ドラゴンボールDAIMA
第11話 デンセツ
12月23日(月)放送分
「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の堀越耕平さんのマンガが原作のテレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」の第7期が、読売テレビ・日本テレビ系で5月4日から毎週土曜午後5時半に放送される。第7期は、ヒーローと敵<ヴィラン>の戦いがいよいよ最終局面を迎える。第6期では、ヒーロー側の麗日お茶子と、敵<ヴィラン>のトガヒミコが対話する重要なシーンが描かれた。最終決戦に向けて、麗日お茶子役の佐倉綾音さん、トガヒミコ役の福圓美里さんに、因縁とも呼べる二人のキャラクターの関係性について熱く語ってもらった。
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福圓さん 彼女の中で何かが明確に変わったのは第6期のトゥワイスの事件からだと思います。張り付いたような笑顔と、可愛らしい振る舞いが、彼女の中で多少無理のあるものだったということが分かって、トゥワイスの件をきっかけに、素の顔がどんどん見えてくるようになった。私的には、ようやくトガちゃんの中心部に近づけたというか。彼女の人間性がより分かりやすくなったのがうれしい半面、前みたいに振る舞うトガちゃんが見たいなと思うことも増えてきました。悲しい顔、スンとした顔をしている時は本音をしゃべっている時なのですが、第6期はそんな顔が多かったなと。
福圓さん 大きかったと思います。それまでは、自分を心配してくれて、認めてくれて、大事にしてくれる家族みたいな存在がいなかったので。トガちゃんがトゥワイスのことを「お兄ちゃんみたいに思っていた」というシーンもありましたけど、初めて彼女の中に芽生えた「大事な身内」という気持ちだったような気がします。
佐倉さん トゥワイスとトガちゃんのエピソードはお茶子にとっては知らない話なのですが、やっぱり「ヒロアカ」ファンの自分自身は感情移入してしまって。特に、仁くんの最期が描かれた回(第116話)は、特殊エンディングだったんですよね。ストーリーとエンディングテーマの歌詞がリンクして、涙が止まらなくて。
福圓さん 特殊エンディングは、私も放送を見てびっくりした。知らなかったから「ふお!」って声が出て(笑い)。ただでさえ傷心の我々の気持ちをえぐってきやがった!と思って。
佐倉さん 私は、あそこで明確に敵<ヴィラン>を敵<ヴィラン>として見られなくなってしまいました。でも、それとは別にお茶子としての「敵<ヴィラン>の気持ちが理解できない」「トガちゃんが何を考えているか分からない」という気持ちも痛いほどよく分かって。
佐倉さん お茶子として大きい山だったのが「未成年の主張」でした。それまでは、第2期の「爆豪VS麗日」の反響がたくさん届いていたのですが、初めてそれを超える反響がありました。原作を読んでいらっしゃるファンの方に「あのシーンを楽しみにしています」と言っていただけることも多かったですし、アニメの放送後にも「よかったです」という反響をいただけて。ただ、自分の中ではあまり実は手応えがなくて……。
福圓さん えっ! そうなの?
佐倉さん そうなんです。「ヒロアカ」の現場って、追い詰められて追い詰められてOKテークが出る現場なのですが、「未成年の主張」の収録ではリテークがなかったんです。1カ所、聞き取りにくいところがあったようで「ここだけください」って。
福圓さん すごい!
佐倉さん だから、私自身「どういうこと!?」とびっくりして。とてもプレッシャーに感じていて、収録の直前まで原作をめちゃくちゃ読み込んで気持ちを作って、とにかく追い込まれていたのに、こんなあっさり終わってしまって「どうして!?」と。
福圓さん それは、最初から完璧だったってことだよね。
佐倉さん いや……。収録のテストでは、お茶子の緊張や震える気持ちを表現しながら、後半に向かってどんどんボルテージが上がっていくお芝居を持っていったんです。でも、音響監督さんからは「最初からフルスロットルでいいよ」と言われて。そのつもりで演じたら、さらっと収録が終わってしまって。なので、オンエアが実は怖かったというのが正直なところでした。
佐倉さん プレッシャーがとても大きかったですね。だからこそ、1回しかそのシーンを演じられなかった拍子抜け感があって。
福圓さん でも、完璧だったというか、素晴らしいお芝居だった。超感動したもん!
佐倉さん ありがとうございます……!
福圓さん 原作で名シーンと言われるシーンほど、(演じる側は)グッとなるんです。「未成年の主張」はマンガももちろんよかったけど、アニメでもやっぱり泣いたんだよな。
佐倉さん よかったぁ……。
福圓さん 収録の時の「最初からフルスロットルで」というのは分かる。そこが良かった。
佐倉さん さすが音響監督さんですよね。
福圓さん でも、そういうことってあるよね。収録の時は「あ、この方向なんだ。意外だな」と思っていても、出来上がりを見ると「これだわ!」みたいな。
佐倉さん ありますね~。
福圓さん 収録当時、実はあのシーンをそんなに大事なシーンだと思っていなかったんです。この後のトガちゃんにとって、根底になるくらい大切なシーンと思っていなくて。というのも、当時はトゥワイスのことで頭がいっぱいで、トガちゃん自身も、何がしたいのか明確なものがないままお茶子ちゃんに会いに行っているところがなくもないというか。トガちゃんにとっては、大事な人の死というのも初めてで、怒り、悲しみ、不安でいっぱいだけど変に頭は冷えている。でも理性的かというとそうではなくて、いつもはお茶子ちゃんを前にすると、お茶子ちゃんに気持ちを全部向けるけど、あのシーンでは、トゥワイスのほうに引っ張られたまま会話していたから、今までトガちゃんを演じている時とは、随分違う身体性だったような気もします。
佐倉さん お茶子はそんなトガちゃんを前にしてワケが分からず。何がしたいのか、何が言いたいのか、と。
福圓さん そうだよね。分からないよね。
佐倉さん 全く分からなくて。私自身の中での分からなさと、お茶子の戸惑いがリンクしていました。そして最後にトガは、ポツっと独り言を言い残して去って行く。あそこがお茶子的にもずっと引っかかっていて、「どういうことなんだろう?」と。
福圓さん そうだよね。でも、あれが最終決戦の前の最後の対話かもしれないし、お茶子ちゃんの人生もあそこでちょっと変わっているくらいの話で。
佐倉さん あのシーンはお互い別れた後に、1人で反すうすることが多かった気がします。
佐倉さん 堀越先生が公言されているように“対になる存在”として、お互い自分が持っていないものを持っている、ないものねだりの関係性で。境遇や育ち方、恐らくは持って生まれた素質も真逆なのではないかと。もしも、普通の学校で出会ってクラスメートになったとしたら、お互いが持っていないものを分かち合えて、学びを得て、親友になれていたかもしれない。トガちゃんが持っている、立場も何も考えずにデクくんに「好き」と言える素直さ、ウソをつかないところは、お茶子としては深層心理で憧れている部分もあったのかもしれないなと。
福圓さん 私、最初の頃は、どうしてトガちゃんはこんなにもお茶子ちゃんに執着するんだろう?と疑問に思っていたんですよ。でも「ヒロアカ」が話数を重ねるにつれて、私福圓自身がお茶子ちゃんのことを羨ましく感じている、と気付いたんです。屈託のない感じとか、誰とでも仲良くできる健康的な可愛さとか。 少女らしい弱さや傷つく様すら周りを味方につける愛らしさとか。お茶子ちゃんを演じている綾音ちゃんにも同じような印象がある。闇のない可愛さというか。だから、「未成年の主張」をテレビで見ている時に「あ、いいなぁ」って思ったんです。「そういう女の子だったらよかったのにな」「私もこういう演じ方ができたらいいのにな」って。お茶子も綾音ちゃんも羨ましく感じた。そこで、トガちゃんがお茶子ちゃんに憧れた理由は「これか!」って思ったんです。
福圓さん 根本はトガの強烈な自己否定から始まっているとは思うのですが、お茶子ちゃんになりたい気持ちもあるし、お茶子ちゃんが愛する人の中に自分も入れてほしいという両方の気持ちがあるのかなと。ただ、トガちゃんは相手の血を吸って、その人に変身できる“個性”を持っていることもあって、お茶子を排除して自分が成り代わろうとする方向にいきかねないところもある。でも、トガちゃんは嫉妬や攻撃の気持ちは一切ないんですよね。これって、最近の若い女の子の気持ちに近いかもしれないと思ったんです。今は双子コーデという文化があるじゃないですか。「あなたが好き。私のことも好きでいてほしい。だから、みんなから見ても“一緒のもの”になって、仲良しだって思われたい」というのって、最近の女の子の感覚だなって思うんです。
佐倉さん 今、すごく納得感がありました。そこまで考えられていたとしたら、堀越先生すごいですね。
福圓さん 私の勝手な解釈だから先生がどうお考えかは分からないけど、いろいろ考えてしまう奥深いキャラクター造形だよね。
佐倉さん 福圓さんの話を聞いていて思ったのですが、私はあまり双子コーデとかに憧れを持たないタイプなんです。
福圓さん うん、持たなさそう。
佐倉さん そうなんです(笑い)。多分お茶子寄りの考えなんです。みんな違う個性があるから良いという。だから、自分のほうに寄ってくると、ちょっと遠ざけたくなる。あなたにはあなたの良さがあるんだから、私に近づいて同一性を持つ必要はないよ、って。
福圓さん まさにお茶子ちゃんのトガちゃんに対する反応ってそうだよね。
佐倉さん まさにそれだと思いました。
佐倉さん 私は、ずっと前にご一緒した作品から福圓さんの演じるキャラがすごく好きで、福圓さんのお芝居にはずっと注目していて。トガちゃんを福圓さんが演じると知った時、自分の中でぼんやりしていた声をまとったトガちゃん像が一気に輪郭を帯びた感じがしたんです。ただアピールをするメンヘラな女の子ではなくて、自分のことを「普通」と思って、1人でも楽しそうに生きているけど、客観視すると普通じゃない女の子を、すさまじいバランス感で演じておられて。お茶子が彼女を遠ざけようとする理由が、声でも説得力を持ち始めたというか。私自身は、トガちゃんを演じる福圓さんはすてきだなとすごく思うけど、同時にトガちゃんの底知れぬ気味の悪さも伝わってきて。アニメになって、すさまじく好きになったキャラクターだなと思いました。
福圓さん うれしい! あんまり大きい声では言えないですけど、正直トガちゃんを演じるのが難しくて……。ようやく種明かしされてきているけど、「うわ、解釈違いをしていた」ということもゼロじゃなくて。それでも、私が逸脱しないでいられるのは、いつもスタッフさんが、調整して導いてくれるから。自分で作って、コントロールした役じゃなくて、皆さんに作っていただいたと思っているんです。
佐倉さん 私、こうやって福圓さんのように、難しいことを難しいって素直に言えないことのほうが多くて。だから先ほど、福圓さんが私のことを「天真らんまんで闇がない」と言ってくださったんですけど、福圓さんから見た私のイメージが、私の中の福圓さんのイメージなんです。私はすごく人の好き嫌いが激しくて、どちらかというと闇が深いし……(笑い)。
福圓さん そうなの?(笑い)。そんなふうに思ったことなかった。でも、面白いね。長く演じていると、キャラクターと融合してくるね(笑い)。
佐倉さん そうですね(笑い)。こういう話は面白いですよね。
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