ドラゴンボールDAIMA
第11話 デンセツ
12月23日(月)放送分
「サイレントメビウス」「快傑蒸気探偵団」などで知られるマンガ家の麻宮騎亜さんと人気アニメ「宇宙戦艦ヤマト」のリメークシリーズには深い関わりがある。麻宮さんはマンガ家だけでなく、アニメーターとしても知られている。1996年放送の「機動戦艦ナデシコ」内の「ゲキガンガー3」の原画を最後にアニメーターとしての仕事を中断するが、2013年にテレビ放送されたリメークシリーズ第1作「宇宙戦艦ヤマト2199」で、アニメーターに復帰。以降もリメークシリーズの絵コンテ、レイアウト、ビジュアルなども手掛け、リメークシリーズの最新作「ヤマトよ永遠に REBEL3199」のティザービジュアルを描いたことも話題になっている。麻宮さんに「宇宙戦艦ヤマト」への思い、リメークシリーズとの関わりなどについて聞いた。
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第1作となるテレビアニメ「宇宙戦艦ヤマト」は半世紀前、1974年に放送をスタートした。大きなムーブメントとなり、その後のアニメに大きな影響を与えることになる。麻宮さんも大きな衝撃を受けた一人だった。麻宮さんが「宇宙戦艦ヤマト」に参加したのはリメークシリーズが初めてではなかった。1983年公開の「宇宙戦艦ヤマト 完結編」にも動画として参加していたという。
「放送が始まったのは小学5年生の時です。僕の田舎は当時、民放が2局しかありませんでした。『侍ジャイアンツ』が終わって、『ヤマト』の予告を見て衝撃を受けました。これは来週から見なければ!と予告でやられてしまったんです。それまで見ていたアニメとは違った。ただ、周りはあんまり見ていなかったですね。(裏番組の)『猿の軍団』を見ている人が多かったかな? 『ヤマト』はアニメ雑誌が生まれるきっかけになって、それを見てアニメーターという仕事を初めて知りました。絵を描くことで、ご飯を食べていけるのなら……とアニメーターを目指すようになったんです。アニメーターになって初めての仕事は『完結編』の動画でした」
麻宮さんは“菊池通隆”名義でアニメーターとしても活躍してきたが、マンガに集中するため、アニメーターとしての仕事を中断する。しかし、「2199」を手掛けた出渕裕監督からの直接のオファーがあり、アニメーターとして復帰することになる。
「キャラ原案をやっていた『機動戦艦ナデシコ』内の劇中アニメ『ゲキガンガー3(キャラデザインは羽原信義さん)』の原画が最後だったと思います。マンガもやっていますから。(2011~12年放送の)『仮面ライダーフォーゼ』のクリーチャーデザインをやることになり、出渕さんに相談に行ったんです。初めてのクリーチャーデザインだったし、大先輩に話を聞きにいったら、『今、実はヤマトをやってるんだよ。設定を見たい?』と言われたんです。そりゃ、見たいですよ。見たら、『見たね? この艦に乗らないのか?』と言われて(笑)。出渕さんの言うことですし、僕が断る理由が全くないですから。やっぱり『ヤマト』は特別ですし、『ヤマト』があるから今の自分がありますしね。
「2199」にアニメーターとして参加したが、最初は「浦島太郎状態だった」と振り返る。
「原画は15年ぶりくらいだったので、分からないことが多く、制作進行に用語集を出してもらいました。最初は、木星の浮遊大陸でドンパチするメカシーンでした。今だったらCGに全部お任せしてしまうけど、当時はCG制作のためのタイミングなどの参考にするために、ラフ原画を描いていました。その後もレイアウトの修正、エンディングの原画とレイアウト……といろいろなことをやりました。プロデューサーの下地志直さんは、僕がフリーランスのアニメーターになって最初に仕事をいただいた方で、基本的にお世話になった方の仕事は断らないんです。下地さんとは、葦プロダクションの『トランスフォーマー』の仕事をいただいてからの付き合いでした。僕も長く業界にいますいが、タイミングと縁があったから続けられたんだと思っています」
「2199」の続編として2017~19年に劇場上映された「宇宙戦艦ヤマト 2202 愛の戦士たち」にも参加することになる。「2202」の監督を務めたのは羽原信義さんだ。麻宮さんと羽原さんは「快傑蒸気探偵団」「機動戦艦ナデシコ」「天空戦記シュラト」「超音戦士ボーグマン」などさまざまな作品で“縁”がある。
「『2202』では、羽原さんとまずはオープニングの構想を考えました。2人でファミレスで話しながら、僕がその辺にあったナプキンに、こんな感じですかね……と描いて、絵コンテのベースを作りました。レイアウト、原画、絵コンテ、版権のイラストをやっています。プラモデルのパッケージイラストも始めました」
2021年に公開された「2199」「2202」の総集編「『宇宙戦艦ヤマト』という時代 西暦2202年の選択」にも参加する。
「総集編の新作シーンの絵コンテ、メカの新規カットを全部一人でやっています。レイアウト、原画も全部。総集編に参加して、自分のアニメーターとしての限界が見えてしまい……。アニメはみんなで作る総合芸術だから、ほかの人に迷惑が掛かると思い、アニメーターを辞めることにしました。もうやりません。引退です」
ファンにとっては残念でしかない“引退宣言”ではあるが、「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」や最新作「ヤマトよ永遠に REBEL3199」にも参加している。
「『2205』ではスリーブのイラストや後章ではティザービジュアルをやらせていただき、『3199』でもティザービジュアルを描かせていただきました。そのほかに本編のディティールアップ、絵コンテを2本やって、イメージボードのようなドローイングも描いています。第一章ラストカットのヤマトは僕の絵です。ドローイングは、絵コンテなどの参考のために描いたのですが、いつかどこかで公開できる機会があればいいですね」
「3199」の第二章「赤日の出撃」のティザービジュアルには、ヤマトが発進しようとするシーンが描かれている。
「第4話の絵コンテが僕なんですが、第4話でアステロイドから出てくる発進シーンをビジュアルにしています。やや俯瞰(ふかん)気味、逆光で艦橋の辺りがブラックアウトし、窓だけが光っている。真正面のヤマトのビジュアルは珍しいかもしれません」
アニメーターは“引退”したものの、「機動戦士ガンダム 水星の魔女」「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」「HIGHSPEED Etoile」などの絵コンテも手掛けている。また、バンダイナムコフィルムワークスで若手アニメーターに向けて講師もしている。
「去年から毎週水曜日、新人アニメーターの育成講師をやっているのですが、僕以外の講師は現役バリバリのアニメーターの方々なので、僕はちょっと違う教え方をしています。動きはあんまり教えないんです(笑)。方法論、レイアウトやカメラなどを教えていて、毎回映画を見てもらっています。見せる前にポイントを言っています」
麻宮さんから直接指導してもらえるなんて贅沢な話で、どんな映画を見せているのかも気になるところだ。
「最近は『鉄道員(ぽっぽや)』を見てもらいました。日本映画のターニングポイントの一つになった作品だし、名撮影監督の木村大作さんの名前を覚えておいた方がいいという話をしました。『劇場版 エースをねらえ!』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』も見たり、『さらば愛しきルパンよ』とフライシャーのスーパーマンの『謎の現金強奪ロボット』を見たり……と実写映画も見ています。アニメーターは、生身の人間の演技を見て研究した方がいい。アニメはそんなに見ないでもいいというタイプなので」
第1作「宇宙戦艦ヤマト」の放送開始から半世紀たったが、ヤマトには今も色あせない魅力がある。
「戦艦大和の大艦巨砲主義を残しつつ、宇宙船らしさもある。それまでの宇宙船はロケット系が多かったですし、艦が空を飛ぶのもインパクトが大きかった。ヤマトが偉大なので、ほかの宇宙戦艦のデザインは大変なんです。ヤマトのインパクトが大きすぎて、まねができない」
“ヤマト世代”の麻宮さんはリメークシリーズの魅力をどのように感じているのだろうか?
「『ヤマト』の新作が今もできていることが大きいことだと思います。昔からのファンも応援してくれているし、『2202』では女性ファンがかなり増えました。僕は『ヤマト』だから何でもやります。『ヤマト』だったら何でもいいのか?と言われることもありますが、だって『ヤマト』ですからね。そういう存在なんです。リメークシリーズは監督によってカラーが違いますし、そこも楽しみにしているところです」
「3199」は「2202」「2205」のシリーズ構成を担当した福井晴敏さんが、総監督を務めている。
「福井さんの作品は情報量が多いです。今回は総監督という立場で、あの情報量を消化しなければいけないので、大変だと思います。絵コンテを切っていても、情報が多いと感じるし、おそらくこの情報量の奥にもすごいものがいっぱいあるはずです。僕の本編での絵コンテやドローイングの仕事などは全て終わっていますが、どうなるのか楽しみにしています」
リメークシリーズには麻宮さんをはじめ「宇宙戦艦ヤマト」への熱い思いを持ったスタッフが参加している。上映中の「3199」の第二章「赤日の出撃」で、その熱量を感じてほしい。
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