ドラゴンボールDAIMA
第11話 デンセツ
12月23日(月)放送分
和月伸宏さんの人気マンガ「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」の新作テレビアニメが、フジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」ほかで7月から放送されており、第2クールがクライマックスを迎えている。新作テレビアニメで主人公・緋村剣心という大役を背負うことになったのが、人気声優の斉藤壮馬さんだ。斉藤さんは、緋村剣心というキャラクターに向き合い続け、第2クールの終盤で描かれる“宿敵”斎藤一との戦いで「今までで一番緋村剣心という人とシンクロできた」と感じているという。緋村剣心役に懸ける思い、共演者との絆、収録の裏側を聞いた。
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「るろうに剣心」は、1994~99年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された人気マンガ。幕末に人斬り抜刀斎として恐れられた緋村剣心が明治維新後、不殺を誓った流浪人(るろうに)として、新たな時代の生き方を模索していく姿を描いた。新章の「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚・北海道編-」が、2017年から月刊マンガ誌「ジャンプSQ.(スクエア)」(同)で連載中。1996年に初めてテレビアニメ化され、1997年に劇場版が公開された。1999年以降、3作のOVAが制作された。俳優の佐藤健さん主演で実写映画化されたことも話題になった。
新作アニメでは、キャストが一新され、斉藤さんが緋村剣心、高橋李依さんが神谷薫を演じるほか、明神弥彦役の小市眞琴さん、相楽左之助役の八代拓さんらが出演する。
斉藤さんが初めて「るろうに剣心」に触れたのは小学生の時に放送されていたテレビアニメだった。その後、原作にも触れ、「キャラクターも魅力的ですし、アクションシーンの格好よさだけでなく、ユーモラスなシーンもあって。シリアスとユーモアのメリハリがとても好きでした」と魅力を感じた。
これまで、1990年代のテレビアニメ、OVA、映画、舞台とさまざまな声優、俳優が緋村剣心を演じてきた。斉藤さんは、自身が剣心を演じることになり、「斉藤壮馬が演じる緋村剣心ということをあまり考えていないかもしれない」と語る。
「今回は原作に準拠してアニメーションを再構築するというテーマで制作が進んでいると思いますので、今回の演出であったり、作画であったり、作劇上の緋村剣心という人を過不足なく表現できればいいと思っています。ただ、自分の中の剣心像が元々強くあったので、やはりそこから逃れることはできないというか。自分が『るろうに剣心』のオーディションを受ける際に思ったのが、今の30歳を超えた斉藤壮馬のフィルターを通して、もう一度原作に触れ直して感じたことを素直に表現するしかない。これまで演じられてきた方の側(がわ)だけトレースしても意味がない。だから、剣心役の方々の思いであったり、情熱であったり、声やせりふとして発せられる前の“形にはならないもの”を継承したいと思いました」
斉藤さんは、剣心を演じていく中で、自身の剣心像から逃れられないと同時に「斉藤壮馬という自分からも逃れられない」と感じた。
「剣心の場合は、足し算より引き算の演技というか。いろいろなものを削ぎ落としていく。自分は誰かになれないから、そぎ落として残った核みたいなものが、剣心と共鳴すればいいなと思っています」
斉藤さんは、新作アニメの収録がスタートしてこれまでを振り返り、「特に最初の頃は『緋村剣心を演じなければいけない』『緋村剣心をやらなければいけない』という感覚」がとても強かったという。それが、収録でさまざまなディレクションを受け、「だんだん剣心が体になじんでいった」と感じているという。斉藤さんが剣心を演じ、改めて感じた魅力は「つかみどころのなさ」だった。
「剣心に限ったことではないのですが、人物像を言語化するのは難しいのかなと思っていて。なぜなら、『この人はこういう人だ』と誰かを表現した時に、恐らくそこからこぼれ落ちていくものがたくさんある。その中でも剣心は、いろいろな面を持っているので、一概に『こういう人だ』とはくくりきれなくて、でもそのつかみどころのなさが人間的な魅力なのかなと思っています。正直僕も緋村剣心という人物を一言では言い表せないのですが、その多面性が人としてすごくひかれる部分だなと思います」
斉藤さんは、緋村剣心と人斬り抜刀斎の二面だけではない多面性を表現しようとしているのだという。
「数値化できない、あるいは言語化できない矛盾している感情というか。人間はすごく非論理的な存在だと思うので、お芝居でしか表現できない感情のグラデーションみたいなものが、うまくお届けできていたらいいなと思います。剣心も感情のぶれ、ムラみたいなものがあるので、そうしたコントロールしすぎない部分を大事にしていきたいなと」
斉藤さんが剣心を自身になじませていく上では、神谷薫の高橋さん、明神弥彦役の小市さん、相楽左之助役の八代さんという“剣心組”の存在も大きかった。
「第1クールでは、(鵜堂)刃衛戦が印象に残っているのですが、刃衛との戦いは、剣心が『今の自分のままでは大切な人を守れないのかもしれない』と、自分の過去に目を向けざるを得ないきっかけになった戦いでした。そこで薫殿が刃衛にかけられた心の一方という術を『剣心を救いたい』という思いで自ら解くのですが、その時の薫殿のコントロールされたお芝居ではない本物の叫びがすごく印象的で。収録時も印象的だったのですが、オンエアで改めて見てすごくグッときたというか。『あ、だから剣心は踏みとどまれたんだな』と分かった。やっぱり剣心にとって薫殿はどんどん特別な人になっています。そんな薫殿を的確に、気持ちを込めて表現してくれる高橋さんはやはり素晴らしい役者だな思いました」
当初、「緋村剣心を演じなければいけない」と感じていた斉藤さんが、肩の荷を降ろすことができたのも剣心組のおかげだったという。
「第5話で剣心組がそろったのですが、だんだん仲間が増えて、自然な掛け合いの中で、『あ、肩に力が入りすぎていたな』ということに自然と気付けたというか。やはり、共演者の皆さんとの会話、掛け合い、対話の中で気付かされることがすごくたくさんあって。僕がこの仕事をやっていて一番好きなのが、収録での掛け合いなんです。だからこそ、気付くことができたことなのかもしれません」
第2クールのクライマックスでは、剣心が、幕末に戦った“宿敵”である、かつての新撰組の三番隊組長、斎藤一と対峙(たいじ)することになる。
「数ある強敵の中でも、そしてこの2クールで戦ってきた強者の中でも、純粋な強さで言えば、最強の男がついに登場します。僕は、斎藤一との戦いが今までで一番緋村剣心という人とシンクロできたなと思えたんです。きっといろいろなご意見はあると思うのですが、今の自分が出せる全てを出せたと思っています。また、それは作品が引き出してくれたものなのかなと思っています。その戦いが剣心たちにどんな影響をもたらすのか。非常に大事なところになっています」
「斎藤一との戦いへの覚悟ができたからこそ、剣心とシンクロできたのではないか」と語る。
「もちろん毎話真剣に取り組んでいるのですが、やはりそれまでの戦いとは違う覚悟みたいなものを持たなければいけないなと。これは先程の僕の話とは矛盾するようなのですが、この戦いは肩に力が入ろうが、力もうが、それでもいいのかなと思っていて。自分にとっても、剣心にとっても避けることのできない戦いだという思いがより強くあったのかなという気がしています」
斎藤一との戦いを描いたエピソードの収録後、剣心組の仲間からも「うれしい一言」をもらったという。
「(八代)拓が『きょうの剣心、すごく良かった』と言ってくれて。『剣心があんなふうにいてくれるから、我々もすごくやりやすかった』と言ってくれて、うれしいなと思って。高橋さん、小市さんも『今日の剣心、すごくグッときました』と言ってくれたんです。自分ではよくできたとはやっぱり思えなくて、ただ自分が今できる全力を出すしかないと思っていたんですけど、一番近くにいる剣心組の皆さんがそう言ってくれて、仲間に支えてもらえるのは幸せなことだなと思いました」
斎藤一を演じる日野聡さんとの掛け合いも「とても楽しかった」と振り返る。
「日野さんには、僕のキャリアの初期からすごくお世話になっているのですが、そんな大先輩と同じ幕末を生きた、同じ時代や価値観を共有していた者同士として戦えるというのが、非常にありがたいなと思いました。剣心的には収録に全力で臨むしかないなと思っていたんですけど、日野さんがどしっと構えていてくださるので、剣心もいろいろな角度から戦えたというか。すごく安心感、安定感のあるお芝居で、とても楽しかったですね」
斉藤さんにとって、緋村剣心を演じることは大きな挑戦にもなっている。
「これは剣心、『るろうに剣心』に限ったことではないのですが、自分が役者として次のステージに行くために必要なことが、『普通にしゃべる』ということ。『せりふを言う』のではなくて『言葉をしゃべる』ということが、今一度問われているのかなという気がしているんです。剣心は『おろ』『ござるよ』ですとか、特殊な言い回しもありますが、それも『普通にしゃべる』ということができれば、それだけで成立してしまうというか。僕自身、キャリアも10年を超えて、いろいろな経験をして、持ち玉や手札は増えているのですが、それで武装するのではなく、まさに“流浪人”というか、野ざらしの中に一人で立つというか。剥き身の状態でただ普通にしゃべるということができれば、恐らく剣心のいろいろ表情がもっと引き出せるんじゃないかと。『演じる』の次のステージ、『演じない』ということが、すごく大事なんじゃないかなと思っています」
“流浪人”斉藤壮馬が一人の役者として挑む緋村剣心。今後の剣心の戦い、斉藤さんの戦いから目が離せない。
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