りんたろう監督:14年ぶり新作アニメ 「山中貞雄に捧げる漫画映画『鼠小僧次郎吉』」 大友克洋がキャラデザ 小山茉美出演

りんたろう監督の新作アニメ「山中貞雄に捧げる漫画映画『鼠小僧次郎吉』」の一場面(C)山中貞雄/「鼠小僧次郎吉」製作委員会
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りんたろう監督の新作アニメ「山中貞雄に捧げる漫画映画『鼠小僧次郎吉』」の一場面(C)山中貞雄/「鼠小僧次郎吉」製作委員会

 アニメ「銀河鉄道999」「幻魔大戦」などで知られるりんたろう監督の約14年ぶりとなる新作アニメ「山中貞雄に捧げる漫画映画『鼠小僧次郎吉』」が制作され、長編商業アニメの映画祭「第1回新潟国際アニメーション映画祭」で上映されることが分かった。新作は、1933年に公開された山中貞雄監督の映画「鼠小僧次郎吉 江戸の巻」をりんたろう監督がサイレントアニメ化した。「AKIRA」などで知られるマンガ家の大友克洋さんがキャラクターデザインを手がけ、作曲家の本多俊之さんが音楽を担当する。スタジオM2、ジェンコ、仏のMiyu Productionsが制作する。小山茉美さんが弁士役として出演する。3月20日午前10時に新潟市民プラザ(新潟市中央区)で上映。

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 新作は、江戸の街を舞台に義賊・鼠小僧次郎吉の活躍が描く「鼠小僧次郎吉-江戸の巻」をオマージュしたアニメ。山中監督の「人情紙風船」を見て「はかないラストシーンに心揺さぶられたまま映画館を出たことを今でも覚えている」と感銘を受けたというりんたろう監督は、「丹下左膳 百萬両の壺」「河内山宗俊」など山中監督の「モダンな絵作りと人物造形の巧みさにどっぷりハマってしまった」とコメント。

 「一方ノートの隅っこにパラパラマンガを描いたり戯画を描いたりしていた山中の一面を知ったとき、仲間内からロングロングアゴーと呼ばれた長い顎(あご)と無精ひげの人間・山中貞雄が一層好きになりいまに至っている。ここに企画した短編アニメは山中貞雄脚本の『鼠小僧次郎吉 江戸の巻』を基に私たちチームが捧げる映画監督・山中貞雄へのささやかなオマージュです。戦地で書き残した日誌に『人情紙風船が山中貞雄の遺作ではチトサビシイ』と記した山中さんに私たちの作品を届けることができればチトうれしいのです」と思いを語っている。

 映画祭は、3月17~22日に新潟市民プラザほかで開催される。コンペ部門のほか、招待作品による「イベント上映」、近年の作品を集めた「世界の潮流」、作家、ムーブメントの再評価をする「レトロスペクティブ」などで約50本の作品を上映する。押井守監督が審査委員長を務める。

 ◇りんたろう監督のコメント全文

 [ロング ロング アゴー]

 長い顎に無精ひげ、頭に手ぬぐいを巻き、薄っぺらなげた履きという風貌でサイレントからトーキー時代の映画界を28歳という若さで駆け抜けて逝った映画監督・山中貞雄。その名前を知ったのは私が石ノ森章太郎「佐武と市捕物控」のテレビアニメ作品を作っていたときだった。

 初の時代劇アニメということでサイレント時代から活躍していた松田定次監督が監修としてアフレコに立ち会っていた。その松田氏から山中貞雄という監督の素晴らしさを聞かされたが作品を見る機会もないまま歳月が過ぎたころ、銀座の雑居ビルの地下にある並木座という名画座で山中貞雄監督作品「人情紙風船」に出会った。全編見る者に重苦しく迫ってくる悲壮感が漂う映画だったが、その物語を象徴するような紙風船が淡い光を帯びながら路地のどぶ川をゆっくりと流れ去っていくはかないラストシーンに心揺さぶられたまま映画館を出たことを今でも覚えている。

 その後VHSやDVDが出たことで「丹下左膳 百萬両の壺(つぼ)」「河内山宗俊」を見ることができた。「丹下左膳 百萬両の壺」の軽妙洒脱(しゃだつ)な現代的なタッチで簡潔にまとめ上げた手腕に脱帽し、「河内山宗俊」の微に入り細にわたった山中のモダンな絵作りと人物造形の巧みさにどっぷりハマってしまった。

 一方ノートの隅っこにパラパラマンガを描いたり戯画を描いたりしていた山中の一面を知ったとき、仲間内からロングロングアゴーと呼ばれた長い顎と無精ひげの人間・山中貞雄が一層好きになりいまに至っている。

 ここに企画した短編アニメは山中貞雄脚本の「鼠小僧次郎吉 江戸の巻」を基に私たちチームが捧げる映画監督・山中貞雄へのささやかなオマージュです。戦地で書き残した日誌に「人情紙風船が山中貞雄の遺作ではチトサビシイ」と記した山中さんに私たちの作品を届けることができればチトうれしいのです。

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