モンスター
#11 求める者たちへ
12月23日(月)放送分
俳優の神木隆之介さん主演のTBS系日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」(日曜午後9時)が10月20日午後9時にスタートする。明治の初めから戦後の高度成長期にかけ、石炭採掘で発展した長崎県・端島と現代の東京を舞台にした70年にわたる愛と友情、家族の物語だ。脚本・野木亜紀子さん、監督・塚原あゆ子さん、プロデューサー・新井順子さんのドラマ「アンナチュラル」「MIU404」、映画「ラストマイル」チームによる注目作となる。一人二役で主演する神木隆之介さんをはじめ、斎藤工さん、杉咲花さん、土屋太鳳さんの過去パートの主要キャスト4人が語った。
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物語は、戦後の復興期から高度経済成長期の「何もないけれど夢があり活力に満ちあふれた時代」と、現代の「一見して何でもあるけれど若者が夢を持てない時代」を描く。神木さんは、端島の炭鉱員の家で生まれ育った明るく真っすぐな鉄平と現代のホスト・玲央の二役を演じる。
神木:お話をいただいたときは、うれしい気持ちと、僕でいいのかというプレッシャーがありました。「集団左遷!!」(2019年)に出演したときは、先輩の福山雅治さんの背中を見ながら臨んでいましたし、福山さんが僕らのモチベーションを引き出してくださっていた印象が強かったので、経験をたくさん積まれた方が務めるイメージがありました。だから、僕で大丈夫なのかなって……。
斎藤:お言葉ですがキャリアスタートはいつからでしたっけ……?
神木:2歳からです……(笑)。皆さんを引っ張る力があるか不安だったのですが、優しい皆さんに支えられて逆にパワーをいただいています。
杉咲:めちゃくちゃ優しいですよね。
斎藤:そうですね。太陽みたいな存在です。
土屋:逆に、鉄平の兄・進平を演じる斎藤さんは、影を背負っている役柄も相まって、月のような存在ですね。
斎藤:以前、別のドラマで共演したことがあったのですが、途中から台本は度外視で掛け合いをするような撮影で、セッションをさせてもらったような感覚があって。今回はまた共演できることが楽しみでした。そのときは僕が下着泥棒役で……。
神木 そうそう。僕が刑事役で(笑)。取り調べで追い詰める立ち位置から、兄弟役になりました。斎藤さんは何でも受け止めてくれるお兄ちゃんだと思っているので、僕がミスをしても優しく見守ってくれるんだろうなと安心しています。
杉咲:神木さんとは今回で7回目の共演で、初めてお会いしたのはもう10年くらい前。今もそのころの優しい神木さんのまま変わらず、周りの方々に気を配る姿勢がとても素敵で、尊敬しています。
土屋:私も小さい頃から神木さんが出演されていた作品を拝見してきました。お芝居になるとスイッチが入る一方で、カットがかかると明るくふざけている一面も見せてくれて私たちが元気をもらうというか。みんな大人になったことで撮影現場では静かに過ごしがちなのですが、それをいい意味で覆してくれます(笑)。
神木:はい。僕1人で演じていることには変わりないのですが、別の人が2人存在していると思ってもらえるのが一番理想的。自分の中では端島の鉄平と現代の玲央の二役の違いを考えて生み出しているつもりですが、視聴者の皆さんにも伝わるように、監督とも相談しながら奮闘しています。
神木:杉咲さんは一度撮影現場に来てくれましたね。
杉咲:そうなんです。もう別人でした! 「鉄平どうしたの~!?」って感じで(笑)。
神木 ホストの役なので「花ちゃ~ん!」と、ちょっとチャラめに迎えてみました(笑)。
斎藤:鉄平の兄・進平は、その時代に起きたことや、それによって残ったもの背負いながら、端島に宿る何かを信じて生きている人物です。鉄平が島に帰ってきたことで、端島の明るさのワット数が上がって、僕だけではなく家族にも光が差し込まれていくグラデーションを大切に演じています。
杉咲:朝子は鉄平の幼ななじみでもあり、ずっとひそかに恋心を抱いていて、それを言葉にできないもどかしさも抱えている役どころです。食堂の看板娘として忙しい日々を送る中で、美しいものを見つけると思わず立ち止まるような豊かな心を持っている人。端島には植物がなかったので、花はすごく貴重なものでしたが、なんとか集めた少ない花を職場に飾って大切に過ごしています。そんな感覚を自分の中でも持つため、私も実際に家で花を1輪活(い)けて生活しています。
土屋 百合子も鉄平と朝子の幼ななじみ。新しい女性像を目指すような明るく自由奔放なキャラクターに見えるのですが、いろいろなことを背負っていて……。でもそれを見せずに生きている女の子です。
神木:いづみ役の宮本信子さんは、優しくてパワフルで、本当に助けられています。リハーサルが終わったあとに「玲央くん、どうする?」「じゃあ、私はこうしてみるね!」と、面白いものと出合えるのではないかという、期待と希望に満ちた表情で相談してくださるんです。
斎藤:本読みでの宮本さんの姿も印象的でした。本読みはどうしても台本の文字を追う作業になりがちなのですが、宮本さんはずっと神木さんを見つめていて、心で捉えている姿に痺(しび)れました。
僕は父・一平役の國村隼さんとのシーンが多いのですが、國村さんはカメラの画角的に、「ここに顔が来るといいな」という場所にちょうど合わせてくる天才的な技をお持ちで、僕らはそれに「KUNIMURA」という体操競技のような技名をつけています。
神木:柱がいっぱいある場所で、遠目からカメラを回しているシーンがあったのですが、國村さんが歩くところからはカメラ位置もよく把握できないような場所だったんですよね。限られた隙間からしか撮影できない状況だったのですが、本番でカメラに映る位置にピタッと止まっていて。
斎藤:そうそう。しかもリハーサルからカメラ位置が変わっていて、それは國村さんに伝わっていなかったんです。なのに本番でバチッと決めていて「KUNIMURA」決まったー! 金メダル!って思いました。
神木:来たーっ! 芸術点高いですねえ!ってね(笑)。國村さんにそれをお伝えしたら「技名になっちゃってうれしいなあ!」っておっしゃっていました。
神木:作品が発表されたとき、記事に軒並み「最強チーム」と書かれていて、そんな3人についていけるのかと一瞬不安になりました。でも、それだけ皆さんが認めるチームが味方なら安心だなと。野木(亜紀子)さんが紡ぐ言葉や、塚原(あゆ子)さんの芝居のハードル、そして新井(順子)さんのキャストを見る目に、はいつくばってでもついていこうと思いました。実際の皆さんは和気あいあいとしていらっしゃいますよ!
杉咲:野木さんの脚本からは、端島でパワフルに生きる人たちの姿がありありと目に浮かんでくるよう。人と人が隣り合って生きていくことへのエールや祝福を感じました。塚原さんと新井さんとは、「夜行観覧車」(2013年)以来、ご一緒させていただきます。地道に仕事を続けていたらこんなにうれしい再会が待っているんだなと、懐かしさも感じながら撮影に臨んでいます。
神木:僕の心に眠る“ダイヤモンド”は…・・・「楽しさ」です。むしろ眠っていないかも! とにかく何でも楽しそうだなと思うほうを選びます。撮影の本番でもいろいろやりたくなっちゃって、お芝居としての安パイを取らないことも。でも、そのほうが生活している動きとしては自然だったりするんですよね。あとは、面白そうだなと思って國村さんにいきなり靴下を投げてしまったりとか(笑)。
杉咲:投げていたね!
神木:撮影前に國村さんに「僕の靴下が顔面に飛ぶかもしれません」とお伝えしたら、「全然いいよ! ウェルカム!」と言ってくれて。本番でも意外と狙った場所に投げることができました。
斎藤:顔面靴下投げ、「KAMIKI」ですね(笑)。
神木:そういう楽しそうな方向に行こうというのが僕の“ダイヤモンド”です!
杉咲:私の“ダイヤモンド”は太鳳っちです! 私が連続テレビ小説のオーディションを受けたとき、ちょうど太鳳っちが朝ドラのヒロインで。緊張しながら出番を待っていたら、たまたま通りがかった太鳳っちが「花、オーディションなの? できるよ! 大丈夫!」と言ってくれたんです。それにとても勇気をもらって、今でも大切な思い出になっています。
土屋:ありがとう…! 私にとっても花の存在はすごく大きくて、会えていなくても花が出ている番組は絶対に観(み)ています。お芝居はもちろん、人としてもお芝居も、全部が大好きです。
神木:現場でもずっと2人でいるもんね!
土屋:ストーリーの役柄では少し仲が悪いのですが、お互いが好きだからこそボタンの掛け違いのようになってしまっている部分もあると思います。その2人の関係性も注目してほしいです。
斎藤:2人の話で心が洗われたのでもういいかな?(笑) 僕の“ダイヤモンド”は國村さんと、辰雄役の沢村一樹さん。大先輩で、たくさんのことを学ばせていただいています。本作では、沢村さんがご自身で髪を切られているという話を聞いて、僕も自分で髪を切るように。たしか当時の端島で現代的なカットをする美容師さんはいないですよね。ただ横側が上手に切れなくてきのこみたいなフォルムになってしまうので、現場で横だけメイクさんに切ってもらっています(笑)。
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