ピエール瀧:「とと姉ちゃん」でも存在感 “NHK御用達俳優”の魅力は「柔軟性」

「とと姉ちゃん」で仕出し屋の主人・森田宗吉を演じるピエール瀧さん。“NHK御用達”の名優の風格が漂う
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「とと姉ちゃん」で仕出し屋の主人・森田宗吉を演じるピエール瀧さん。“NHK御用達”の名優の風格が漂う

 高畑充希さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「とと姉ちゃん」に、東京・深川の仕出し屋の主人役で出演するピエール瀧さんが、独特の存在感を放っている。瀧さんは、テクノユニット「電気グルーヴ」でミュージシャンとして活躍しながら、「おひさま」(2011年)や「あまちゃん」(13年)に続き3度目の朝ドラ出演で、「龍馬伝」(10年)、「軍師官兵衛」(14年)と大河ドラマでも重要な役どころを演じ、昨年は土曜ドラマ「64(ロクヨン)」に主演。“NHK御用達”となっている“俳優・ピエール瀧”の魅力とは……。

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 ◇「あまちゃん」は“静” 「とと姉ちゃん」では“動”

 「とと姉ちゃん」は、生活総合誌「暮しの手帖」の創業者・大橋鎮子(しずこ)と、花森安治らの軌跡をモチーフとしたドラマ。11歳で父を亡くしたことを境に家族の父代わりとなった小橋常子(高畑さん)が静岡から上京し、女性向けの雑誌を創刊。雑誌は、花山伊佐次(はなやま・いさじ)の助けを借りながら、高度経済成長期を生きる女性に支持されていく……というストーリー。宇多田ヒカルさんが主題歌「花束を君に」を手がけたことも話題になっている。

 瀧さん演じる森田宗吉は、常子たちが住み込むことになる東京・深川の仕出し屋「森田屋」の主人兼板前で、腕はいいが、怒りっぽく、江戸っ子気質。瀧さんはキャスト発表会見で宗吉について「単細胞な主人」と説明していた。森田屋の大女将(おかみ)で母・まつを秋野暢子さん、宗吉の妻・照代を平岩紙さん、娘・富江を元「AKB48」の川栄李奈さん、板前・長谷川哲典を浜野謙太さんが演じており、森田屋は個性派ぞろいだ。

 宗吉は、家族や従業員に対して厳しい態度で接することもあるが、家族思いな愛すべきキャラクター。職人として仕事に誇りを持ち、裏表がなく、いかにも“昭和の父親”というイメージだ。登場時は怒鳴り散らすシーンが多く、常子も「怖い」とつぶやいていたが、ストーリーが進むに連れ、娘の富江への愛情をにじませたり、坂口健太郎さん演じる帝大生・星野武蔵を「葉っぱの兄ちゃん」と呼んで可愛がったり、情の厚いところも見せている。

 「あまちゃん」では、宗吉とは対照的な寡黙な寿司屋の大将・梅頭を演じ、こちらも好評だった。同じ職人役とあって、放送前は“梅頭再び”などと期待する向きもあったが、梅頭は“静”、宗吉は“動”のイメージで異なる存在感を放っている。

 ◇“名脇役”としての地位を確立 ミュージシャンとしては…

 瀧さんは、“楽器が弾けないミュージシャン”を自称しており、「電気グルーヴ」の担当パートは“TAKI”となっている。ステージで着ぐるみを着て踊ったりする姿はファンにはおなじみだ。「電気グルーヴ」は日本のテクノシーンを代表するアーティストとして知られている一方で、90年代にラジオ番組「オールナイトニッポン」(ニッポン放送)で過激なギャグを交えたトークが人気を集めたほか、バラエティー番組にも出演。瀧さんは、90年代に子供向け番組「ポンキッキーズ」(フジテレビ系)に出演したころから、お茶の間での人気が急上昇した。

 2000年代からは俳優としての活動も増え、数々の映画、ドラマに出演。「軍師官兵衛」では、蜂須賀小六を演じ、小六の娘役の高畑さんとは親子として共演した。また、13年には映画「凶悪」で元暴力団組長の死刑囚須藤純次を演じ、第37回日本アカデミー賞の優秀助演男優賞、第68回毎日映画コンクール男優助演賞に輝いた。今年も映画「珍遊記」「エヴェレスト 神々の山嶺」「日本で一番悪い奴ら」など話題作で主要キャストを務め、独特の存在感で“名脇役”としての地位を確立している。

 瀧さんは以前、インタビューで俳優としての活躍について「『自分がミュージシャンだ!』と思っていると、こういう仕事はしていないと思う。『こうありたい!』と思うものがなかったから、バラエティー番組を含めていろいろな現場に呼んでいただけるのだと思います。感謝しています」と話していた。瀧さんは、ミュージシャンとして「こうありたい!」という気持ちが強くないこともあり、俳優としてイメージを気にせず柔軟に演じ分けることができるのかもしれない。「とと姉ちゃん」でも“名脇役”としての今後の活躍が注目される。

 「とと姉ちゃん」はNHK総合で月~土曜午前8時ほかで放送。

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