氷川きよし×小室哲哉:「ゲゲゲの鬼太郎 私の愛した歴代ゲゲゲ」インタビュー(1) ED主題歌でタッグ 新たな表現を模索 情熱的に

「ゲゲゲの鬼太郎 私の愛した歴代ゲゲゲ」のエンディングテーマ「Party of Monsters」を手掛けた小室哲哉さん(左)と氷川きよし(KIINA.)さん
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「ゲゲゲの鬼太郎 私の愛した歴代ゲゲゲ」のエンディングテーマ「Party of Monsters」を手掛けた小室哲哉さん(左)と氷川きよし(KIINA.)さん

 故・水木しげるさんのマンガが原作のテレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」の第1~6期の中から鬼太郎ゆかりの著名人がセレクトしたエピソードを放送する「ゲゲゲの鬼太郎 私の愛した歴代ゲゲゲ」が、フジテレビほかで4月6日から毎週日曜午前9時に放送されている。同作のエンディング主題歌「Party of Monsters」は、小室哲哉さんが楽曲プロデュースし、氷川きよし(KIINA.)さんが歌うという豪華タッグを実現した。小室さんが「憧れの存在」という氷川さん、氷川さんに「可能性を感じていた」という小室さんに楽曲に懸ける思い、レコーディングの裏側を聞いた。

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 ◇「ばっちりなタイアップ」 マイケル・ジャクソン「スリラー」のように激しく

 ――氷川さんは、テレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」の第6期のオープニング主題歌「ゲゲゲの鬼太郎」、エンディング主題歌「見えんけれども おるんだよ」を担当し、今回傑作選のエンディング主題歌では小室さんとタッグを組むことになりました。

 氷川さん 憧れの小室哲哉さんの作品を歌わせていただけて、すごく感動していますし、すごくうれしいです。小室さんの作品は、自分の青春時代に生きる力をくださいました。小室さんの作品をずっと聴いて頑張ろうと思ってきたので、自分が歌い手として小室さんの曲を歌うことで、これからの人たちの力になったらいいなと思っています。そして、憧れの「ゲゲゲの鬼太郎」で、自分にとって3回目のテーマ曲に選んでいただいたので、この曲がたくさんの方に届くといいなと思っています。

 小室さん TM NETWORKのメンバーの木根(尚登)さんとKIINA.は、長いこと交流があったので、折々でKIINA.は洋楽も好きなんだよとか、いろいろ話を聞いていて、何かできないかな、とずっとおすすめはされていたんです。去年コンサートを見せていただいて、TMの「SEVEN DAYS WAR」や「ボヘミアン・ラプソディ」の日本語訳などいろいろやられていて、「幅広いな」「何でも歌えるんじゃない?」と可能性がいろいろあるんじゃないかと思っていました。僕自身、去年はアニメづいていて「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」とか「シティーハンター」とかアニメばかりやっていました。KIINA.もアニメの主題歌を以前からやっていると聞いていたので、組むのであれば、できればアニメのタイアップがいいですよね、という話をしていたら、かなりばっちりだなと思うタイアップをいただけました。

 ――楽曲はどのように制作されたのですか。

 小室さん 瞬間でパッと全部が浮かんだわけではなくて。去年の11月くらいにお話をいただいて、どうしようかなと1カ月くらいは考えていました。僕っぽいけど今っぽくもある、その真ん中くらいを狙えたら、KIINA.にとっても合うんじゃないかなと。あと、KIINA.が歌えるところと、今っぽいラップ的なものも混ぜられたらいいなと思って作りました。頭の中でマイケル・ジャクソンの「スリラー」みたいなものもイメージしていたので、KIINA.があんな感じで頑張ってくれたらいいなと。

 氷川さん MV(ミュージックビデオ)では思い切り振りもやっています。ちょっと激しめの振りなので、フルコーラスでやったら動悸がしました。でも、動悸がするくらいがちょうどいいなと。

 小室さん 振り付けもそうですけど、楽しめる題材なのでね。MVの舞台、セットも作りやすいんじゃないかなと。なんなら、このまま頑張ってもらって、今年のハロウィーンがピークになってくれたらいいなと思っています(笑)。

 ◇新曲で裏切りとチャレンジ 善悪とは?

 ――「Party of Monsters」は、昨年夏に1年8カ月ぶりに歌手活動を再開した氷川さんにとって、復帰後初の新曲となります。それが「ゲゲゲの鬼太郎」のエンディング主題歌となることをどう感じていますか。

 氷川さん 子供の時から見ていた「ゲゲゲの鬼太郎」の自分にとって3回目のテーマ曲でスタートできるというのは、すごく光栄なことですし、鬼太郎が背中を押してくださっているようでもあります。小室さんにお力を借りて、この曲でまた自分の歌の世界が広がったらいいなと思っています。世間の方は、去年の紅白歌合戦の「白雲の城」のイメージで止まっていて、新曲は演歌だろうなと思っていると思うのですが、そこをぱっと裏切って、今回この曲なので。裏切りも大事だし、これからもいろいろな曲を歌っていきたいので、いいスタートが切れそうでわくわくしています。

 ――ラップもあるダンスミュージック系の楽曲です。最初に聴いた時はどう感じましたか?

 氷川さん 今までにない感じの歌い方で、ラップ調の作品なので、かなり挑戦させてもらっている感覚があります。レコーディングでは、小室さんも優しく「少しずつ歌って」と言ってくださって、長時間お付き合いいただいたので、自分もお応えしたいと。そういうキャッチボールが、また自分のエネルギーになって、出来上がったものを聴いた時に「あ、すごく楽しいな」と思いました。やっぱりやってみないと分からないなと。「限界突破×サバイバー」(「ドラゴンボール超(スーパー)」OP)の時も「歌えない、無理」と言っていたのですが、それが逆によかったりするんだなと思って。自分の中のジンクスというか。だから挑戦することは、いくつになっても大事なんだなと。47歳だから「もう無理」と思っていたけど「大丈夫だ」と自信になりました。

 ――小室さんは、氷川さんの歌声を聴いていかがでしたか?

 小室さん 演歌の音符が長いのに慣れてらっしゃるので、音符が短い、具体的には16分音符が羅列する今回の楽曲は、KIINA.が何十年もかけて習得してきたプロの技が使えないところがかなりあった。急にお子ちゃまみたいになっちゃう時もあるなと。

 氷川さん なっていましたね。

 小室さん ただ、そこのギャップをどうしたらいいかなとは思って。KIINA.らしさは消さずに、新しい歌い方というのを最初は模索していました。いろいろなパターン、バージョンをやってみて、どれがハマるか?みたいな。KIINA.が歌えるような、ラップ調じゃないものも作ってみたんですけども、やはりこっちのほうが(ラップ調のほうが)インパクトがあるよねということで、こちらにさせてもらったんです。あと、歌詞の内容的に僕が皆さんに伝えたいことも、この曲調のほうが合っていたので。

 ――氷川さんは、歌う上で意識したことは?

 氷川さん 小室さんもおっしゃっていましたけど、音符が短いということで、ちょっと子供みたいになる時があるから、プロっぽく歌わないといけないなと思って。とにかくデモテープを四六時中聴いて、歌えるようになろうと。呪文のように、それこそお経のように唱えていました。それしかないと思って。小室さんからいただくデモテープがもう完璧なので、自分が歌って悪くしないようにと、どうやったらよくできるかな、ここに氷川きよし、KIINA.がいる意味がちゃんとあるかなといろいろ考えました。生意気ながら意見も言わせていただきながらやらせてもらって、すごく情熱的な気持ちになれました。だから、この作品に対して、ものすごい愛情がどんどん湧いてきて、大切な作品ですね。

 小室さん 元々パフォーマー、シンガーとしては堂々としたプロですから、そこを追求するのはいいことだなと思ったので、とことん追求すればいいんじゃないかなと、お付き合いしました。僕は僕で伝えたいことがあって、それをパフォーマーとして、KIINA.がこの先も伝えてくれると思うので。

 ――小室さんは「ゲゲゲの鬼太郎」のどの部分に注目して、今回の楽曲を作られたのでしょうか。

 小室さん アニメを見させてもらったのですが、鬼太郎を含む妖怪たちという感じで、鬼太郎はアンチヒーローというか。妖怪なのに妖怪を倒すというところで、自虐的なところもあるなとも思いました。水木しげる先生についても調べて、やはり戦争体験をされていて、無事お帰りになって好きなマンガを描けることになった。戦争体験をされたことで、善悪の基準が人とは違うものになった。それは、アーティストとしてはすごくいい意味で、ですけど、何をよしとすればいいか?ということをマンガに投影されていたのかなと。妖怪がいいのか、人間がいいのか、どっちが善悪かは時と状況によるんだよということを伝えたかったのかなとは思いました。「Party of Monsters」では、地球環境や温暖化のこと、政治のこと、戦争のことも全部含めて伝えている。それを妖怪に置き換えて、妖怪じゃない人のほうが悪いじゃん、ということも伝えているつもりです。

 インタビュー(2)へ続く。

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