永野芽郁:「ユニコーンに乗って」で初のCEO役を好演 “巻き込まれ系”から度胸と愛嬌で新境地に

連続ドラマ「ユニコーンに乗って」で若手CEOの成川佐奈を演じた永野芽郁さん
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連続ドラマ「ユニコーンに乗って」で若手CEOの成川佐奈を演じた永野芽郁さん

 9月6日に最終話(第10話)が放送された連続ドラマ「ユニコーンに乗って」(TBS系)。自ら起業した教育系企業「ドリームポニー」の最高経営責任者(CEO)を26歳で務める主人公・成川佐奈が仕事と恋に奮闘する姿に、視聴者からは「勇気と元気をもらった」との声が多く上がった。その佐奈を演じたのが女優の永野芽郁さんだ。人気と実力を兼ね備え、スターへのさらなる階段を駆け上がる永野さんの魅力に迫る。

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 ◇天真らんまんさが役に投影

 「ユニコーンに乗って」は、「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」(フジテレビ系)などの大北はるかさんのオリジナル作。佐奈の元にある日突然、会社の雰囲気とは全く異なる元銀行員・小鳥智志(西島秀俊さん)が転職してきたことで、佐奈の仕事と恋の環境が一変して……という物語。

 永野さんが演じた佐奈は貧しい家庭に生まれ、十分な教育を受けられなかった過去をバネに、高卒から独学で勉強し会社を設立。「全ての人が平等に学べる場所を作る」という理念を掲げ、CEOとしてビジネスパートナーの須崎功(杉野遥亮さん)らと共に会社を成長させるという役どころ。永野さんは初めてのCEO役となった。

 佐奈は、資金調達やM&A(企業の合併・買収)といった会社の課題にぶつかり続けるが、決して理念を曲げることなく、持ち前の行動力で解決策を導き出し、視聴者の共感を呼んだ。

 特に印象的だったのは佐奈が涙を流すシーンだ。第1話(7月5日放送)では小鳥の励ましの言葉に、第6話(8月9日放送)では自身の母・美佳子(奥貫薫さん)と小鳥の本心からの会話に、第8話(8月23日放送)では森本海斗(坂東龍汰さん)の会社復帰にそれぞれ佐奈は涙し、その度にSNSで「涙が美しい」と話題になった。

 涙のシーンをはじめ、佐奈が視聴者から支持される魅力的なキャラクターになったのは、永野さんが持つ天真らんまんさがそのまま役に投影され、親近感を抱かせたからではないか。「お堅い」イメージだったり、ともすれば鼻持ちならない印象も与えやすいベンチャー企業のCEOという役どころを、爽やかで愛らしい永野さんが演じることで、作品の雰囲気が重くなりすぎることなく、テーマである「大人の青春」を体現できたといえる。

 ◇明るさ由来の度胸でプレッシャーはねのけ

 永野さんが飛躍を遂げるきっかけになった作品として、2018年度前期のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「半分、青い。」が挙げられる。2366人が参加したオーディションを勝ち抜いた永野さんは、左耳を失聴したヒロイン・楡野鈴愛(にれの・すずめ)の10代から40代の波瀾(はらん)万丈の人生を見事に演じきった。

 朝ドラヒロインという重圧を耐え抜いた永野さんは、翌2019年に映画「君は月夜に光り輝く」(月川翔監督)、ドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」でそれぞれヒロインを務め、注目を浴びた。

 近年の永野さんといえば、主演映画「地獄の花園」(関和亮監督)でヤンキーOLたちの抗争に巻き込まれる「普通OL」役、戸田恵梨香さんとのダブル主演ドラマ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」でさまざまな事件に巻き込まれる新人警察官役のような「巻き込まれ系キャラクター」としての好演が目立つ。

 子役時代から活躍し、確かな実力を持つ永野さんが「普通」や「新人」といった役を違和感なく演じられるのは、物おじしないピュアで愛嬌(あいきょう)のある表情、派手すぎない素朴なたたずまいが大きな要素として考えられる。そこから自然と愛される「巻き込まれ系キャラクター」が生まれるのだろう。

 そんな永野さんが「ユニコーンに乗って」では、自ら会社を設立し、会社の未来を切り開くCEOという「自立」したキャラクターで新しい顔を見せた。共演した西島さんは、永野さんについて「若くて、プレッシャーもあると思いますが、それを明るい力ではねのけていく、そういう才能を持っている方だなと。これからもスターになっていくんだなと感じて見ています」と同作のインタビューで評していた。「最初は戸惑いがあった」というCEO役を魅力的に演じた永野さんには、初めての役でも果敢に挑む、明るさ由来の度胸があることをうかがわせる。そして、その役をものにする実力も兼ね備えているのだ。

 振り返れば、「半分、青い。」の制作統括の勝田夏子チーフプロデューサーも、永野さんをヒロインに抜てきした決め手について「おおらかさ、天真らんまんさ、度胸と愛嬌を持ち合わせている」と会見で語っていた。当時すでに持ち合わせていた永野さんの度胸と愛嬌という才能は、現在も損なわれることなく、「ユニコーンに乗って」でも発揮されたといえるだろう。

 永野さんは、9月30日に公開される映画「マイ・ブロークン・マリコ」(タナダユキ監督)にも主演。同作では、ブラック企業に勤めるガラの悪い主人公を演じ、喫煙シーンに挑戦したことも話題になっている。これからも、度胸と愛嬌を携えた永野さんが見せてくれる新しい顔に注目したい。

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