卒業タイムリミット:NHK“なじみ”の各話15分帯ドラマ 「夜ドラ」枠で目指したもの

NHK“夜ドラ”「卒業タイムリミット」キービジュアル (C)NHK
1 / 1
NHK“夜ドラ”「卒業タイムリミット」キービジュアル (C)NHK

 NHKが新設した、各話15分のドラマを月~木曜に放送する帯ドラマ枠「夜ドラ」。その第1弾として4月4日にスタートしたのが、大藪春彦賞を受賞した辻堂ゆめさんの同名小説(双葉社)が原作の青春ミステリー「卒業タイムリミット」だ。卒業式を間近に控えた高校生4人が、人気教師の誘拐・監禁事件の謎を追う姿を描いている。視聴者から「続きが気になる」「15分があっという間だった」という声も聞かれる同作。制作に込められた思いを制作統括の岡本幸江チーフプロデューサーに聞いた。

あなたにオススメ

 ◇夜にも「続きが気になる、明日も見てみようと思える帯ドラマ」を

 「卒業タイムリミット」は、卒業式を3日後に控えた高校で、人気の英語教師が誘拐される。主人公ら4人の生徒に、「誘拐の謎を解け。真相は君たちにしか分からない」と書かれた差出人不明の挑戦状が届く。タイムリミットは72時間。4人は少しずつ心を通わせながら、真相を追求していく……というストーリー。主演を特撮ドラマ「ウルトラマンタイガ」(テレビ東京系、2019年)などで知られる井上祐貴さんが務め、桜田ひよりさん、西山潤さん、紺野彩夏さんらが出演している。

 15分の中でテンポよく話は進み、気軽に視聴できる一方で、新たな謎(それは誘拐事件に関連するものだったり、それぞれの生徒の背景だったりもする)も提示され、「続きが見たくなる」要素もちりばめられている。

 そもそも「夜ドラ」とは何なのか? NHKで各話15分の帯ドラマと聞いて、これまで100作以上が放送されてきた連続テレビ小説、通称「朝ドラ」を多くの人が思い浮かべるだろうが、「夜ドラ」はより若年層向けで、岡本CPによると「若い世代の方たちがさまざまな配信プラットフォームで作品を楽しむ時代に、もう少し短い形で、ちょっとずつ気軽にドラマに触れてもらえたら、尺の短さも一つのアピールポイントになるのではないか」と生まれた帯ドラマ枠だという。

 夜にも、「続きが気になる、明日も見てみようと思える帯ドラマを、今の時代だからこそ開発したい、というのはありました」と話す岡本CPが、その第1作に「卒業タイムリミット」を選んだ理由は「若い世代の方たちに見ていただきたかったので、若い世代の方たちが活躍する作品を」と非常に明確だ。

 また、各話15分という尺は、過去に朝ドラ「ごちそうさん」(2013年度後期)などにも携わってきた岡本CPにとっても、体に染み付いた長さ、なじみのものでもある。「15分の中でどういった物語が展開でき、どの程度の要素も盛り込むことができるのか。視聴者に楽しんでもらうためのノウハウ、経験値の高さ」はある種の強み。その上で、「卒業タイムリミット」制作にあたっては、「ミステリー、サスペンスでハラハラドキドキはするのですが、それ一色にはしない。ところどころでふと笑えたり、コミカルであったり、そういう緩急みたいなものは大事にしていこうとは思って。軸はブラさずも、時に大脱線もいとわないという気持ちで作っています」と思いを明かした。

 ◇一見すると、今はやりの“考察系” それだけではない「魅力」とは…

 一見すると、今はやりの“考察系”にも思える「卒業タイムリミット」。“考察系”は視聴者それぞれが物語の真相について考えを張り巡らせ、予想し、SNS上で自由に発信することで、大きな盛り上がりをみせる、人気のドラマジャンルだ。岡本CPも「ミステリーやサスペンスがいつの時代も人気なのは、本当のこと、真相はなんだろうと、人間の本質的なところに訴えるドラマジャンルだからなのかなって。真相は何、真犯人は誰と、視聴者が真剣に悩んでくださって、ドラマを身近に感じてほしいなっていうのはありました」と作品選びにおいて、無視はできなかったと明かす。

 ただ、同作の魅力はそれだけではないといい、「犯人は誰なのか、真相にたどり着く上で、4人の若者たちが、どういった問題を抱えていて、どういう状況に置かれているのか、そこを解決しないことには謎は解明できない。原作にもある大切な要素なのですが、そういった切実な青春ドラマでもあると思っています」と説明する。

 「犯人を追い詰める過程で、生きる上で、誰かを傷つけたり、傷つけられたり、行く手を阻まれたりする状況が見えてきて、でもどんな非力であっても道を切り開いて生きていく。若い世代の方たちにはそのような力があると信じているし、幸せな将来をつかみ取ってほしいという、そんな『応援歌』のようになれば」といった思いも作品には込められているという。

 放送は全6週を予定しており、ちょうど折り返し地点に到着した。今後の見どころについては、「それぞれが誰にも知られたくなくて隠してきた傷があらわになり、仲間同士で本気でぶつかり合うのは、青春ドラマとしてとても見応えがあると思います。特に5週目以降、本当の意味での謎が明らかになっていくのですが、一度に分かるのではなく、二転三転しながらたどり着く。それは(井上さん演じる)主人公の黒川君の謎に結びついていくので、この人が犯人だったはずが、違うの?って感じで、物語を追いかけながら、謎解きを大いに楽しんでもらえればと思っています」と視聴者に呼びかけていた。

テレビ 最新記事