ドラゴンボールDAIMA
第11話 デンセツ
12月23日(月)放送分
集英社のマンガ誌アプリ「少年ジャンプ+(プラス)」で連載中の龍幸伸さんの人気マンガが原作のテレビアニメ「ダンダダン」。10月にMBS・TBS系の深夜アニメ枠「スーパーアニメイズムTURBO」で放送をスタートし、迫力のバトルシーン、サイケデリックな色遣い、息もつかせぬスピーディー展開など斬新な映像が話題になっている。アニメを手掛けるのはサイエンスSARU所属の山代風我監督。「犬王」「平家物語」「映像研には手を出すな!」などに参加し、「ダンダダン」で初めて監督を務める。山代監督に“色”のこだわりを聞いた。
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「ダンダダン」は、宇宙人を信じない少女・モモ(綾瀬桃)と、幽霊を信じないオカルトマニアの少年・オカルン(高倉健)が圧倒的怪奇に出会う……というストーリー。心霊スポットのトンネルでターボババアに遭遇したオカルンは、呪いによる力で変身できる体になり、霊媒師の家系のモモは、セルポ星人に襲われたことをきっかけに秘められた超能力が目覚める。二人は、特殊な力を発動させ、次々と現れる怪異に立ち向かうことになる。
アニメ「ダンダダン」は、ターボババアの登場シーンで画面が真っ赤に染まったり、セルポ星人の登場シーンは青が基調とされていたりと、鮮やかな色遣いも魅力の一つとなっている。山代監督によると、それぞれの妖怪、宇宙人にテーマカラーを決めているという。
「画面を単色で染め上げるといったアイデアは、非日常に踏み入れた感覚を視覚的に表現するためのギミックの一つでもありますが、宇宙人と妖怪の特性を端的に表現するためのものでもあります。彼らはきっと彼らなりの文化や生活を持っているはずで、個々の違いをはっきりと分けたほうがいいと思い、別々の固有色を持たせようと思いました。イレギュラーもありますが、土着的な妖怪は温かい感じで暖色系、宇宙人は冷たい寒色系をベースに種族や成り立ちの違いも表現できるといいなと思いそうしています」
第1話では、その色設定の前振りとして、ターボババアが現れるトンネルの月の色は黄色、セルポ星人が現れる病院の月は青白くしたという。後になって、病院の月はセルポ星人のUFOが月に化けていたことが分かる。
「オカルンとモモの向かう場所、出会う種族の差を色の印象で表現したかったので、病院の月の色を変えました。同じ夜の月の色が大きく変わるのはおかしいですが、UFOが月に化けていたことにすれば整合性もとれるし、作中に必要な違和感にも貢献できます。セルポ星人は人間に化けていたので、乗り物も何かに化けていてもおかしくない、と違和感なく考えることができるので突飛な描写にもならずに世界観を深めることにすら貢献させることができる。ちなみにモモがセルポ星人と遭遇するシーンで廊下に差し込む月光がだんだん消えていく表現がありますが、物理的に考えると違和感だらけのおかしな描写です。しかし、後のシーンでこの月がUFOの擬態であることの開示があるので、そのシーンに必要な違和感を演出しながらも、整合性は取れていて成立できていたりします。全てが何かのフックになっていて、いろいろなところにフックが張り巡らされている。そんな映像を目指したいと思っています」
そのため、ターボババアのカラーが“赤”であることにも意味がある。
「1話は掴みとしてしっかり機能しないといけないこともあり、ターボババアとセルポ星人の固有色を分かりやすい反対の色にしようとしました。暖色と寒色の代表的な色で、印象として分かりやすいのは『赤』と『青』だな、と。また、ウルトラ怪獣・宇宙人のような敵と戦うオカルンは、ウルトラマンでいてほしいと考えて、変身オカルンを赤色にしました。元はターボババアの力なのでターボババアの固有色が赤色になりました。原作もオカルンに赤の差し色が入っていますが、より立つといいなと」
原作者の龍さんが特撮好きということもあり、アニメにも特撮の要素がちりばめられているが、“色”にもそれが反映されている。
「フラットウッズモンスターの固有色は黒に設定しています。毒ガスとも引っかかっていますが、初代『ウルトラマン』が放送された当時、多くの人は白黒テレビで見ていた印象と合わせたかったのと、その中で変身するオカルンは、ウルトラマンの赤が差し色で見えれば印象に残るだろうし、ヒロイックさをエモーショナルに強調できると思ったからです。ちなみに変身音もウルトラマンを参考にしています。音響効果の八十(正太)さんのおかげです、音の幅と手数が非常に多く怪奇な世界観を大きく深く広げていただいています」
山代監督は、「ダンダダン」において、さまざまな作品の要素を取り入れ、考え抜かれた演出で原作の魅力を表現しようとしている。そうしたアイデアはどのようにして生まれているのか。
「個人的な話になってしまい恐縮ですが、私自身はスティーヴン・スピルバーグやロバート・ゼメキスなど、1980、90年代の監督の映画がすごく好きです。その理由は、画で脚本以上のものを端的に語るために随所に工夫が凝らされており、見せ方も考え抜かれているものが多くカメラワーク一つとっても作品に意味のある形になっているものが多いと感じるからです。カット割やカメラワークもスマートで、見せるべき2、3個の情報をワンカットで処理したりしています。流れるように進み、演出家のこれ見よがしさがあまり感じられないのも素晴らしいと思います。全てが作品のために揃えられている感じがします。例えば、机の上にモノを置く、モノを置いたことに反応して表情が変わった人がいるという場合、通常はモノを撮って、次に反応を撮る。でも彼らは、モノや机に顔を反射させてキャラクターの反応も一緒に撮ってしまいます。上記は例の一つですが、ワンカットで済ませたり、見えないものを画で語ろうとする工夫が随所に見受けられます。実はこういった細かい工夫を積み重ねることで情報の密度を上げてテンポの良さ、完成度に貢献していたりします。彼らの作品は時間は短いですが、すごく密度がある感じがするのは、こういうことをめちゃくちゃ細かくやっているからだと思います。これを私はアニメでやりたいし、目指したいのです(できているとは言っていません)」
ただ、「演出家のエゴが見えてしまうものは、自分は目指していない」と強調する。
「映像は“印象”の積み重ねだと思うので、情報を出すタイミングや順番をちゃんと交通整理することは必要なのだと思います。それを『これ格好いいだろう』『すごいだろう』だけ、のような見せ方に感じさせないように、物語の進行の上で必然性を持った形で入れ込むということにすごく気をつけています」
山代監督は、一時期、自分が見た映画の気になったシーンをコマ割にしてまとめる作業をしていたこともあるという。
「自分の中で表現の辞書のようなものを作りたいと思ってやっています。私は凡人ですから、先人や偉大な演出家、監督のアイデアを借りさせていただいてそれを混ぜながら制作している感じです。例えば、『怖い』と感じたシーンがあったら、なぜそう感じたのかを分析していく。それはカメラワークかもしれないし、お芝居のタイミングなのかもしれない。心が動かされたことは確かなので、その起因先は何かを分析する感じです。それを構成するものを分解して考えていくと、『これがあるからそう感じるのかもしれない』と、見えてくるものがあります。それを自分が『怖さ』を演出したいシーンで要素の一つとして組み込んでみる。自分が感じたものを証明するためにやっているところもあるかもしれません。もちろん作品に合うものを選んでたくさんの作品の要素と組み合わせて混ぜます。自分にできる作品への貢献先がここだと思うので、全ては作品のためにできることを全力でやって完成度に貢献したのです」
山代監督の演出がちりばめられたアニメ「ダンダダン」。今後もどのような映像を見せてくれるのか、注目したい。
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