ディズニー&ピクサーの最新劇場版アニメーション「2分の1の魔法」(ダン・スキャンロン監督、8月21日公開)の日本語版で、主人公のイアンとその兄バーリーの声を担当している俳優の志尊淳さんと城田優さん。プライベートでも付き合いがあり、互いに「優君」「淳ちゃん」と呼び合うほど仲のいい2人に、今作で声優を務めた感想や“共演”による互いへの印象の変化、さらに10年後の夢について聞いた。
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映画は、“魔法が消えかけた”世界に暮らす高校生のイアンとその兄バーリーが、亡き父をよみがえらせる魔法に挑戦したものの途中で失敗し、“半分”だけの姿で復活してしまった父を完全によみがえらせるための魔法を探す旅に出る冒険譚(たん)だ。
イアン役に決まったときは、「もう夢のようで、実感が湧かないくらいうれしかったです」と興奮気味に語る志尊さん。最初は「自分の声がイアンのイメージとして(観客に)届くことをプレッシャーに感じることの方が大きいと思った」というが、いざ作品を見てその素晴らしさに魅了され、だからこそ「誠心誠意、すべての力を出し尽くしたい」と思ったという。
ディズニー&ピクサーの最新作をリアルタイムで見るたびに、「感動して、ときめいて、映画館で涙を流すというのがルーティン(習慣)だった」という城田さんも、「2020年の今だからこそ、ポジティブに行こうぜという強いメッセージやエネルギーを持った作品に関われることはすごく幸せですし、淳ちゃんと兄弟役ができるということは本当に最高です!」と喜びを表す。
志尊さんも城田さんも、実写版の吹き替え声優は経験済みだ。ただ、実写版の吹き替えの場合は、志尊さんいわく、「自分で何かを表現するというより、できるだけ実写で演じている俳優さんと同じものを日本語でも届ける」、いわゆる「コピーすることに徹した」という、アニメーションの場合は、「自分でキャラクターを作り、それを表現できる、少し“余白”がある」のだという。
もちろん、唇の動きを合わせる難しさはあった。しかし「それ以上に、自分で(キャラクターに)息を吹き込むことに徹底できたのは、新鮮だし、面白かったです」と志尊さんは振り返る。城田さんも、「誰かが演じた人間じゃないからこそ、キャラクターのニュアンスを付けられることが楽しみでした」と述懐する。
5年前に一緒に仕事をした際に意気投合し、以来、「優君」「淳ちゃん」と呼び合うほど仲がいい2人。「関係性が出来上がっている」だけに、今回の共演によって、「第一声から素晴らしかったということはあるけど、志尊淳に対する見方は何も変わっていません」と話す城田さん。
一方、城田さんに対して「今までも、もちろん先輩として尊敬していましたが、プラスアルファで乗っかるものは、僕はありました」と断言したのは志尊さんだ。完成した今作を見たときは、「やっぱり素晴らしいと思ったし、優君がバーリー役でよかったと思いました。もっとこの人とどんどん楽しいことをしていきたい、これからも尊敬していたいという思いを改めて認識できました」と称賛する。その言葉を聞いて城田さんは「今のはいい話です(笑い)」としきりに照れていた。
写真撮影の際には、等身大のイアンとバーリーのフィギュアの前で低い姿勢を保ち、「なかなかこれ、キツイかも(笑い)」(志尊さん)、「15秒くらいが限度です(笑い)」(城田さん)と漏らしつつも絶妙なポージングを見せてくれた志尊さんと城田さん。インタビュー中も気の置けない関係が伝わるやりとりがしばしば展開した。それが如実に表れたのが、イアンが「父親とやりたいことリスト」を作ることにちなんで、志尊さんと城田さんに、「10年後までにやりたいことリスト作るなら何を書くか」と聞いたときだ。
このインタビューは志尊さんの25歳の誕生日に近い日程で行われた。質問が終わるやいなや、「結婚!」と答えた志尊さん。1985年生まれの城田さんも、その反応には「(答えるのが)早かったね(笑い)」と驚きながら、「(10年後は今の)僕ぐらいだよ」と返すと、志尊さんは城田さんを見て「僕、(その年齢なら)結婚してるわ、ごめん」とちゃめっ気たっぷりのコメント。それに、12月生まれの城田さんが、「僕、まだ34歳だけどね」と応じると、志尊さんは「じゃあ電撃婚だね、優君は」と35歳での結婚を勧め、それに城田さんも「そうだね。僕は電撃婚しか残ってないね」と同意しつつ、「淳ちゃんの10年後、あとは? 結婚だけでなく子供も含まれるでしょ」と促した。
すると志尊さんは、「もちろんもちろん。僕は20歳くらいのときから、結婚して子供が欲しいとずっと思い続けていて、(子供は)3人で、上から男女男。それも(城田さんと)一緒なんです」と告白。それを受けて城田さんが「僕は、30歳までに結婚すると決めていたんだけど、ご縁がなくて34歳になってしまって、ちょっとどうしたものかと思っているんですけど(笑い)、僕もTo Do List(やりたいことリスト)にあるのは間違いなく結婚で、結婚イコール子供を作るということです」と明かす。
そして、「夢は、子供ができたら、淳ちゃんの子供と遊ばせて、彼らを親友同士にすること。パパの悪口を言い合ってもらってもいいし、でも、つらいときに支え合ってもらったり、例えば僕が先に死んじゃったりしても、淳ちゃんにお父さん代わりをしてもらいたいと思う」と語ると、志尊さんは「あ、いい! それ最高じゃん! 感覚としてはおいっ子、めいっ子だよね。(子ども同士は)本当に兄弟姉妹みたいな」と満面の笑みで応じていた。
「作品を見て泣くことはあまりない」という志尊さんでさえ「ぼろ泣き」したという今作は、1歳のころに父を亡くしたスキャンロン監督自身の実体験から生まれた。志尊さんは「僕の勝手な解釈ですけど」と断った上で、「何をするにも自信のなかったイアンが、旅を進める中でself-compassion(セルフコンパッション)、つまり自己肯定力をつけていくのですが、それは素晴らしいことだと思います。自分を認めるからこそ、失敗したときに自分で責任を取れるし、自分ができたときには、その喜びを仲間と分かち合える。その達成感があるとないとでは、その先、広がっていくものが変わっていくと思うんです」と力を込める。そして、自身でも今作を見て「自分を受け入れていいんだという自己肯定力につながった」ことから、「10代の方々にもつながるといいなという希望があります」とメッセージを送る。
一方の城田さんは「大画面で見たら間違いなく感動する映像の中に、監督の実体験を基に作られているという点でリアリティーがあって、ありえないと思われている魔法をしっかりと感じられる作品です。何かに挑戦することや決断することに対して、この映画がちょっとでも背中を押してくれて、自分が大切なものを大切だと思えるような、身近なところに大切なものはあるのだと感じられるようになる作品だと思います」とアピール。
その上で、「自分にとってのイアンは誰なのか。自分にとってのバーリーは誰なのか。1人では何もできないけど、2人になるとどんなことでも可能だと感じられるような、この兄弟のような関係性の人を見つけてほしいと思います」と呼びかけ、「僕にとって淳君は、まさにイアン。生きていく上で、お金とか権力とか地位とかではなく、愛とか情とか家族とか夢とか、そういう一番大事な核の部分を見られる映画だと思います」と太鼓判を押した。
(取材・文・撮影/りんたいこ)
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