川西賢志郎:「対岸の家事」“礼子”江口のりこの夫役が話題に 「現代の男性を象徴しているような人物なのかも」

ドラマ「対岸の家事~これが、私の生きる道!~」に出演する川西賢志郎さん(C)TBS
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ドラマ「対岸の家事~これが、私の生きる道!~」に出演する川西賢志郎さん(C)TBS

 連続ドラマ「対岸の家事~これが、私の生きる道!~」(TBS系・火曜午後10時)に出演する川西賢志郎さん。仕事と育児の両立に悩む長野礼子(江口のりこさん)の夫、量平を演じている。イベント会社勤務で帰宅が深夜に及ぶことも多い量平は、礼子に家事も育児も任せっきり。そんな量平をどのように演じたのか、川西さんに聞いた。

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 原作は、朱野帰子さんの小説「対岸の家事」(講談社文庫)。詩穂(多部さん)が自分とは異なるさまざまな立場や、考え方を持つ「対岸にいる人たち」との交流を通し「家事」という終わりなき仕事を描く。

 --本作への出演が決まった時の心境を教えてください。

 最初にマネジャーからざっくりとしたストーリーやテーマを教えてもらいました。まさに今、日本でずっと議論されているけれど、なかなか進んでいない問題。例えば、女性が家事をして、男性が働きに出るという古い構造や体質。そういう社会のあり方や、今扱うべきテーマと向き合い、ポップに表現しようとしているいいドラマだなと思いました。もちろん、朱野帰子さんがそういった原作を生み出されたからこそ、というのが前提にありますが。作品に関わらせてもらえることがうれしかったです。

 --実際に台本を読んでみて、感じたことはありますか。

 ドラマには限られた尺という制約があるじゃないですか。その中で、家庭と仕事の両立、夫婦関係、子育ての苦しみ……いろんな立場の人にスポットを当てようとしているなと感じました。できる限り、多様な視点を漏らさないように描こうという姿勢が伝わってきましたね。

 --ご自身が演じた長野量平について、共感したところはありますか。

 共感というよりは、「こういう人が多いんだろうな」と思いました。量平は世の中にたくさんいるタイプの男性だと思うんです。家庭への思いはあっても仕事が忙しくて、なかなか時間が取れない。実際、残業が多い会社もまだ多いですしね。そういう意味では、量平って現代の男性を象徴しているような人物なのかもしれません。

 --演じる上で意識したことはありますか。

 これまであまり量平が登場するシーンは少なかったと思いますが、中盤からしっかりと物語に関わってきます。礼子さんの家庭での苦しみや葛藤の要因の一部でもあるので、家庭内と外側からとで見え方が変わってくる行動の“落差”は意識しましたし、撮影現場でもそういったリクエストはありました。その中で、視聴者にとってちょっと鼻につくような描写も必要で。その「鼻につかせ方」の頃合いが、後半の長野家の変化につながってくると思い、自分なりに工夫しました。

 --江口さんの印象を教えてください。

 以前から「本格派のすごい俳優さん」というイメージはありましたが、実際にご一緒してみても、やはりすごかったです。「こんなにも違う人を演じ分けられるんだ」というくらい、礼子という人物はピリピリと張りつめている表情や全体の空気感がありますよね。

 僕が感情をぶつけるシーンでなかなかうまくいかなかった時、「たしかに、その一言があれば演じやすくなるな」というセリフを、江口さんがさらっと足してくださったんです。そこに周囲への気遣いと、俳優さんとしての実力を垣間見させていただいた気がしました。

 --長野家には子どもが2人いますが、撮影を通して印象的だったことはありますか。

 子どもたちは本当にすごいなと思いました。カメラの前に立ち、役名で呼ばれた瞬間、何かスイッチが切り替わっている感じがするんです。実際、メイクさんも「今までぐずっていたのに、カメラが回って役名で呼ばれたら、ピタッと泣き止んだ」と言っていました。

 長野星夏ちゃん(吉玉帆花ちゃん)なんて、眠くなるシーンでベッドに寝かせたら自然に目をこすり出して。「えっ、これ本当に眠いの? 演技?」というぐらいタイミングが絶妙で、正直びっくりしました。長野篤正くん(寿昌磨くん)は、やたら「一発OKだった?」と気にしているんですよ(笑)。「OKを出すぞ!」という気持ちと同時にそれを楽しんでいる姿勢を僕たちも見習うべきですよね。

 --主演を務める多部さんの印象はいかがですか。

 第1話を見て「すごいな」と思いました。マンガ的な演出もある中で、ちゃんとラストではリアルで心に迫る演技をしていて。その振り幅を両方乗りこなしていて、伝えるべきものをちゃんと届ける。その切り替えがすごくて。「かわいい」という印象も残るし、しっかり芯もあるすてきな女優さんですよね。

 --第5話では村上家、長野家、中谷家の3家族が揃ってバーベキューへ行く場面も描かれるそうですね。

 これまで長野家での撮影が多かった僕からすると、普段接点のない別の家族と交流する感じがリアルなお父さんのようで、量平の心境とリンクする部分がありました。よりそれぞれ家庭の色を整理できるような視点で見ることができるシーンになっていると思います。

 --礼子と量平がぶつかるシーンもあるとか。

 そのシーンがあるおかげで、徐々に長野家にも変化が表れてきます。本気で1回ぶつかったからこそ、お互いを理解しようともできる。そのグラデーションは、このドラマにおいて大事なところだと感じました。

 --量平から「俺だって休みの日は(家事を)やってるよ?」という発言も。

 礼子さんから見たら「やってないでしょ?」となるだろうし、世の中の多くの人もそう思うでしょう。でも、量平側の視点では会社に泊まり込みで働いたり、出張も多くなかなか家に帰れない。そんな生活の中、ほんの少し捻出した時間で何か家事をやった時には「やっている」と感じる。それが、後になってから「あの時、本当にやっていたか?」と振り返ると……。自分のいる視点が変わると考えも変わってくるかもしれない。そういう多面的な見方が、このドラマの面白さですよね。

 --男性側からの共感もありそうです。

 僕の後ろには「もっと言ってくれ、量平!」と言っている男性陣がたくさんいらっしゃる気がします(笑)。でも、その何倍もの主婦の方々が「それぐらいで……」と思われるんでしょうね(笑)。実際、制作チームの会議でも女性が多い中、数少ない男性スタッフが「量平の気持ちを背負っています!」と、発言していたという話も聞きました。

 --視聴者にとっては、どの登場人物にも“自分ごと”として感じられる部分がある作品ですよね。

 もちろん性別や立場によって感情移入する人物は違うと思うんですけど、それぞれに「あるある」や「感じていたけれど言えなかった」という部分があるんじゃないかなと思います。

 このドラマって、誰か1人が悪いわけではない。礼子さんにも量平にも、そして会社や社会にも、それぞれの立場や事情がある。だから、ただ誰かを責めて終わるんじゃなくて、「じゃあ、どうしたらいいんだろう?」と考えるきっかけになればいいですよね。

 --本作では家事に悩む登場人物たちが描かれますが、川西さん自身が「家事で大変だな」と感じるのはどんなことですか。

 基本的な考えとして、家事って絶対にみんなが生きていく上で避けて通れないものじゃないですか。ご飯を食べなければ生きていけないし、掃除しないと生活できる環境ではなくなってしまう。もちろん個人差はあるけれど、必ずやらなければいけないこと。だから、そもそも「家事は大変なもの」という認識があります。

 その中で、特に大変だと思うのは「炊事」ですね。体を壊しかねないから「明日でいいか」ができないじゃないですか。それに誰かのために作るとなると、同じメニューばかりだと飽きられるし、食べてくれなかったりもする。そのためには献立を考えなきゃいけないし、何を買うかも考える必要がある。毎日スーパーへ行けるわけじゃないから、何日か先まで見越して買わなきゃいけなかったり。その上、家計のために「今日は何が安いかな」とかまで考え出すと、ただご飯を作るだけじゃなくて、そこにいろんなことが付随してくる。だから、個人的に思う一番は「炊事」かなと思います。

 --最後に見どころを教えてください。

 このドラマには、さまざまな登場人物が登場し、それぞれが自分の言い分を持っています。その中で、量平に自分を重ねる男性は多いだろうなと思います。ちゃんと“落としどころ”が描かれる作品なので、自分を登場人物の誰かに一度投影したなら、最後までその視点で見届けてほしいです。そして、優しく手を差し伸べてくれるような言葉がこの作品にはあるので、きっと救われる方もいるのではないでしょうか。子育てや仕事や家庭環境の変化で新しい出会いがあった時、イチから共通の話題を見つけることは難しいことがあると思います。このドラマが皆さんの会話の入口になったらいいなと感じます。

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