く正義でやっている行動を感じてほしいと思います」と語った。

 ドラマを制作するにあたって実際に病院への取材も行った。そこは、800床の病院で、在籍している薬剤師は33人。現場では「薬剤師の人数をもっと増やしたい」という声が上がっていたと明かす。野田さんは、みどりが医師と共に救急患者を救うために奔走するシーンについて、「薬剤師が救急にも増えてくれたらうれしいな」という願いを込めて制作していることを明かしつつ、「今後、AIなどロボットがある程度発達し、薬剤師の方たちが患者と接触する時間が増えたらいいですね」と、期待も語っていた。

 9月24日に放送される最終回では、みどりが、瀬野章吾(田中圭さん)に抗がん剤治験薬の投与を始めてから2年が経過。萬津(よろづ)総合病院から萬津産婦人科医院で働くことになったみどりの奮闘を描く。涙なしには見られない、ラストストーリーに注目だ。

テレビ 最新記事

MAiDiGiTV 動画