ポールプリンセス!!:これまでにないポールダンスアニメ 誕生の裏側 ダンスシーンの並々ならぬこだわり

「ポールプリンセス!!」のビジュアル(C)エイベックス・ピクチャーズ/タツノコプロ/ポールプリンセス!!製作委員会
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「ポールプリンセス!!」のビジュアル(C)エイベックス・ピクチャーズ/タツノコプロ/ポールプリンセス!!製作委員会

 エイベックス・ピクチャーズとタツノコプロがタッグを組むオリジナルアニメプロジェクト「ポールプリンセス!!」がYouTubeで配信されている。「ポールダンス×歌×頑張る少女たち」をテーマに、ポールダンスに魅了された少女たちの青春を描くアニメで、「プリティーシリーズ」の「アイドルタイムプリパラ」「キラッとプリ☆チャン」などに参加してきた江副仁美さんが監督を務め、同シリーズのCGを手掛けてきた乙部善弘さんがCGディレクターとして参加。ポールダンスをテーマとしたアニメは珍しく、乙部さんによると「おそらくポールダンスアニメは初めて」という。ポールダンスはセクシーなイメージがあるかもしれないが、アニメを見ると、それだけではない魅力に気付き、イメージが覆るはずだ。少女たちが、アクロバティックに踊る姿が美しく、人間がこんな動きをできるのか!と驚かされる。江副監督、乙部さんに、これまでにないポールダンスアニメの誕生の裏側、ダンスの表現の並々ならぬこだわりについて聞いた。

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 ◇こんな世界があるんだ! ポールダンスの驚き、憧れ

 --なぜポールダンスに注目したのでしょうか?

 乙部さん ポールダンスと聞いて、女性のセクシーなダンスのイメージがあるかもしれません。自分自身もそういうイメージがあったのですが、数年前にポールダンスのイメージが変わるきっかけがありました。全米チャンピオンの映像を見る機会があり、肉体美、柔軟性、曲に合わせて踊るドラマ性、表現による自己実現……と素晴らしく、こんな世界があるんだ!と驚きました。その時はアニメにすることを考えていなかったのですが。

 --アニメにしようとした経緯は?

 乙部さん 「KING OF PRISM」という作品を制作している時、ショーの演出で「新しいことをやりたいよね」という話があり、先ほどの映像を思い出して、ポールダンスを取り入れたんです。ファンの方からも「すごくキレイ」という反響もありました。その後、コスプレでポールダンスをしている人の動画を見て、アニメとの親和性が高いかもしれないと考えるようになりました。いろいろな人に見せたんですけど、企画として立ち上がることがなくて、自分で企画書を書いたんです。ポールダンスのアニメはおそらくこれまで存在しません。ただ、自分の中では、これをやれるのは我々しかいないんじゃないかな?とも思い、自分で企画を立ち上げたんです。

 --「我々しかいない」と感じた理由は?

 乙部さん 3Dとの親和性も高いし、過去に「KING OF PRISM」でもやっているので、今まで表現してきたものと世界が近いと勝手に思っていました。企画したのが2020年頭くらいで、アニメの制作を発表するまで類似作品が出てこないでくれ……とずっと祈っていました。

 江副監督 私も映画やドラマでしかポールダンスを見たことなかったので、セクシーなイメージがありました。ハードルが高く、自分には縁がない世界だと思っていましたが、こういう世界もあるんだ!と驚きました。セクシーさとはまた違った美しさがあり、これはアニメにしたらどうなるんだろう?と楽しみでした。衣装を着た可愛い女の子がポールダンスを踊るのも新鮮で、これ面白いものができるはず!という期待がありました。

 --アニメのポールダンスはSTUDIO TRANSFORMのKAORIさんが監修されています。

 乙部さん KAORIさんは日本ポールダンス協会の理事で、STUDIO TRANSFORMはKAORIさんが設立したスタジオです。スタジオでは男女問わず、小中学生もポールダンスを習っています。スポーツ、フィットネスとしてポールダンスを踊る人もいるようです。中高生に、ポールダンスを始めた理由を聞いてみると「先生たちが格好いい」と憧れとして見ているんですね。そこをもっと掘り下げて、憧れとしてアニメを描こうとしました。

 --女性のイメージが強いですが、男性のダンサーもいるんですね。

 乙部さん 発表会に行くと、2、3割は男性でした。

 江副監督 男性のダンスはパワフルです。ポールに対して垂直で静止したり、すごいんです。

 乙部さん 男性のダンスも格好いいんですよ。ポールダンスの世界は知れば知るほど面白いんです。

 ◇いつもより大変 一コマ一コマをチェック

 --実際にポールダンスを見るとアクロバティックな動き、柔軟性に驚かされます。アニメでもポールダンスの動きを表現しています。

 乙部さん 実際にダンサーの方の動きをモーションキャプチャーしています。だから、ウソはついていません。扇子を投げてキャッチなどは演出で、実際には行ってませんがそれくらいですね。

 --キャラクターによってモーションキャプチャーをするダンサーは異なる?

 乙部さん STUDIO TRANSFORMにはいろいろな先生、生徒さんがいて、中には元バレエダンサー、日舞をやっている人もいます。キャラクターに合う人を紹介していただいて、モーションキャプチャーをしています。魔法少女みたいなキャラクターもいますが、それに合うダンサーの方もいらっしゃるんです。例えば、蒼唯ノアは日本舞踊のような踊りが特徴ですが、日舞をやっていた方をモーションキャプチャーしました。日舞をやっている人から見ると、細かいところがちゃんと日舞の動きになっているようです。ダンサーさんはモーションキャプチャー用のスーツを着て、バッテリーも積んでいるので、普段とは全然違うはずなんですけど、すごく柔軟な動きをしていただいています。本当にすごいんです。曲のサビ、一番盛り上がるところで必殺技のようにポールで踊ります。ダンサーさんはいろんな技を持っていて、曲に合わせて見たことないような動きを見せていただいています。

 --これまで手掛けてきたアイドルアニメのダンスとも違う?

 乙部さん 大変ですね。いつもより大変かもしれない。普通のダンスは地面を気にして、衣装のめり込みなどに気をつけないといけないのですが、ポールが加わり、ぐるぐる回る動きにも気をつけないといけなくて、目がおかしくなりそうです。ポールに衣装の袖が当たることがあって、それを回避すると別のところが……と一コマ一コマをチェックしないといけません。全身タイツみたいな衣装にすれば楽なんですけど、やっぱり衣装はちゃんとしたい。夢、憧れを表現したいので外してはいけないところなんです。それに、人間はこんなポーズができるんだ!と驚くような動き、柔軟性のある動きをするので、3Dのモデルが全然付いてこれないんです。3Dが想定している動きを超えているので、脚がへこんでしまったり、形が崩れるので、調整が必要になります。アニメのキャラクターは手脚の長さが実際の人間とは違うので、そこも少しずつ調整しないといけません。

 江副監督 指もモーションキャプチャーをしていないので、タツノコ3D班の方々が一つ一つの動きを付けていますよね。

 乙部さん 技術的には指もキャプチャーできるのですが、精度の問題もあるので、一つ一つ動きを付けています。理想は、これは変じゃないか?という動きをなくして、自然に見ていただける映像にすることです。膨大な時間をかけて作っています。

 --カメラワークによってダンスがドラマチックに見えます。

 乙部さん キャラクターの感情を乗せて踊っているので、悲しい時はちょっと俯瞰(ふかん)にするなど歌詞、芝居、キャラのバックボーンをカメラワークで表現しようとしています。回転中の顔にカメラをフォローさせてみたのですが、白鳥が水面の下では必死にもがいてるように、顔や手足が細かく動いてることに気づきまして、ここは逆に見せない方が良いことが分かったり、いろいろ気を付けてワークを付けています。

 --衣装や背景、小道具など細部のこだわりも見どころになっています。

 乙部さん ポールは天井がないと固定できないですし、アニメでは普段では絶対やらないところで踊って、憧れられるような舞台を表現しています。どんなシチューションにするかは毎回や悩んでますが、監督と相談してノアの桜を最初水彩画風にしたり、サナの最後のペンライトシーンは納品ぎりぎりで追加したりと、時間の限りチャレンジしてます。

 ◇イベントでダンサーが踊る 見たことがないものに

 --キャラクターの設定は江副監督と一緒に決めていった?

 江副監督 脚本の待田堂子さんも含めてみんなで作っています。

 乙部さん 企画の段階でもキャラを作りましたが、大分変わりました。ストーリーもざっくりとあったんですけど、ほぼ変わっています。自分がポロっと言った「プラネタリウムで踊ったらキレイかもしれない」がそのまま主人公のポールダンスをやる動機になったり。

 江副監督 こういう子がいたらいいね……とみんなでアイデアを出しています。オリジナルアニメですし、みんなの好きなものをいっぱい詰め込んだところもあります。

 乙部さん (キャラクター原案の)トマリさんのビジュアルも大きいですね。パイロットフィルムでは、仮にキャラクターを作ったのですが、ポールダンスは脚が長い方が映えるんです。トマリさんが描くキャラクターは脚が長く、魅力的で、誰が見ても可愛いく見えます。リテークもほとんどありませんでした。

 --映像はポールダンスショームービー、ドラマパートの2種類を配信しています。分けた経緯は?

 乙部さん 元々はダンスMVだけだったんです。でも、やっぱり何かしらのドラマがあった方がいいですし、公式サイトでテキストを発表する、ドラマCDにする、ピクチャードラマにするなどいろいろな方法があるとは思うのですが、やっぱりアニメが分かりやすいですし、3Dでアニメを作ることにしました。ダンスとドラマパートが連動していて、ドラマパートでダンスの一部を紹介して、フルバージョンはポールダンスショームービーを見ていただく形にしました。

 江副監督 私はドラマパートのコンテを切っていますが、細かいカメラワークや細かい芝居、表情などは乙部さんにお任せしています。

 乙部さん 3Dのカメラワークは2Dのアニメとは違いますし、ほかの作品で江副監督のコンテが3Dですごく再現しやすかったんです。そういうこともあってお願いしました。

 江副監督 空間にカメラがあることを想定して、無理のないカメラワークを考えています。2Dでは飛躍した表現をアクセントにすることもありますが、3Dの時はあまり入れないように意識しています。

 --ドラマパートもこだわりは?

 江副監督 尺が短いので、その中でキャラクターの個性を出すことを意識しています。共感していただけるように、芝居、仕草、たたずまいにもこだわっていて、舞台役者さんにそのキャラクターになりきって演じていただき、モーションキャプチャーをしています。ポールダンスショームービーと一緒に見ていただければうれしいです。ドラマとダンスがリンクしているので。

 --主人公はヒナノですが、最初にヒナノのポールダンスショームービーを見せないことにも驚きました。

 乙部さん 普通は主人公が最初に出てきますよね。プラネタリウムで発表することがテーマになっていて、そこに向かってストーリーが進むので、最初から見せないようにしました。ヒナノのダンスは、この作品で何をやりたかったかが、一番分かるものになっています。これまでのとは全然違うものになっています。

 --4月2日には豊洲PIT(東京都江東区)でイベントも開催されます。どんなイベントになる?

 乙部さん ダンサーさんをお呼びして、曲に合わせて踊っていただき、キャストが歌います。見たことがないものになるはずです。ポールダンスを見たことがない人も多いかもしれませんが、ぜひ見ていただけるとうれしいです。

 江副監督 やっぱり生で見るポールダンスは迫力が全然違いますよね。ぜひ現場で体験していただきたいです。

 乙部さん ドラマのエピローグも初披露されます。ヒナノのプラネタリウムの発表会の日に開催されるので、劇中でプラネタリウムに来たお客さんのような気持ちも味わえるんじゃないかと思いますね。

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