薬屋のひとりごと
第13話 外廷勤務
12月27日(金)放送分
(インタビュー(1)の続き)アニメ「機動戦士ガンダム」のキャラクターデザインを担当したことで知られ、マンガ家などとして活躍する安彦良和さんの回顧展「描く人、安彦良和」が、兵庫県立美術館(神戸市中央区)で開催されている。幼少期から現在に至るまでの安彦さんの創作活動の軌跡をたどる回顧展で、約1400点の貴重な資料を展示する。安彦さんに、創作の原点や転機、今後の活動について聞いた。
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2018年にはシベリア出兵をテーマとしたマンガ「乾と巽-ザバイカル戦記-」をスタートし、今年5月に連載を終了した。同作は連載開始時に“最後の新連載”と告知された。
「“最後の新連載”は言葉の間違いだと思いますよ(笑い)。インパクトはありますけど。連載は大体5年くらいかかる。今の年だと、5年後は……と計算してしまう。きちんと最後まで描ける自信がない。だからもう長いものはやめておこうということです。ただ、マンガをやめたわけではないです。いいお誘いがあったらやります」
ファーストガンダム(『機動戦士ガンダム』)を再構成したマンガ「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」のOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)では、約25年ぶりにアニメの現場に復帰。2022年公開の劇場版アニメ「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」でも監督を務めたが、自身にとって「ガンダム」の映像化は「これで最後かもしれない」「思い残すことはない」とも語ってきた。
「1989年に引退したつもりだったのですが、派手に引退宣言をしたわけではないですし。10年くらいたって『引退していたんだね?』と言われたり(笑い)。派手に引退宣言していないから、撤回するのも楽なんです。『THE ORIGIN』で復帰したけど、ファーストガンダム限定ですしね。思い残したことが一つあって『ククルス・ドアンの島』をやって、それで思い残すことはほぼないとは思っているけど、本当にないか?と言われると、実はまだくすぶっているものもあります。ただ、アニメはスタッフ、会社のバックアップがあってできるものだから、どうかな?と思っていますけどね」
マンガの長期連載はないかもしれないが、引退したわけではない。
「仕事を全くやめてしまうと、冗談抜きでボケてしまいますから。まだ仕事ができることはありがたいことです。まだそれなりに描けるし、まだやれます」
回顧展「描く人、安彦良和」では、安彦さんの創作活動の軌跡をたどる。劇場版「機動戦士ガンダム」のポスターラフ案、ガンダムのマスクのデザインの原案ラフ、「宇宙戦艦ヤマト」のポスターラフ案など貴重な資料が初公開された。
「初めて出るものも結構あると思います。本棚の隅にあって、なかなか触る気がしないものもありました。いまだに読み返していないものもあります。昔に描いたものの中には、何月何日に描き始めて何月何日に終わったと記録されていて、それを見て愕然(がくぜん)としました。記憶は当てにならないですね」
安彦さんはマンガを筆で描いているといい、原画を見ると、繊細な筆づかいを感じる。
「アニメーターになってから鉛筆で描いていたので、ペンがいかにも硬くて、筆にたどり着きました。『ヤマト』の時、松本零士さんにお願いした設定を取りに行ったら、松本さんの仕事机に筆があったんです。面相筆で描いたこともあったけど、それはくたくたになってダメでした。松本さんに教えてもらったのは、削用筆でした。いろいろ試したのですが、結構高いんです。中国の画材を売っている店で、安く手に入ったので、これはいいと使い出しました。その店はもうなくて、なかなか手に入らなかったけど、通販で買えるようになり、まとめ買いしました。まだまだたくさんあるので、あと10年くらいは持ちそうです」
約1400点と展示数は膨大で、どれもがアニメ史、マンガ史に残る貴重な資料だ。
「原画展のイメージだったけど、下書き、実現しなかった企画にも学芸員さんが飛びついてくれて、いまだに戸惑っています。元々、物持ちは悪いんですよ。きちょうめんな人は残すと思いますが、仕事が終わると、やけになって捨ててしまいます。でも、何となく捨てるのをためらったものが物置に残っていたんです。特に昔の絵は恥ずかしいです。赤面です。その時々の癖や傾向もありますしね」
同展は、一度に全部見ることができないほど充実した展示となっている。見る度に新たな発見もある。ぜひ、兵庫県立美術館に足を運んでほしい。
「描く人、安彦良和」は9月1日まで。島根県立石見美術館(島根県益田市)でも9月21日~12月2日に開催され、ほかに巡回予定。
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