岡田麿里監督:唯一無二の世界観 心の闇も痛みも正直に描く 最新作「アリスとテレスのまぼろし工場」にすごみも

岡田麿里監督の劇場版アニメ「アリスとテレスのまぼろし工場」の一場面(C)新見伏製鐵保存会
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岡田麿里監督の劇場版アニメ「アリスとテレスのまぼろし工場」の一場面(C)新見伏製鐵保存会

 アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(あの花)」などの脚本で知られる岡田麿里さんが監督を務めるオリジナル劇場版アニメ「アリスとテレスのまぼろし工場」が、9月15日に公開される。“泣けるアニメ”として話題になった「あの花」や、劇場版アニメ「心が叫びたがってるんだ。(ここさけ)」(2015年)などで、思春期の少年少女たちの心の傷、葛藤を生々しく描く唯一無二の世界観で多くの人を魅了してきた岡田さんが手がける最新作のキャッチコピーは「恋する衝動が世界を壊す」。すごみすら感じさせる最新作の公開を前に岡田麿里作品を振り返る。

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 ◇聖地巡礼も話題に 伝説アニメ「あの花」「ここさけ」

 「あの花」は、2011年にフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」で放送されたオリジナルアニメ。幼い頃に経験した幼なじみの死から逃れられないまま成長した友人たちが、ある日突然現れた、死んだはずの幼なじみの願いをかなえるために再会し、それぞれの葛藤を乗り越えていく。放送されるやいなや話題になり、“泣けるアニメ”として世代問わず多くの人を魅了した。舞台になった埼玉・秩父へ聖地巡礼するファンが殺到するなど「あの花」現象を生み出した。

 その後、脚本を手がけた「ここさけ」では、幼い頃に何気なく発した言葉によって家族をバラバラにしてしまったことから、おしゃべりを封印され心を閉ざしてしまった少女の葛藤を描いた。劇場版アニメ「空の青さを知る人よ」(2019年)では、両親を早くに亡くした姉妹のそれぞれの恋、揺れ動く思いを描いた。岡田さんは、人の心の機微や、“触れられたくない気持ち”をも全て赤裸々かつ繊細に描き出し、見る者の感情を揺り動かしてきた。

 岡田麿里作品と言えば、一度聞くと忘れられない長文のタイトルも特徴だ。各作品のタイトルにはストーリーが凝縮されており、最新作「アリスとテレスのまぼろし工場」にはどんな意味があるのか、期待が膨らむ。

 ◇新海誠監督も嫉妬させた監督デビュー作「さよ朝」

 岡田さんの監督デビュー作となったのが、「さよならの朝に約束の花をかざろう(さよ朝)」(2018年)。10代半ばで外見の成長が止まり数百年の寿命を持つ民族イオルフの少女マキアと、人間の少年エリアルという異なる時の流れを生きる二人が経験するさまざまな出会いと別れが描かれた。日本のアニメ作品では初めて、第21回上海国際映画祭の金爵奨:アニメーション最優秀作品賞を受賞し、第51回シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭でファンタスティック・ディスカバリー部門の最優秀長編作品賞に輝くなど海外でも高い評価を得た。

 「君の名は。」などで知られる新海誠監督は、同作について自身のツイッターで「脚本家としてアニメの新しさを示し続けてきた岡田麿里さんの監督作。初監督としてこれだけの質を突きつけられると、嫉妬もするし焦りもしてしまいます。僕らも気合を入れないと」とコメントしたことも話題になった。

 ◇熱烈アタックを引き寄せる岡田麿里

 「アリスとテレスのまぼろし工場」は、「呪術廻戦」「チェンソーマン」などで知られるアニメ制作会社MAPPAが初めて手がけるオリジナル劇場版アニメとしても話題になっている。同スタジオは、岡田さんの才能に惚れこみ、「岡田監督の作りたい世界を徹底的に追求した作品を作りたい」と制作を決意したという。

 ピクサー・アニメーション・スタジオでアートディレクターを務めた堤大介さんが監督を務めたオリジナルアニメ「ONI~神々山のおなり」でも、岡田さんは脚本を手がけている。同作も以前から岡田さんの脚本が好きだったという堤監督が猛烈アタックし、岡田さんが脚本担当として参加することになった。

 心の闇や痛み、過去の傷をも正直に描く岡田さんの唯一無二のストーリーは、見る者の感情を“激震”させるほどの破壊力を持つ。最新作の公開を前に、岡田作品の世界に浸り、心構えをしておくのもよいかもしれない。

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