東映特撮:仮面ライダー、スーパー戦隊の伝統、進化 令和は「アベンジャーズ」のように世界へ

「劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer」を手がけた田崎竜太監督(左)と「騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!」を手がけた上堀内佳寿也監督
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「劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer」を手がけた田崎竜太監督(左)と「騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!」を手がけた上堀内佳寿也監督

 特撮ドラマ「仮面ライダージオウ」の「劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer」(田崎竜太監督)、「騎士竜戦隊リュウソウジャー」の「騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!」(上堀内佳寿也監督)が7月26日、公開される。「仮面ライダージオウ」は平成仮面ライダーシリーズの最後の作品、「騎士竜戦隊リュウソウジャー」は平成最後で令和初の「スーパー戦隊」シリーズだ。田崎監督は「仮面ライダーアギト」など数々の平成仮面ライダーだけでなく、「星獣戦隊ギンガマン」などのスーパー戦隊も手がけ、東映特撮の歴史を語る上で欠かせない名監督。上堀内監督は「劇場版 仮面ライダービルド Be The One」などを手がけ、気鋭のクリエーターとして注目されている。昭和、平成と東映特撮に関わり続けてきた田崎監督、令和を背負う上堀内監督に、東映特撮の伝統、進化、これからについて聞いた。

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 ◇子供向けから大人も楽しめるものに

 平成仮面ライダーは大人のファンも多い。もちろん、それ以前も大人の特撮ファンも存在したが、制作サイドが子供だけでなく、大人も楽しめるようにしようと意識するようになったことが、昭和と平成の大きな違いだという。昭和を知る田崎監督は分析する。

 「助監督1年目は昭和でした。昭和の頃、僕は下っ端でした。当時の特撮は、100%子供向けのものとして作っていました。大人の特撮好きはマジョリティーではなかったし、そういう人に向けた作品ではなかったんです。僕らがリアル志向の大人向けのアイデアを出すこともありましたが……。平成仮面ライダーから、子供に特化したものではなく、子供も大人も楽しめるものにしようとした。少子化の影響もあるでしょうし、先細り感もあったのでしょう。大人の特撮ファンが増えたり、初代仮面ライダーのファンが大人になり、子供と楽しむ、つまり二世代になったことも大きいです」

 技術的な進化もあった。1999~2000年放送の「燃えろ!!ロボコン」はフィルムで撮影されていたが、平成仮面ライダー第1作で2000~01年に放送された「仮面ライダークウガ」ではビデオが導入された。「ロボコン」までは音声はアフレコだったが、「クウガ」からは映像と音声を一緒に収録するシンクロになるなど撮影方法も変わった。また、平成はCG技術の発達が目立ち始めた時代でもある。

 撮影方法が変わったものの、田崎監督は「基礎はフィルム。その精神は受け継がれている。撮影のノウハウの核は変わらなかったりするかもしれません」と話すように、受け継がれている伝統があるようだ。

 ◇藤岡弘、の時代から続く若手俳優の登竜門としての役割

 技術だけが受け継がれているわけではない。田崎監督は「藤岡弘、さんの時代から若い俳優の登竜門であることは間違いありません。俳優たちが、映像の芝居、現場を学んでいく風土が変わっていない。厳しいんですよ」と語る。オダギリジョーさん、佐藤健さん、松坂桃李さん、菅田将暉さん……と平成特撮をきっかけにブレークした俳優は枚挙にいとまがない。彼らもまた昭和から続く厳しい現場を経験した。

 上堀内監督は、田崎監督の言葉を受け「先輩から引き継がれているものを見て、僕らも育ってこれた。僕はまだ監督としてのあり方を模索をしている状態ですが、この先も続けていくために、受け継がないといけない」と話すように、伝統が新たな才能を育ててきた歴史がある。

 ◇令和の東映特撮は「アベンジャーズ」に

 東映特撮は昭和、平成と時代を超えて愛され続けてきた。田崎監督はその理由を「継続は力なりでしょうか」と話す。

 「少し苦しい時代もありましたが、途切れずにやってきた。一つの作品が一年間続くというのは、ほかには大河ドラマくらいしかない。世界的に見ても珍しいもの。1970年代以降、各社から特撮が生まれましたが、継続できなかった。平成仮面ライダーも20作品という歴史を重ね、上堀内監督のような新しい才能も出てきた」

 上堀内監督も受け継がれてきた「途切れないバトン」を意識しているといい、バトンをつなぐ責任感も感じているという。

 令和の時代になり、東映特撮はどんな進化を遂げるのだろうか……。田崎監督は「上堀内監督のような若手が今後、米国に渡り、『アベンジャーズ』のような作品を撮っていく。令和は日本から飛び出していくこともあるのかな?」と新世代に期待を寄せる。

 上堀内監督も「僕も同じことを思っています。『アベンジャーズ』は一つのいい形。日本の特撮もそういうことができる力があるし、その価値がある。大人しか楽しめない作品は、子供は楽しめない。特撮は全世代が楽しめる」と世界に目を向ける。

 「仮面ライダージオウ」「騎士竜戦隊リュウソウジャー」の映画版もまた令和の東映特撮の始まりを告げる大きな意味のある作品だ。上堀内監督は「リュウソウジャーの起源をたどる話にもなっています。撮影が過酷でしたが、キャストがみんな付いてきてくれました。映画だ!という映像もたくさんあります」、田崎監督は「平成を締めくくる映画にしようとしました。平成仮面ライダーとは何だったか?を総括する作品になる」と語る。東映特撮の新たな挑戦が注目される。

 ※注:田崎竜太監督の「崎」は「立つ崎」

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