累計120万部を超える森見登美彦さんのベストセラー小説が原作の劇場版アニメ「夜は短し歩けよ乙女」が7日に公開される。森見さんの小説が原作のテレビアニメ「四畳半神話大系」(2010年放送)と同じ湯浅政明監督が手がけ、歌手で俳優の星野源さんが主演を務めることも話題の作品だ。「ピンポン THE ANIMATION」「マインド・ゲーム」などでも独自の映像を作り出してきた湯浅監督に、制作の裏側、出演を直接オファーしたという星野さんの起用理由について聞いた。
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アニメは、“黒髪の乙女”に思いを寄せる“先輩”が、京都のいたるところで彼女の姿を追い求め、珍事件の数々に巻き込まれる……というストーリー。上田誠さんがシリーズ構成を担当し、ロックバンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION」が主題歌を歌うなど「四畳半神話大系」のクリエーター陣が約6年ぶりに再集結した。星野さんが先輩、花澤香菜さんが黒髪の乙女を演じるほか、神谷浩史さん、お笑いトリオ「ロバート」の秋山竜次さんらが声優として出演する。
人気小説のアニメ化ということもあり、湯浅監督は「森見さんの代表作でファンも多い」とプレッシャーもあったようだが、「僕も単なるファンで、原作をリスペクトしている。多分、大丈夫」とも考えたようだ。原作を読む中で感じたことは「(小説の表紙のイラストを手がけた)中村(佑介)さんの絵のイメージもあるかもしれませんが、カラフルで可愛らしい印象。夜を練り歩いている中で、明るいイメージを出すことを考えました」という。
アニメでは、実在する京都の街並みを描きつつ、高利金貸しの李白、ある理由でパンツをはき替えないパンツ総番長など個性的なキャラクターが続々と登場し、ありえないようなことが起きる。幻想的にも見える映像表現について「原作の文章のイメージに合わせて、アニメでは空間の表現を広げてみたり、狭めたりしています。『ちびまる子ちゃん』のレイアウトを担当した時、大人の感覚では学校の教室は狭いが、子供は広く感じるということを意識したことがありました。アニメでは主観で風景などを描くことができます。酔っ払って歩いている人の主観などを意識しています」と語る。
同作では、キャラクターが酒を飲むと“ゴクリ”という音と共に喉が膨らむ……などアニメならではの表現も随所で見られる。湯浅監督は「『四畳半神話大系』の時は文章(語りや説明)を前面に出して、絵は控えめに……と考えていました。今回はアニメーションらしさを出したかった。文章の面白さをアニメで伝えるのは難しい。(原作と自身の)相性がいいんですかね?」と話す。
同作は、星野さんや花澤さん、秋山さんら豪華声優陣も話題になっている。湯浅監督は、主人公・先輩を演じる星野さんに手紙を送って、出演をオファーしたという。星野さんの起用理由について「先輩は『四畳半』の主人公の“私”よりももっと素朴で温かいイメージ。星野さんのパーソナリティー、雰囲気に合っている。星野さんはエキセントリックなことを言っても許されそうだし、みんなに応援してもらえる。親近感もあります」と説明する。
また、キャスティングについて「(花澤さんが演じる)黒髪の乙女はキリッとしていて芯の通った女の子。同じタイプの人ばかりにならないようにバランスを考えました。ミュージカルシーンもあるので、歌えることも前提でした」と明かす。
湯浅監督は「原作を一読して分からなかったけど、読み返す中で、つながっていることが分かる部分もありました。そこを読み取れるように、なるべく見て分かるようにしました。いろいろな撮り方ができるであろう作品です。のんびり、静かにもできたかもしれません。これが、僕のできるベストができたと思っています」と自信を見せる。5月19日にはオリジナルの長編劇場版アニメ「夜明け告げるルーのうた」の公開も控えており、今後の活躍にもますます注目が集まりそうだ。
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