カムカムエヴリバディ:「夢物語にしたくなかった」 ジョーが30年たってもトランペットを吹けない理由

NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第93回の一場面 (C)NHK
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NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第93回の一場面 (C)NHK

 女優の上白石萌音さん、深津絵里さん、川栄李奈さんが主演するNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「カムカムエヴリバディ」(総合、月~土曜午前8時ほか)の第93回が3月14日に放送された。原因不明の病でトランペットを吹くことができなくなってしまった錠一郎(オダギリジョーさん)が、再び吹こうとするシーンが描かれた。

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 錠一郎はかつて、関西一のトランペッターを決めるコンテストで優勝し、レコードデビューも決まっていたほどの腕前。原因不明でトランペットが吹けなくなり、京都移住後も医者を探したり、治療法を探っていたが、完治には至らず、約30年が経過していた。錠一郎がかつてトランペッターとして活躍していたことを、娘のひなた(川栄さん)と息子の桃太郎(青木柚さん)も知らなかった。

 制作陣の間には、同作で音楽を担当する「米米CLUB」の金子隆博さんが42歳の時、「ジストニア」という病気でサックスが突然吹けなくなるという経験をした事実が、念頭にあったのかもしれない。第20週の演出を担当した安達もじりさんは、「初期から脚本の藤本(有紀)さんは、錠一郎が途中で吹けなくなるということにしたいとおっしゃっていました。吹けなくなる状態をどう表現していくか議論し、その後の生活をどう描くかが難しかったです」と振り返る。

 第93回では、ひなたと桃太郎の姉弟げんかを止めるため、錠一郎は再びトランペットを吹こうとしたが、美しい音色を響かせることはできなかった。それはなぜか。

 錠一郎は最初にトランペットを吹けなくなったとき、「大事な人を付き合わせるわけにはいかへん」と結婚の約束をしていたるい(深津さん)と別れ、「トランペットを失って、大事な人を失って、いろいろ失ってもう死のうかなと思った」と当時の心境を明かす。しかしるいが救ってくれ、「ひなたと桃太郎のお父ちゃんとして生きられたらそれでいい、それで僕は幸せや」と吹っ切れた。だから、五十嵐と別れたひなた、初恋の小夜子に失恋した桃太郎に、「それでも人生は続いていく」という大切なメッセージを伝えたかったのだろう。

 結果的にトランペットを吹くことができないという描写にした理由を、安達さんは「本当は『またトランペット吹けるようになったらいいのにな』と、るいと同じ気持ちで願っていましたが、現実にはいろいろな原因で吹けぬまま、再起を果たせなかった方もいらっしゃると思います。あまり夢物語にしない方がいいなと、藤本さんと話していました」と明かしている。

 ただ、同シーンについては「錠一郎が音楽と関わっているという表現にしたいと話をして、そのきっかけになる場面にしました」とも明かす。今後、錠一郎が音楽とどのように向き合っていくのか注目したい。

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