女優の広瀬すずさんが主演するNHKの連続テレビ小説(朝ドラ)「なつぞら」。9月2~7日に放送された第23週「なつよ、天陽くんにさよならを」では、俳優の吉沢亮さんが演じてきた人気キャラクター・山田天陽(てんよう)の最期を巡る物語として、大いに盛り上がりを見せた。劇中で天陽が亡くなったとされるのが夏の終わり。病院を抜け出し、最後の力を振り絞って一枚の馬の絵を描き終えた後のことだった。そんな“天陽くん”のモチーフとなった夭折(ようせつ)の画家・神田日勝が、ここに来て再び注目を集めている。
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現在、神田日勝記念美術館が建っている北海道・鹿追の地で、戦後、開拓農民として生きながら、独自の画業を築いた神田日勝。生前「農民である。画家である」と明確に語っていた彼の作品は、ベニヤ板にペインティングナイフを用いて描かれているのが特徴だ。
一方、題材や色味、筆遣いは時期によって大きく変貌。家族同然だった「馬」、そして「牛」をモチーフにしたもの以外に、社会事象を投影した作品もあり、また「黒や茶を基調としたシックな色合い」というのが世間一般に知られている神田日勝のイメージだが、赤や黄、青、緑などの原色を多用した作品も残されている。
「なつぞら」には、馬喰にだまされて買わされた老馬を描いた「痩馬」のエピソードや、「死馬」や「室内風景」といった神田日勝作品を彷彿(ほうふつ)とさせる絵が登場し、ファンの間では話題となっていた。また、ドラマ放送開始後の記念美術館来場者は前年の3~4倍に増えているという。
1970年、「馬(絶筆・未完)」を残し、32歳8カ月の短い生涯を閉じた神田日勝。命日は8月25日で、まさに夏の終わり。記念美術館では毎年8月25日に神田日勝をしのぶファンの集い「馬耕忌」が開かれ、今年は「なつぞら」の天陽役・吉沢さんと、ドラマの脚本を手掛けた大森寿美男さんによるトークショーが開かれたのも、記憶に新しいところ。
そんな神田日勝は来年、没後50年を迎える。この節目の年に合わせて、神田日勝記念美術館のほか、東京ステーションギャラリー(東京都千代田区)、北海道立近代美術館(札幌市中央区)の三つの会場で記念巡回展が開催される。期間は東京ステーションギャラリーが4月18日~6月28日、神田日勝記念美術館が7月11日~9月6日、北海道立近代美術館が9月19日~11月8日。劇中にも登場した“天陽くんの絵”の元となった作品も展示される予定で、じかに目にすることができる貴重な機会になりそうだ。
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