タイの人気BL(ボーイズラブ)ドラマに出演し、現在は日本で活動中の俳優、パース・ナクンさん。タイで俳優として人気を集める中、1年半前に日本の芸能界での成功を夢見て、日本移住という大きな決断を下した。ドラマやバラエティー、舞台などで活躍の幅を広げ、初の写真集「パース・ナクン1st写真集 Sunny」(KADOKAWA)も発売されるなど、順調にステップアップを続けるパースさんに、日本とタイの芸能界の違いや、今後の目標について話を聞いた。(前後編の後編)
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パースさんは1994年7月6日生まれ、オーストラリア出身の30歳。2020年にタイのBLドラマ「My Engineer~華麗なる工学部~」に出演し注目を集め、2022年には人気ドラマ「KinnPorsche The Series」でマフィアのボディーガード役を務め、その人気を確固たるものにした。2023年8月からは日本の芸能事務所「ホリプロ」に所属し、現在は日本のドラマやミュージカル、イベントのMCなどで幅広く活躍している。
これまで、オーストラリア、タイ、日本と3カ国での生活を経験してきたパースさん。幼少期に日本のアニメに興味を持ったことがきっかけで日本語の勉強を始め、今では流ちょうな日本語を話す。20歳でオーストラリアからタイに移住し、俳優として活動する中、現在の所属事務所からスカウトのDMが届いたことで、日本で活動することを決意したという。
日本での1年半を振り返り、「すごく早かったです。1年半でこんなにいろいろな活動ができると思わなかった」と目を輝かせる。
「まさか写真集を出せると思わなかったし、2.5次元のミュージカルに2作品も出演できるなんて考えもしませんでした。日本に来てからは活動の幅が広がって、イベントのMC、タイ語のフレーズブックの制作、アフレコなど新しい経験ばかりで、人間としても俳優としても本当に成長できたと思います。これは日本の芸能界の特別なところで、ドラマだけではなく、できることがたくさんある。これからも新しい挑戦ができることを楽しみにしています」
タイの芸能界では、俳優はドラマやイベント、CMへの出演が主な活動になるが、「日本では、自分の好きなこととお仕事が繋がることがある」とうれしそうに語る。
「タイにはそれほどバラエティー番組がないし、ほぼドラマの出演がメインになります。僕はアニメやマンガが大好きなオタクなのですが、日本では『こういう仕事に興味ありませんか?』と声をかけていただくことが結構あって。自分の趣味を仕事に生かせるチャンスがあるのが、めっちゃありがたいです。ポケモン好きが高じて、ピカチュウジェットの宣伝をやらせていただいたこともありました」
日本で活動するうえで、タイの芸能界と違いを感じたことはあるか尋ねると、「日本の芸能界はキャラが大事。 自分がどういうタレントなのかを表現することが大事だというのは面白いと思います」という答えが返ってきた。
「バラエティー番組で、芸歴の長い方が『昔はおバカキャラだった』と話していて、本当は頭が良くてトークも上手なのに、かつては完全にキャラを作っていたことに驚きました。あとは、日本の漫才文化、ボケとツッコミという役割が面白いですね。僕はNHKで(お笑いコンビ『ロッチ』の)コカドケンタロウさんとラジオをやっているのですが、大好きな『世界の果てまでイッテQ!』に出演している中岡創一さんとコンビだと知った時はビックリしました。一人でも活動している芸人さんが実はコンビだったとか、そういうことを勉強するのも楽しいです」
タイのお笑い芸人はコンビを組まず、一人で活動することが多いと説明したうえで、「お笑いのコンビはあまりないですが、BLドラマでカップル役を演じた俳優がペアで活動することは多いです」と明かす。パースさんも「My Engineer~華麗なる工学部~」で共演したタレイ・スグンディクンさんと2年ほどペアで活動したという。
「BLドラマが人気になったことで、新人俳優にたくさんのチャンスが開けたと思います。僕もペアで活動をしましたが、すごく仲が良かったから毎日楽しかったですし、今でも連絡を取り合いますし、本当にいいコンビでした。新型コロナの流行がなければ、もっと続けられたと思うので、もったいなかったですね」
タイと日本で俳優としてのキャリアを積んできたパースさんも、昨年30歳の節目を迎えた。30代の目標として「恋愛ドラマで主役をやってみたい」と意気込む。
「これまでは主役を務める俳優さんを見て『大変そうだな』と思っていました。ほぼ全てのシーンに出演するし、セリフの量も多いから、プレッシャーも違う。まだ怖い気持ちもありますが、経験を重ねてそろそろいけるかもしれないと感じたので(笑)、ぜひ挑戦してみたいですね」
プライベートでも挑戦したいことはたくさんあるといい、「車の免許もゲットしたいし、もっと上手に動画を撮って編集をして、YouTubeに良い感じの動画をアップしたいです。あとは、おしゃれになりたいです」と笑顔を見せる。
「今まではファッションにこだわりがなくて、服を選ぶことや組み合わせることにストレスを感じてしまうタイプでした。少しずつですが、おしゃれを楽しめるようになってきて、もっともっとレベルアップしたいと思うようになりました」
そう語るパースさんは、取材の前日、オーストラリアからやって来た友人と共に下北沢を訪れたという。
「いろんな古着屋さんをめぐっていたら、男性の店員さんに『めっちゃかっこいいですね』と言っていただけてうれしかったです。多分、営業トークじゃないと思う(笑)。だから、せっかくなのでちょっとおしゃれになりたくて。仕事をしているときの僕は自分に自信を持っているんですけど、それはスタイリングやヘアメークをプロの方がやってくれているから。最近は、プライベートでもちょっとだけ芸能人に見えるようになってきた気がするので、もっとあか抜けられるように頑張りたいです!」