海に眠るダイヤモンド
最終話後編(10話)記憶は眠る
12月22日(日)放送分
俳優の松本若菜さん主演で、人気グループ「SixTONES」の松村北斗さんも出演する火曜ドラマ「西園寺さんは家事をしない」(TBS系、午後10時)の第10話が9月10日に放送される。今作を手がける岩崎愛奈プロデューサーが見どころを語った。
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ドラマは、ひうらさとるさんの同名マンガ(講談社)が原作。徹底して家事をしない主人公・西園寺一妃(さいおんじ・いつき、松本さん)と、年下で訳ありシングルファーザーの楠見俊直(松村さん)、その娘のルカ(倉田瑛茉ちゃん)の風変わりな同居生活を通し「幸せって何? 家族って何?」を考えるラブコメディー。
第9話で横井(津田健次郎さん)が話した“出汁(だし)”の例えは、原作の中でもとてもすてきだと思っていたエピソードと前回もお話しましたが、津田さんに演じていただけたことで、言葉の重みやあったかさ、優しさが、視聴者の皆さんにも存分に伝わっていたようでうれしい限りです。その言葉を胸に響かせている西園寺さんと楠見も、若菜さんと松村さんが本当にすてきに演じてくださって。言葉の持つ力を私自身も改めて感じた回ですね。
そして、病院でのシーンも印象的でした。普通の恋愛ドラマだったら、同じ女性を好きになった男性2人って対立的な構図になるはずですが、本作では、楠見も横井もお互いを信頼し合う関係がすでに築かれている。楠見にとっての横井は“偽家族”を受け入れ、支え、さらにはその一員になりたいと言ってくれた人でもあるし、横井からすると、“偽家族”の一員になったことで楠見への敬意や愛情が生まれている。
だから、横井に「西園寺さんのことを好きなんですか?」と聞かれた時、楠見はきっとうそをついたりごまかしたりしないんだろうなと思ったんです。そして横井も、正直に「はい、好きです」と答えた楠見の言葉を、決して恋のライバルからのけん制の言葉としては受け止めないのだろうなと思いました。そうして生まれたシーンなのですが、しっかり信頼関係を築いてきたあの2人にしかできない会話だからこそ、すごくすてきではあるんですけど……その分、すごく切なさも苦しさもあります。
もしかしたら、いっそバチバチにライバル関係になった方が楽かもしれないですよね。でも誠実で互いに敬意がある 2 人だからこそ、同じ女性を好きになってしまった切なさが増したシーンだと思っています。
そして最後に、西園寺さんが楠見に言い放つ「出ていってほしい」というセリフ。見てくださった皆さんも「えっ!?」と驚いていたようですが、私も台本を作っておきながら「なんでそうなっちゃうんだよー!」ともどかしく思っています(笑い)。ただ、2人がどれだけ相手のことを思っているかは見てくださっている皆さんもわかってくださっていると思うので、西園寺さんがなぜそういう言葉にたどり着いたのか、なぜそんな決断をしたのかを第10話で追いかけていただけたらと思います。
第10話の見どころは、幸せなのにせつない、3人+1匹暮らしの最後の日々です。第9話の終わりで楠見に「出ていってほしい」と告げた西園寺さん。その理由を知り、楠見もそれを受け入れます。そして楠見家の引っ越し先が決まるまでの、この暮らしの最後の日々が描かれていきます。
ルカが納得してくれるように面白おかしい家族会議が開かれたり、“偽家族”水入らずの楽しい時間を過ごして大笑いしたり……家族って、家族にしかわからない笑いのツボみたいなものがあると思うんです。他の人から見たら何がそんなに楽しいんだろう?と思うようなささいなこと、くだらないことでも、家族となら不思議なくらい楽しくて面白くて、永遠に笑っていられたりする。そしてそんな記憶がずっと残っていると思うんです。
西園寺さんと楠見とルカが本当に楽しそうで幸せそうで。ああこの3人はもう家族なんだなと改めて思いました。でもこの3人はもうすぐ別々に暮らし始める……その幸福感と切なさが同時に押し寄せてくる感覚を一緒に感じていただけたらと思います。私は撮影時なんだか泣きそうになりました(笑い)。
そして、そんな幸せと切なさが混在する“偽家族”最後の日々の中、西園寺さんと楠見は何を思っているのでしょうか。西園寺さんはいつもの通り明るくてポジティブでどんどん前に進んでいく。楠見はこの数カ月の暮らしで西園寺さんから受け取った優しさを胸に、この家に初めてきた時よりもずっと柔軟になってこの家を出る準備を進めていく。
2人はなにしろ仕事ができるので、引っ越しの準備もどんどこ進んでしまうんですよね。もっとゆっくりやって、もっと一緒にいたらいいのに!と思わずにいられないくらいに。そんな先へ先へとポジティブに進んでいく2人ですが、ふとした時に見せる表情や言葉をどうかお見逃しなく。
誰かを好きになること、大切な人が増えることは、とても幸せなことですが、でもそれだけではない。せつなさも、寂しさも、もどかしさも増えます。今までのようにひたすらポジティブに、自分に正直にいられないこともある。だけどそれもまた西園寺さんと楠見の人間らしい姿だと思います。バタバタな残り少ない“偽家族”の日々を笑って見守りながら、西園寺さんと楠見の「本心」がどこにあるのかを探しながら、もどかしさと切なさを楽しんでいただけたら幸いです。
第9話で西園寺さんとお別れした横井。視聴者の皆さんからは、横井が第9話で退場してしまうのでは?と心配する声もたくさん届きました。が、そんなことはさせませんのでご安心ください!
ご存知の通り、横井はそんじょそこらの懐の広さではない大きな大きな心を持った人。ぶっとんだ “偽家族”をすべて理解して受け止めてくれた人ですから。西園寺さんとの“恋人”という関係は終わったけれど、そのあと横井はどうしていくのだろうと考えた時に、これからもきっと西園寺さんは、彼にとっての大切な人であるということは変わらないのではないかと思いました。
一度は“偽家族”の一員になり、楠見やルカにも愛情を持ってくれている人ですし、西園寺さん、楠見、ルカにとってもそれは同じ。一度固く築かれた信頼関係と絆と愛情は、そう簡単には壊れないと信じてみようと思いました。
横井がこの先も“偽家族”にどう関わっていくのかもぜひ引き続き見守ってください。いよいよ残すところ残り2話。そんな終盤の展開は、ものすごくものすご~く考えて、たくさん話し合いながら作りました。視聴者の方がどう受け止めてくれるのかすごくドキドキしますが、どう受け止めてもらったとしても正解、絶対正しい答えなんてないのだから、と、西園寺さんと楠見から教えてもらったような気がしています。皆さんもそれぞれの解釈で、西園寺さんたちが感じていること、思っていることを、ぜひ受け取ってください。
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