薬屋のひとりごと
第38話 踊る幽霊
4月11日(金)放送分
人気アニメ「リコリス・リコイル」のオリジナルショートムービー「リコリス・リコイル Friends are thieves of time.」がアニプレックス公式YouTubeほか各配信プラットフォームで4月16日午後9時から毎週水曜に順次配信される。「リコリス・リコイル」は、「ソードアート・オンライン」シリーズ、「WORKING!!」シリーズなどでキャラクターデザイン、総作画監督を担当した足立慎吾さんが初めて監督を務めたオリジナルテレビアニメ。テレビアニメが2022年7~9月に放送され、ノベライズやコミカライズ、舞台なども展開されている大ヒット作だ。4月16日から順次配信されるショートムービーは計6本で、アニメのキャラクターデザインを担当したいみぎむるさんがネーム脚本を手掛けるなどさまざまなクリエーターが参加した。足立監督、いみぎむるさんにテレビアニメを振り返ってもらいつつ、ショートムービーに込めた思いを聞いた。
あなたにオススメ
美少女殺し屋役から駆け上がった! 「ばけばけ」ヒロイン高石あかりに高まる期待
ーー「リコリス・リコイル」はSF、ガンアクション、バディーものなどさまざまな要素のある作品です。監督はどのような意識で制作した?
足立監督 現実の我々が住んでる世界が抱えている問題のある一部を誇張した世界の中で、どんなことが起きるか? 登場人物たちは何を思うか?というエンタメ的なシミュレーションを楽しんでもらいたいって感じかも。舞台設計として荒唐無稽な部分と現実的な部分の匙加減は大事だとは思うのですが、それ以上に作品世界の中にいるキャラクターが、自分の住んでいる世界をどのように観測しているかを描きたい。僕らも生きていて、それぞれが異なる人生哲学があって、同じ状況を見ていても、違う感想を持つわけじゃないですか。 空想の作品でも同じ場所にいて、それぞれに感じることがあり、考えをぶつける。そういう様子を見るのが好きですね(笑)。この状況でどんなことを話すのかな?を想像するとキャラクターがいろいろ話し始めるので楽しいですね。
ーー千束たちは、ディストピアの中で生きていて、状況を受け入れています。
足立監督 多くの人は、会社や社会の方針に対して抗っていないですよね。世界には理不尽なことが存在するものだと理解した時、人間は大人になるんじゃないかと思うんですよ。何かしら、折り合いをつけてる。主役の考えの立脚点も同じにしたかったですね。反対に、理不尽に抗う活動家になる人もいますが、僕自身そういう人ではないから、気持ちは想像するしかないんですけど……。夏の暑い時に政治家が駅の前に立って一人、メガホンで自説を話たりしてるでしょ?。大変だなぁ……と思う。あの方たちは世の中を是正しなければいけないと心から思っているのか? それとも頑張っている様子を見てもらって、当選したいだけなのか? 世界を受け入れて、家に帰って家族と一緒にアイスクリームを食べる生き方をなぜ選ばなかったのか? 人間は本当に無償でこんなことができるのか? 主役には僕と同じようなそういう素朴な疑問を持つ人物であってほしかったかな。千束は主人公だから、“悪”みたいなものに対して怒りを覚えてほしいけど、その理由は地に足が付いていて、理解可能なものだといいなと思っています。
ーー敵としてテロリストの真島も出てきます。
足立監督 敵ですし、倒されるべき存在なので、僕に理解できないことを言っていてもいい。でも、彼も食事はするし、仲間もいるし、映画だって見る。話もできない悪魔じゃない。真島みたいな活動家に対して、割と普通の考えを持っている千束が一般人の視点で、何でそんなことをしているの?と聞くと面白くなる。千束も変なところがあるので、違う立場の人間が入ることで、引き出されていくものもあります。そうやって生まれる会話が好きで、どう面白くなるかを考えているんですけどね。
ーーいみぎむるさんが「リコリス・リコイル」に参加することになった経緯は?
足立監督 キャラクターデザインは紆余曲折あって、一回白紙になったんです。途方に暮れていた時、いみぎむるに出会えたんです。
いみぎむるさん 幸運ですね。
足立監督 共通の知り合いがいたんです。コミケでその人が同人誌を売っていて。
いみぎむるさん その人が同人誌を売るのを手伝ってくれていたんです。たまたま足立さんが前を通りかかって、その人が呼び止めた。僕は足立さんとは面識がなかったので、紹介してもらいました。
足立監督 まさか、いみぎむると会えると思ってなかったから……これだ!(笑)と「アニメの仕事ってできます?」って聞いたんです。「じゃあ、年明けに電話するんで」と言って。
いみぎむるさん そこからですね。あの時、コミケに出ていてよかったです。運命的でした。
ーー足立監督が感じるいみぎむるさんの魅力は?
足立監督 いみぎさんの絵は以前から好きでした。似たものを感じてたのかも(笑)。僕も一応絵を描くのですが、いいなと思うものは、自分の絵にも取り入れますし、常に探しています。それを持ってる人はそんなにたくさんいなくて、どんなに人気があってキレイな絵でも刺さんなかったり……ってあるでしょ? 好きだと思う部分は、言語化が難しいけど、何かあるんですよ。その部分がいみぎむるにはあったんです。妻からも「好きそうだね!」と言われました。客観的に見ても、僕が好きなものがあるんでしょうね。最初に絵を見て、いいなと思ったのが「電撃マオウ」の表紙でした。
いみぎむるさん 僕は足立さんに憧れていました。作品の設定資料集を買って、足立さんの絵を真似していましたし、影響を受けています。少ない線でシンプルながら魅力的な絵が僕の憧れなんです。構図やポーズもすごいんです。
ーー一緒にアニメを作る中で感じたことは?
いみぎむるさん 自由に描かせていただけて、すごくやりやすかったんです。
足立監督 お任せでしたしね。
いみぎむるさん 優しい人です。「リコリス・リコイル」に参加する前、僕はマンガの仕事しかしていなかったけど、その後はマンガ以外の仕事も増えましたし、自分にとって大きなターニングポイントになりました。今はマンガ家とは名乗れないくらいで、自称・マンガ家ですね(笑)。
足立監督 ご自身のマンガもアニメになって、オリジナルアニメでもキャラクターデザインをされて、ライトノベルのイラストレーターもして、それがアニメ化されて……。三冠王ですね!(笑)すごい仕事量です。
いみぎむるさん いや、なんか言い方が(笑)。皆さんに感謝しています。「リコリス・リコイル」は全てが学びでした。何にも分からない状態で現場に入って、足立さんに教えていただきながら、吸収できるものは全て吸収しようとしました。スポンジ状態でした。出来上がったアニメを見た時は、成長できたなという実感がありました。元々、マンガ家になる前は、アニメをやりたかった人間だったので、アニメに関わらせていただけたのは、ありがたかったです。
ーーショートムービーはどのように制作を進めた?
足立監督 新作開発では何をすれば喜んでいただけるのか?を考えています。オリジナル作品ですし、いくつもの選択肢があります。このフィルムを見てくれた人たちが、この作品のどこを面白いと思ってくれたのか? 作っている僕たちがちゃんと把握して、間違いのない作品開発にしたいと思っています。アニプレックスには、いろいろなセクションの人たちがいるので、作り手では分からない作品の反響などをヒアリングさせてもらって、方向性を確認したり……。どんなグッズが喜ばれて、どんな感想が届いているのか……とかね(笑)。制作側からは見えない視点は刺激的だし、発見もありますよね。
ーー意外な反響もあった?
足立監督 男性、女性とか、年代別の感じ方の違いの差は興味深かったです。キャラクターのどの部分が愛されていたかは興味ありますからね。かっこいい人物、愛される人物って、時代によって目まぐるしく変遷するものだし、一人の視点では判断しずらいですから。
ーー6本のショートムービーをラインアップしています。いみぎむるさんが“ネーム脚本”として参加したエピソードもあります。
いみぎむるさん 何本かやるんだったら1本くらいやらせてもらえませんか?と雑談で言ったのがきっかけでした。脚本担当が決まってないエピソードがあるから、ぜひぜひ!と始まったんですよね。
足立監督 当初はテスト用に90秒くらいの映像を1本作るだけの予定だったのが、もっとやろうってことになったので。いみぎさんはマンガ家だし、物語を作るプロでもありますから、その機会を逃す手は無い!(笑)。うれしかったです。それならやりたいこと、面白いことをいろんな人に提案してもらえたらいいかな?と。最終的に、この作品らしさを担保するのは僕がやればいいので、とりあえずやりたい人たちが、面白いと思って取り組んでもらえたらと考えていました。オリジナルだからこそできることをやってみようとしました。
いみぎむるさん 喫茶リコリコの美術設定を使っていないものがあるから、使いたいというお話もありましたよね。そう聞いていたけど、僕が担当したエピソードでは、あんまり使わなかった(笑)。
足立監督 そうそう。実は裏口が二つあって、片方しか使っていなかったり。ホールのロフト部分にもあまりカメラいってませんでしたから。
ーーいみぎむるさんの“らしさ”を感じる表現もある?
いみぎむるさん マンガっぽい表現もネーム脚本で出しました。最終的な表現は、演出家の方がいろいろ調整してくれるので、どれくらい残るか分からなかったけど、結構残してくれています。マンガ家ならではの表現もあるのかな?と思いながら描きました。
足立監督 面白かったです。この要素を残しつつ、どうしようか?と考えていました。うまくできていますか?
いみぎむるさん めちゃくちゃいい感じにしていただいて、最高でした!
足立監督 まあ、ショートなので気軽に見ていただければ。
ーー“新作アニメーション”の制作も発表されています。今回のショートムービーとは別に作っている?
足立監督 このショートムービーが新作と思われるかもしれませんが、“新作アニメーション”も作っています。それはテレビアニメが終わってから、すぐに始めて慎重に取り組んでますので、もうちょっと待ってね。ショートはショートで好評なら続けたいんですけどな……。
いみぎむるさん また、呼んでいただけるなら、ぜひお願いします!
足立監督 でも、売れっ子だからなあ(笑)。
いみぎむるさん 何を言っているんですか!
1979年~80年にNHKで放送されたアニメ「アニメーション紀行『マルコ・ポーロの冒険』」のイベント「アニメーション紀行『マルコ・ポーロの冒険』ALLファン祭り★プレミアム上映&…
1週間のアニメのニュースをまとめて紹介する「アニメ1週間」。4月6~12日は、「ヤマトよ永遠に REBEL3199」の第四章「水色の乙女(サーシャ)」が10月10日から上映される…
青山剛昌さんの人気マンガが原作のテレビアニメ「名探偵コナン」(読売テレビ・日本テレビ系、土曜午後6時)が、2026年1月に放送開始30周年を迎えることを記念して、プロジェクト「3…
新刊コミックス情報をお伝えする「今週の新刊」。4月14~19日に発売される主なコミックスは約380タイトル。テレビアニメ第4期が7月から放送されることも話題の「彼女、お借りします…