原秀則:恋愛マンガの名手に聞く「制作の裏側」 “しょも恋”ドラマ化への思い

連続ドラマ「しょうもない僕らの恋愛論」の一場面(C)原秀則/小学館/ytv
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連続ドラマ「しょうもない僕らの恋愛論」の一場面(C)原秀則/小学館/ytv

 40代で独身、人生の停滞期に入った筒見拓郎(眞島秀和さん)が主人公のヒューマンドラマ「しょうもない僕らの恋愛論」(読売テレビ・日本テレビ系、木曜午後11時59分)。「仕事も人生もこのままでいいのか……?」と漠然とした不安を抱える拓郎が、大学時代に愛した女性の娘・くるみ(中田青渚=せいな=さん)と出会うことで、過去と対峙する作品だ。原作者は「冬物語」「部屋においでよ」など人気恋愛マンガを生み出してきた原秀則さん。「簡単なことを遠回りして見せたい」と語る原さんに、制作の裏側を聞いた。

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 ◇“女子高生”のセリフに苦労

 「しょうもない僕らの恋愛論」は、2019年~2021年に「ビッグコミック」で連載。学生時代の恋愛に「やり残した思い」を抱えていた拓郎のもとに、20年前に愛した谷村安奈からSNSの友達申請が届く。しかし、目の前に現れたのは安奈の17歳の娘・くるみだった。

 「おじさんと女子高生の恋愛モノ」を編集部からリクエストされ、制作が始まった今作。当初は、原さんも担当編集者も「女子高生」という存在がまったく分からず、苦労したというが、20歳年下の女性編集者が加わったことで「友達申請」という物語の出だしが決まった。

 拓郎からのアプローチではなく、女子高生のくるみからグイグイと行くことになるのだが、女性編集者からは「今の女子高生はこんなんじゃない!」と“ダメ出し”の嵐。くるみの感情を描くのは難しく、なかなかセリフが書けない苦労もあったが、編集者に支えられ軌道に乗っていく。

 「この作品だけではないんですけど、僕は自分で案を考えてやる、というのはことごとく失敗していて。編集さんが『こんなの(アイデア)はどう?』って持ってきてくれて、その中のものに食いつく、というので今まで40年やってきました(笑い)」

 ◇大切にしているのは「おしゃれな会話をさせること」

 これまでの恋愛マンガ制作の経験を生かして「三角関係」を作ろうと、拓郎に20年以上も片思いをしている絵里(矢田亜希子さん)のキャラクターが誕生した。1巻では、絵里が、バー「ちゃらんぽらん」のマスターから、拓郎への思いを「ハッキリさせる気はないのかい?」と聞かれるシーンがあるが、これには元ネタがあるという。

 「スターダストレビューの楽曲『トワイライト・アヴェニュー』に『お互いに恋人になれるよな ドラマティックなきめ手があれば 今ごろは優しい腕の中で 黄昏を見つめていたはずね』という歌詞があって。その歌を聞いたときに、絵が浮かんで、どこかでずっと書きたいな、というのがありました」

 そんな原さんが、作品作りで大切にしていることは「おしゃれな会話をさせること」。「好きです」「愛しています」ということを直接言わずに、読者にわからせるような会話だ。

 「ある場所について『次は好きな人と行きたいんだよね』と最初の方で言っておいて。いざ告白のときに、その場所に一緒に行こう、と言うような……。そういう会話の回り道をしたいな、というのはずっと思っています。あの手この手で、簡単なことを遠回りして見せたい」

 しかし、できないことも多々ある、と明かした原さん。「(読者から)『あのセリフは、これのための前振りだったんですね』と言われるのですが、違います(笑い)。四苦八苦しながらつながりを探していて。でも、そういうのがたぶん楽しいんでしょうね」と話した。

 今回のドラマ化が決まった際には「おじさんのドラマだけどいいの?」と驚くと同時に、うれしかったという。ドラマの映像は「淡々と、ゆっくりゆっくり進んで、映画のよう」と感じたといい「(マンガの)雰囲気が伝わっていたんだと思って、うれしかった」と話す。

 最後に、視聴者に向けて「ゆる~い感じでリラックスして、力を抜いて見てもらえれば。一人でも多く、雰囲気にひたれる人がいればいいなと思います」と呼びかけた。

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