透明なゆりかご:視聴者の心をとらえた“二つの光” 主人公の独白や窓辺のシーンに込められた思い…

清原果耶さん主演のNHKの連続ドラマ「透明なゆりかご」 (C)NHK
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清原果耶さん主演のNHKの連続ドラマ「透明なゆりかご」 (C)NHK

 女優の清原果耶さんが主演を務めるNHKの連続ドラマ「透明なゆりかご」(総合、金曜午後10時ほか)。原作は20~30代の女性を中心に共感を呼んでいる、沖田×華(おきた・ばっか)さんの同名マンガで、「真実の産婦人科医院物語」といわれている。人工妊娠中絶(アウス)をはじめ、妊娠や出産の“陰の部分”を正面から描きながらも、視聴者からは「泣ける」「考えさせられる」のほかに「心が洗われる」「励まされる」といった声が上がるなど、放送開始前に制作統括の須崎岳さんが語っていた「こんなつらいことは知りたくない、見たくないと敬遠されるのではないか」という考えは、杞憂(きゆう)に終わろうとしている。なぜドラマは、視聴者の心をとらえたのか。その裏には制作陣による“二つの光”へのこだわりがあった……。

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 ◇祈りのような思いが込められた独白が“希望という名の光”に

 「透明なゆりかご」は、コミックスの累計発行部数が325万部を突破している人気マンガ。ドラマでも幸せな出産だけでなく、中絶や母体死といった産婦人科の陰の部分に向き合いながら、時に明るく、時に切なく、主人公たちの命への祈りにも似た思いを描いている。

 アウス以外にも、10代の妊娠や周囲に理解を得られない出産、母体危機から「死」に至るまで、当事者である妊婦はもちろん、その家族、医師や看護師たちはさまざまな状況に直面する。産婦人科が、命が生まれる場所であると同時に、「命が消えていく場所」でもあることを改めて教えてくれる作品ではあるが、決して“重いだけ”のドラマにはなっていない。

 そこでキーになっているのが“二つの光”だ。一つは、視聴者に「光を感じてもらいたい」という制作陣の強い思い。劇中では主人公の看護師見習い・青田アオイ(17)が、「本当はこうだったのではなかろうか」と想像するシーンが、各エピソードに一度は必ず登場するが、アオイの「もしかしたら」や「せめて私はそう信じたい」という祈りのような思いが込められた独白こそが、視聴者にとっても“希望という名の光”になっているといっても過言ではない。

 ◇「柔らかな自然光」による演出 象徴的なアオイの窓辺のシーン…

 もう一つ、制作陣がこだわったのが「柔らかな自然光」による演出だ。スタジオ収録の場合でも、できる限り自然光に近い照明を作り出すなど、制作陣のこだわりは非常に強い。劇中にはアオイがたびたび窓辺に立つシーンが登場するが、差し込む光を含めて映像はどこか幻想的で、そこで語られる言葉と共に視聴者の心に深い感動と余韻を残す。

 その象徴とも呼べるのが、7月20日放送の第1回「命のかけら」終盤のあるシーン。アオイが、アウスによって母体から出された胎児を専用の透明なプラスチックケースに入れて、窓辺から外の景色を見せてあげる。

 そして、アオイは「ここは生まれる命と消える命が絶えず交差する場所。命には望まれて生まれてくるものと、人知れず消えていくものがある。輝く命と透明な命。私には、その重さはどちらも同じに思える」と語り、「ねえ、見える。あれが外の世界だよ。ごちゃごちゃしているけど。キレイでしょ」と呼びかけていた。「これは原作にもありますけど、あの場面でのアオイの忘れ去られていく命に対する心の込め方は、まさにこの物語のメッセージ」と須崎さんは明かしている。

 ドラマは全10回。すでに折り返し地点を過ぎ、24日放送の第6回「いつか望んだとき」では原点ともいえる「中絶」に立ち返ったが、ここでもアオイは窓辺に立ち、人知れず消えていく命に呼びかけていた。残り4回。町の小さな産婦人科医院を舞台にした命の物語が見せる“二つの光”に注目だ。

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