対岸の家事~これが、私の生きる道!~
#1 専業主婦は絶滅危惧種…!?
4月1日(火)放送分
俳優の横浜流星さん主演のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(総合、日曜午後8時ほか)の第13回「お江戸揺るがす座頭金」(3月30日放送)では、老中・田沼意次(渡辺謙さん)が、十代将軍・徳川家治(眞島秀和さん)と世継ぎの家基(奥智哉さん)に面会し、江戸城西の丸に勤務する旗本の多くが借金漬けになっている証拠を示して窮状を訴える様子が描かれた。
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その際、引き合いにしたのが、借金返済に窮して家族とともに逐電した森忠右衛門(日野陽仁さん)。実在したエリート旗本だが、史実でも借金苦から頭を剃って出家した。
将軍の家臣である旗本と御家人ら幕臣の給料は米の現物支給だった。忠右衛門の場合、将軍から与えられた領地があり、その米の生産量は600石。このうち60%が領民に、40%が忠右衛門に分配されるので、実質収入は240石。幕府の公定レートでは1石の米は1両(現在の価値で約10万円)に相当し、忠右衛門の年収は約2400万円。
高収入のようだが、楽ではなかった。江戸時代を通じて飢饉のときを除き、米の値段は安定もしくは下がる傾向にあった。公定レート通りに換金できず、旗本の収入は目減りする。他方、米以外の諸物価は値上がりを続けた。しかも旗本は軍役といって、いざというときに将軍のために出陣する義務を負う。忠右衛門クラスの旗本だと、10人前後の家来を常にそろえておかなければならず、その人件費だけでも家計を圧迫していた。
大坂東町奉行所の与力で、1837年に幕府に対して反乱を起こした大塩平八郎の家計簿が残されている。年収は手取り80石(800万円)だが、換金して生活費と人件費を差し引くと年間12両(120万円)の赤字だった。また、300石の旗本の給与と支出明細によると、年間33両(330万円)の赤字を解消できない状況が続いていた。
幕臣が頼ったのが札差だった。幕府の米蔵から給料として搬出される米の運搬、換金を代行する業者で、やがて米を担保に幕臣に融資する金融業も営むようになる。109人の札差が株仲間に公認され、独占的に営業した。利息は年利18%と高利だ。
数年先の給料を担保に借金を重ね「10人のうち6、7人が前々の借金のため今年の切米(給料の米)が一粒もない」(三田村鳶魚「札差考」)ありさまとなり、旗本らは座頭金に手を出すようになる。もちろん返済のあてはない。「カネ借りて高利座頭(こおりざとう)をかみ砕く」と言われるほど踏み倒しが多かった。そんな強気な旗本たちを震え上がらせたのが鳥山検校で、あこぎなやり方は「べらぼう」に描かれた通りだ。
「べらぼう」では“家督乗っ取り”という表現が使われているが、カネの力で検校が自分の子弟らを旗本家に養子に入れる事例はあった。有名なのは勝海舟の曾祖父・米山検校だ。鳥山検校が摘発される10年ほど前、米山検校は旗本・男谷家に自分の息子を養子に入れて、同家を継がせた。米山検校の孫にあたる小吉が男谷家から勝家に養子に入り、小吉の息子が勝海舟である。
裕福な町人も子弟を旗本の養子にし、高額の持参金で借金返済を立て替えるケースが多くなった。江戸後期の社会評論「世事見聞録」によると、武家では養子も嫁も持参金の額を優先させる風潮になった。さらに、自分たち両親の生活費も終生負担してくれる町人を優先的に養子として迎え入れ、あるいは娘を嫁に出したケースもあったという。
旗本よりも収入の低い御家人は内職に励んだ。傘張り、提灯張りのほか、草花栽培、植木、竹細工、スズムシの繁殖、木版彫りなど多岐にわたった。新宿区百人町の由来になった鉄砲組百人隊の御家人たちが屋敷の庭でツツジを栽培して展示即売会を開き、「江戸名所図会」にも紹介される名所になった。今のJR御徒町駅の周辺に住んでいた御家人たちの間では、朝顔栽培が盛んで奇抜な形をした変化朝顔を生み出し販売した。「入谷朝顔まつり」の起源である。
彼らは不動産ビジネスにも手を染めていく。旗本と御家人の屋敷は幕府から無償貸与される。敷地の一部を町人に貸して地代収入を得るケースも急増した。敷地に賭場、売春宿がひそかに出来て、地代のほか売上の一部を収入にあてる町奉行所の役人(御家人)もいたほど、規律が緩んでいった。
旗本の給料を預かり、家計のやり繰りを代行する町人のコンサルタントも現れた。当然ながら旗本が自由に使えるカネは与えられない。家来を常時雇う余裕のない武家向けに、必要に応じて家来を提供する人材派遣業が誕生した。武家同士でやりとりされる贈答品を買い取り、安く販売する献残屋というリサイクル商売も流行。武家相手の“節約ビジネス”である。
後に意次が失脚すると、幕府は幕臣が抱える過去の借金を帳消しにする救済策を強行した。このとき札差が失った債権は118万7800両(1187億8000万円)。札差も反撃に出た。「不良債権処理が大変なので今後の融資はできません」。貸し渋りである。たちどころに幕臣の生活は行き詰まった。幕府は札差に助成金を交付し幕臣への融資継続を依頼せざるを得なくなった。
「べらぼう」第13回で印象的なシーンが二つある。幕臣の手取りを増やすために米の値段を上げろと主張する松平武元(石坂浩二さん)に対して、意次が「カネの動きを操るのは森羅万象を操るようなもの。人の力ではなし得ぬ」と抗弁するシーン。
もう一つは、家治と家基に向かって意次が「恐れながら将軍家はおのれの旗本すら養えておらぬのでございます」と言い切るシーン。米を経済の柱に据えるかぎり武士の世界が破綻していくことを、意次は看破していた。(文・小松健一)
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2025年04月05日 19:00時点
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