新潟市内で開催中の長編商業アニメの映画祭「第1回新潟国際アニメーション映画祭」で3月18日、トークイベント「『AKIRA』の映像と作画の魅力」が開催された。アニメ・特撮研究家の氷川竜介さんが、大友克洋さんのマンガが原作の劇場版アニメ「AKIRA」がアニメ業界に与えた衝撃、影響などについて語った。
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「AKIRA」は1982~90年に「週刊ヤングマガジン」(講談社)で連載されたマンガ。劇場版アニメが1988年に公開された。氷川さんはアニメ「AKIRA」を「昭和最後の大作。『となりのトトロ』『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』と同時期。平成になると『機動警察パトレイバー the Movie』『魔女の宅急便』が出てくる」と説明。
「AKIRA」は、ハイクオリティーな映像も話題になった。監督も務めた大友さんの現場の関わり方を「森本晃司さん、なかむらたかしさん、大友さんが3トップとして現場を構築しようとした。大友さんの仕事は、宮崎駿の仕事と一緒。絵コンテもレイアウトも描く。キャラクターのルックを含めてコントロールしている。完全なアニメーション作家として全てを統括している」と語った。
大友さんはマンガの歴史を変え、「大友以前、大友以後」とも言われている。「1970年代くらいまでは、手塚治虫っぽいキャラ、それではなければ劇画系だった。大友さんは日本人をそのまま描く。様式として全体的に格好いい。緻密で正確なんです。ちゃんと鼻の穴があり、服のしわ、材質も分かる緻密さがある。解剖学的な正確さ、科学的根拠のあるリアリズムを突き詰めている。プロポーション、空間の取り方などの基準が変わった」と分析。
「AKIRA」は、その後のアニメにも大きな影響を与えたといい「1980年代、1990年代の先鋭的なアニメの差は、クオリティー、リアリティー、情報量で、90年代は動き、描き込みが細かくなり、リアルを求めるようになる。『AKIRA』に集まった沖浦啓之さん、井上俊之さん、北久保弘之さんらが、大友さんのリアリズムに触れて、リアル派みたなものができた。若手が集まった梁山泊的なところもあった。そのエッセンスがプロダクションI.Gとかにいく」と話した。
「AKIRA」には当時若手だったアニメーターが集まった。「AKIRA」の現場を経験した若手がその後、さまざまな作品を手掛けていった。若手が集まった理由を「合作ブームのせいです。(当時、アニメ制作会社が)海外と合作を作った。大塚康生さんも合作を作ったし、出崎統さんも米国に行っていた。ベテランがそっちを指導していた。空洞化現象が起きて、いきなり20代でOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)を作るなんてことも起きた。合作が途絶えたのは円高のせいです」と説明した。
「第1回新潟国際アニメーション映画祭」は、長編アニメのコンペティション部門を設けたアジア最大の祭典を目指し、新潟から世界にアニメという文化を発信していくのが狙い。GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」「機動警察パトレイバー」などで知られる押井守監督が審査委員長を務めることも話題になっている。3月22日まで。
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