神谷浩史:「クレヨンしんちゃん」ぶりぶりざえもん受け継ぎ4年 プレッシャーから「楽しみ」に “大切な役”語る

「映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」でぶりぶりざえもんの声優を務める神谷浩史さん
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「映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」でぶりぶりざえもんの声優を務める神谷浩史さん

 国民的人気アニメ「クレヨンしんちゃん」の28作目となる劇場版最新作「映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」(京極尚彦監督)が9月11日、公開される。同作は、人気キャラクターのぶりぶりざえもんが活躍することが公開前から話題になっている。2000年に亡くなった塩沢兼人さんから引き継ぎ、ぶりぶりざえもんの声優を務めるのが神谷浩史さんで、新作でもぶりぶりざえもんを熱演。ぶりぶりざえもんを引き継ぎ約4年、自身にとって「今までの自分のキャリア、人とのつながりでたどり着いた大切な役」になっているという。神谷さんに、ぶりぶりざえもんへの思いを聞いた。

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 ◇キャリア、人とのつながりでたどり着いた大切な役

 神谷さんは、2016年からぶりぶりざえもんを演じている。劇場版でぶりぶりざえもんを演じるのは今回が初めてということもあり、「ついに出させていただけるという感慨が大きかった」という。

 「いつか劇場版でも声をかけていただけるのかな?と期待していました。だから、ついに!という感慨が大きかったんです。ビジュアルにも結構大きく描いてあって、メインなの!?と驚きました。ぶりぶりざえもんは、基本的にしんちゃんとしか絡まないキャラクターです。ラクガキから生まれたキャラクターということもあり、普段は現実世界にはあまり出てきません。今回の劇場版は、意味のある形で現実世界に登場して、しんちゃん以外のキャラクターとも遭遇します。今までにない展開でびっくりしました」

 ぶりぶりざえもんは、声優を務めていた塩沢さんが2000年に亡くなって以降、せりふなしでの登場はあったが、2016年に神谷さんが声優を引き継ぐまでは、約16年にわたってしゃべらなかった。神谷さんは大役を引き継いだ当時を「プレッシャーがすごかった」と振り返る。

 「最初は楽しくなかったですよ。プレッシャーがすごかったので。16年間しゃべっていなかったキャラクターが急にしゃべりだす。大先輩の塩沢兼人さんが、担っていた役を任せていただけるのは、ありがたいけど、プレッシャーがありました。ただ、今の『しんちゃん』を見ている子供にとって、このぶりぶりざえもんが、ぶりぶりざえもんになりますし、僕が悩んでも仕方がない。ムトウユージ監督に『好きにやっていいよ』と背中を押していただいた。今となっては、プレッシャーはもちろんあるけど、楽しみの方が強いです。大人が子供に向けて真剣にアニメを作ることは、エネルギーがとても必要だけど、楽しいんですね。どうやったら楽しんでもらえるだろう?と考えています。最初は頭でっかちになって、兼人さんが……と考えていましたが、今の子供に向けて楽しくアプローチしよう!と考えるようになりました」

 ぶりぶりざえもんは、神谷さんが「いいところがない。基本は嫌なヤツ。せこいし、長いものに巻かれるし、お金やお姉さんが好き」と説明するように、どうしようもないところもある。ブタではあるがある意味“人間らしさ”もあって、どこか憎めない。いわゆる“イケボ”とのギャップが魅力的だ。

 「中身は格好いいハンサムな貴族出身の品のいいキャラ。でも、見た目はブタ。裸でタイツ、千歳飴を携えている。そのギャップですね。なんでこういう役作りになったのか分からないんです。兼人さんに聞いてみたい。兼人さんが演じているのを見ているから、オーディションでも踏襲する形でアプローチしたんです」

 ぶりぶりざえもんを演じるにあたりヒントになったキャラクターがいる。それは、神谷さんがアニメ「よんでますよ、アザゼルさん。」で演じたベルゼブブ優一だ。

 「ベルゼブブは、オーディションでは変な感じのキャラクターとして演じたんですけど、本番で『もっと格好よくやってください』と言われたことがあったんです。上級な悪魔、貴族的な要素を出した方がいいということだったんです。しばらくたって、(同作を手がけた)水島努監督に『僕にとってベルゼブブは、ぶりぶりざえもんなんです』というお話をしました。見た目とは全く違う芝居の面白さなんですね。その後、ぶりぶりざえもんを演じることになり、そういうつながりなんだな……と。ムトウ監督が手がけた『コレクター・ユイ』に出演させていただいたことがあったり、ぶりぶりざえもんは、今までの自分のキャリア、人とのつながりでたどり着いた大切な役なんです」

 「クレヨンしんちゃん」は子供向けアニメだ。子供向けということで、演技のアプローチが変わるのだろうか? 

 「基本的には変わりません。ただ、最近、『がんばれいわ!!ロボコン ウララ~!恋する汁なしタンタンメン!!』を見て、これは!と思ったんです。鈴村健一と斎藤千和から『子供は、とにかく全力のアプローチを面白いと感じる』という話を聞いたんです。目から鱗でした。ぶりぶりざえもんも楽しくやろう!とアプローチしています。計算や理屈よりも一生懸命アプローチした方が刺さるんですよね」

 ◇ぶりぶりざえもんはヒーローなんだ!

 ぶりぶりざえもんについて語る神谷さんはうれしそうにも見え、「コメディーがすごく好き。楽しいんです」と笑顔で話す。今回の劇場版のアフレコについても「プレッシャーはどんな作品、現場でもいつもあります。でも、楽しかったですよ」とうれしそうに語る。

 「二日に分けて収録させていただきました。以前も『クレヨンしんちゃん』の劇場版に参加させていただいたことがあったのですが、その時は二日のうち一日の収録だったんです。今回は二日間、参加させていただき、初日が終わって『また明日!』と帰るのがすごくうれしかった。『明日もこのスタジオに来られるんだ!』とスタジオを後にしたことをすごく覚えています」

 劇場版は、地上のラクガキをエネルギーに浮かぶ王国ラクガキングダムが登場。地上でのラクガキが減り、崩壊の危機に直面していた。王国の防衛大臣は、命運を懸けて無理やり人間にラクガキをさせるウキウキカキカキ作戦を決行。地上が大混乱の中、ミラクルクレヨンを授けられ勇者となったしんのすけが、世界を救うために自ら描いたラクガキたちと力を合わせて戦う。神谷さんは劇場版を「ものすごく面白い!」と絶賛する。

 「台本を読んだ時点から面白くて、アフレコも面白かった。すごくいいな!泣いちゃうな!って。完成した映像を見ても、やっぱり面白いんですよ。みんなが分かるお話なんですね。最初から最後までずっと面白いんです。王道を真っ正面から捉えている。みんなが見たいものを見せてくれる。いい意味で期待を裏切ったり、意外性もあったりするのですが。カオスすぎるシーンもあったり」

 ぶりぶりざえもんの活躍も気になるところで「ぶりぶりざえもんも一カ所だけいいところがあります。そのシーンが好きです。劇場でご確認ください。ぶりぶりざえもんはヒーローなんだ!となるはず。そこ以外はクズを絵で描いたようなヤツですが(笑い)」と語る。

 神谷さんが「楽しく」「一生懸命アプローチ」したぶりぶりざえもんが躍動する姿をぜひ見てほしい。笑顔になったり、熱い気持ちになったりするはずだ。

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