君の花になる:“あす花”本田翼の教師時代のトラウマに見えたリアル 「花丸」付け合える社会に

連続ドラマ「君の花になる」第7話の一場面 (C)TBS
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連続ドラマ「君の花になる」第7話の一場面 (C)TBS

 女優の本田翼さん主演の連続ドラマ「君の花になる」(TBS系、火曜午後10時)。11月29日に放送された第7話では、7人組ボーイズグループ「8LOOM(ブルーム)」の寮母・仲町あす花(本田さん)の教師時代のトラウマが描かれた。その悲劇的な内容はドラマの重要な要素となっただけでなく、現実社会にも通じるものであり、視聴者の共感を呼んだ。

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 ◇「頑張りや優しさを全部、周りに使い込まれた」

 ドラマは、元高校教師がボーイズグループの寮母になる青春ラブコメディーで、あす花と8LOOMの共同生活を描く。8LOOMのメンバーは、高橋文哉さん、宮世琉弥さん、綱啓永さん、八村倫太郎さん、森愁斗さん、NOAさん、山下幸輝さんが演じる。

 第7話では、あす花の過去が描かれた。あす花は教師時代、周りに自然と生徒が集まる人気教師で、他の教師たちから雑務を押し付けられても、嫌な顔をせず引き受けていた。

 多忙で顔色が悪くなっていく中、ある日、留学をめぐって生徒ともめる親への説得を、先輩教師の豊高創(塚本高史さん)に禁じられ、「面倒になったら生徒を見捨てて逃げた」と、生徒たちに誤解される。さらに、あす花は生徒たちのテストの答案用紙を誤って捨ててしまい、豊高から「頑張りが足りていない」と言われ心を病み、学校で働けなくなっていた。

 あす花の過去に、SNSでは「あす花の過去つらすぎ」「いい人すぎたんだな」「やけにリアリティーある」といったコメントだけでなく、「あす花の気持ち分かる」「あす花の過去、私とそっくりで泣いてる」と、自身と重ね合わせる声もあった。

 中でも注目されたのは、あす花の元同僚の教師・池谷幸次郎(前田公輝さん)による「豊高先生だけが悪いわけじゃない。仲町先生は、頑張りや優しさを全部、周りに使い込まれちゃったんです」というせりふ。SNSでは「表現が秀逸」「言葉が重い」と反響を呼んだ。

 ◇“弾”高橋文哉「三角とか丸で何がダメなんだよ」

 作中で描かれた問題は、フィクションの世界にとどまらない。現在の日本では働き方の見直しが進んでいるものの、依然として長時間労働や、低賃金の「やりがい搾取」も目立つ。職場で精神を病む「第2のあす花」が生まれないようにするにはどうすればよいか。そのヒントは、お互いを認め合う仲の8LOOM、そして、あす花に憧れていた池谷と、あす花の姉・優里(木南晴夏さん)の2人の後悔にあるだろう。

 自ら企画した「寮母感謝デー」で、8LOOMは寮母として働くあす花に「大好き」と伝える。トラウマを克服できておらず、自分に「花丸」を付けられないことを悩むあす花に、弾は「花丸なんか、無理して付ける必要なくね? 三角とか丸で何がダメなんだよ」といい、さらに「あんたのこと利用したり、追い詰めようとするやつが100悪いに決まってんだろ。あんたは何も悪くねえから。あんたに花丸なんか付いてなくても、俺にとって、あんたはずっとずっと最高だから」と言ってのける。

 弾をはじめ、ありのままの自分を認めてくれる8LOOMに、何でも一人で背負い込むあす花は救われただろう。あす花がトラウマを「克服」した瞬間ともいえる。現実社会でも、自己肯定感が低かったり、職場の人間関係に悩んだりして「頑張りや優しさを使い込まれている」人がきっといるだろう。作中であす花と8LOOMがお互いを「最高」と認め合ったように、おのおののありのままの個性が「最高」であり、体力的、精神的に無理をしてまで自らに花丸を付けにいく必要はないはずだ。

 また、あす花の悲劇について、池谷は「仲町先生のこと、憧れとか尊敬とか、そういう言葉で包んじゃいけなかった」、優里は「私があの時、見て見ぬふりしてなかったら何か変わってたのかな」と語っている。あす花は平静を装っているものの、顔色などで自然にSOSを発していた。しかし、2人はあす花と正面から向き合わなかった。取り返しがつかなくなる前に、周囲の人間の負の変化を見逃さず、当人に寄り添い、心の声に耳を傾ける必要があるだろう。

 第7話のラストシーンでは、弾があす花の右手を取り、手のひらに指で花丸を書いてみせた。昨今、ストレスを一人で抱え込んだり、自分の存在価値をなかなか見いだせなかったりする人も多い。現実はドラマのようにうまくいかず、つらかったり悲しかったりすることも多いかもしれないが、他人に花丸を付けられる人が増え、お互いに認め合うことができる、精神的に豊かな社会になれば、「第2のあす花」が生まれることも減るだろう。

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