伊瀬茉莉也:「ジョジョ」 フー・ファイターズが“生きた証”を伝える キャラを凌駕するほどのパワーで

「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」の一場面(C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険SO製作委員会
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「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」の一場面(C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険SO製作委員会

 荒木飛呂彦さんの人気マンガ「ジョジョの奇妙な冒険」の第6部が原作のテレビアニメ「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」。第22話「天国の時!新月の時!新(ニュー)神父!」では、主人公・空条徐倫と共に戦ってきたフー・ファイターズ(F・F)の最期が描かれた。フー・ファイターズを演じる伊瀬茉莉也さんは、フー・ファイターズが“生きた証”を伝えるために「キャラクターを凌駕(りょうが)するほどのパワー」を持って収録に臨んだという。フー・ファイターズへの思い、収録の裏側を聞いた。

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 ◇「ジョジョ」は歌舞伎? “音”を重視

 「ジョジョの奇妙な冒険」は、「週刊少年ジャンプ」(集英社)1987年1・2合併号で連載が始まった人気マンガ。数世代にわたる個性的な悪人たちとの戦いを描いた壮大なストーリーや独特の擬音を用いた表現、独特な立ちポーズなどが人気を博している。第6部「ストーンオーシャン」はシリーズ初の女性主人公で、空条承太郎の娘・空条徐倫が、無実の罪で刑務所に収監され、脱獄しようとする。第13~24話が10月からTOKYO MX、MBSほかで放送中。第25~最終38話がNetflixで全世界独占先行配信中で、2023年1月6日からテレビ放送される。

 伊瀬さんは、「ジョジョの奇妙な冒険」のアニメシリーズに対して「声優としてお仕事している中で、『ジョジョ』のような熱量の高い作品に携わりたいと、ずっと目標にしていた部分があった」と思い入れを語る。フー・ファイターズ役としての出演が決まった際は「その思いがつながった」と感じたという。

 フー・ファイターズは、元々は湿地帯に生息するプランクトンにエンリコ・プッチ神父がスタンドを与えたことで誕生した、知性を持ったプランクトンの集合体。その後は、囚人・エートロの肉体で生きるようになった。伊瀬さんはプランクトンの状態からさまざまな形態のフー・ファイターズを演じた。

 「変化していくキャラクターではあるのですが、あまり難しく演じ分けをしようとも考えていませんでした。スタンド状態のF・Fは、(プッチ神父のスタンドの)ホワイトスネイクの命令を受けて“DISC”を守っている番人で、すごく誇り高い精神があるキャラクターだと捉えていたので、それがただ単に敵のスタンドというふうに映りたくなくて、信念、正義、美学のようなキャラクターにしたいと思っていました」

 当初は敵として登場したフー・ファイターズも、エートロの肉体を得てからは、徐倫たちの仲間になる。

 「完成形のF・Fは、純粋無垢(むく)というか。今までの知性高き高等生物の部分はどこに行った?というぐらい、抜けていたり、おちゃめだったり、子供に戻っちゃったみたいな部分もある。それは、その時その時の徐倫やエルメェスとの関係性を意識して演じました。そこが、F・Fが人間として生き始めたスタートだと思うので、そういう部分も大切にしていました」

 伊瀬さんは、収録で「ジョジョ」シリーズならではのせりふ回しを体感したという。

 「『ジョジョ』の作品は、口調に特徴があって、歌舞伎に近いというか。せりふも聞かせるところは、しっかり重きを置いて聞かせる。感情よりも音としての聞こえ方をすごく重視していて。それにのっとって演じたほうが、多分絵柄にも合うだろうなと思ってやっていました。ちょっと過剰に表現するというか。せりふ自体も『~じゃあないか』であったり、語尾の『ッ』であったり、原作の擬音のままにしゃべったりする。普通に生活をしていたら言わないような言葉なんですけど、『ジョジョ』の世界ではむしろそのほうが自然というか普通なので、それに慣れようという感じでした」

 ◇「思い出が細胞に勇気を与えてくれる」 フー・ファイターズの愛を表現

 第13話以降は、プッチ神父が放った刺客のケンゾーとフー・ファイターズの激しい戦いが繰り広げられた。伊瀬さんは、「役に負けない」という思いでバトルシーンの収録に臨んだ。

 「キャラクター自身が持ってるパワーに気圧(けお)されない。むしろ、それを凌駕できるぐらいのパワーを持って演じないと、F・Fが生きた証を画面を通して伝えることができないんじゃないかと思っていました。ケンゾー役の麦人さんは、普段は物腰の柔らかい方なんですけど、マイク前に立つと、百戦錬磨の仙人のようで、せりふを一言発せられると覇気が出るような感じになるんです。それに負けられない!と思って、F・Fと一緒に私も戦っていました。翌日の仕事のことは一旦忘れて、喉を全て使い切ってもいいというぐらい全力でやりました」

 プランクトンの集合体から“人間”として生き始めたフー・ファイターズは、徐倫やエルメェスと過ごした日々を思い出として大切にしているキャラクターでもある。伊瀬さんはフー・ファイターズの「思い出が細胞に勇気を与えてくれる」というせりふが印象に残っているという。

 「そのシーンの収録をする前の時期に、たまたまとある番組の収録で、自分の出身地の横浜に行く機会があって、20数年ぶりに小学校を訪れたんです。地元を歩いたりして、すごく懐かしくて、ここがあるから今の私があるんだなと。思い出の場所があるということが、どれだけ自分に勇気を与えてくれるのか、支えになっているんだということが、改めて分かったんです。すごくタイミングがよかった。なので、実感を伴いながらF・Fのせりふを言えたことがすごく大きかったです」

 第22話ではフー・ファイターズの最期が描かれ、伊瀬さんはフー・ファイターズの人間としてのスタートから最期までを演じることになった。どんな思いで役を全うしたのだろうか。

 「F・Fは、自分を犠牲にしたとしても、魂をつなげるというか。姿形がなくなったとしても、自分の魂のバトンを誰かが受け取って生きていれば、それで自分の思いを達成できる。自分を犠牲にしてもマイナスと捉えないような精神がF・Fにはあって。私は、そういうキャラクターを演じさせていただく機会が多くて、F・Fも『やっぱりそうなんだね』と思って。だからこそ大切に演じたいと思いましたし、そこから私自身が学べることもありました。自分以外の誰かを思う気持ち、愛みたいなものを持っているキャラクターなので、それは大事にして演じています」

 ◇絶対諦めない姿に励まされる 心に響くジョースター家の精神

 改めて伊瀬さんに「ストーンオーシャン」の魅力を聞いた。

 「どんなに絶望的な逆境の中に立たされても、困難に打ち負かされそうになっても、徐倫を筆頭にみんな絶対に諦めないんですよね。強い意志と信念を持って、全力で生きている姿にすごく励まされますし、『こう生きたい』と思わせてもらえる。『ジョジョ』シリーズを通して、どのキャラクターにも受け継がれているジョースター家の精神が人の心に深く響く。ストーリー全体を通して、絶対不可能を可能にするところに、見ているみんなも気持ちがすごく入るし、感動するんじゃないのかなと思います」

 今後も続いていく徐倫たちの戦いは、さらに激しいものとなりそうだ。

 「F・Fは、自分の生きた証をみんなに託して役を全うしたんですけど、これからもっとプッチ神父に迫って最終決戦が始まっていきます。しかも、ファントムブラッドから続いてきたジョースター家とDIOの因縁の決戦がここで一旦完結するという大事な章でもあるので、どの話数もお見逃しなきよう、最後まで一緒に見届けてほしいなと思います」

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