山本千尋:「いつでも準備できていることが私の使命」 のぞかせる“アクション”への矜持 主演の縦型アクションムービー「EXTREME ACTION」撮影秘話も

縦型アクションムービー「EXTREME ACTION」で主演を務めている山本千尋さん
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縦型アクションムービー「EXTREME ACTION」で主演を務めている山本千尋さん

 特撮ドラマ「ウルトラマンジード」(2017年)のヒロイン・鳥羽ライハ役などで知られ、得意の中国武術を武器に“新世代アクション女優”として活躍する女優の山本千尋さん。ニュースサービス「LINE NEWS」の動画コンテンツ「VISION」で現在配信中の縦型アクションムービー「EXTREME ACTION」では、かつて公安警察特殊部隊員だった兄を殺した内部の犯人に復讐(ふくしゅう)するため組織に潜入するユウナ役で主演。得意のアクションを披露している。山本さんに、今作の撮影やアクションへの思いなどを聞いた。

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 ◇役作りはしないタイプ

 物語は、かつて公安警察特殊部隊員であった兄を殺されたユウナ(山本さん)が、内部にいる“犯人”に復讐するため、組織に潜入するところから始まる。危機に瀕したユウナは、驚異的身体能力を持つ謎の男・シュウ(ZENさん)に救われるが、シュウと死んだ兄の驚きの関係を知り、事態は急展開を見せる……という展開だ。

 幼いころから中国武術に親しみ、世界ジュニア武術選手権大会で金メダルを2度獲得した経験を持つ山本さん。配信中の同作でも得意のアクションを披露している。山本さんは「アクション作品にはこれまでにもいろいろ携わらせていただきましたが、全編アクションでしかもドラマ仕立て、というのは初めての試み。スマホ時代でしか作れないであろう新しい挑戦に臨めたことは、今まで誰もしたことがないというだけで特別のように感じ、ありがたく思いましたし、撮影が楽しみでした」と撮影に臨んだ心境を明かす。

 演じるユウナは、公安警察特殊部隊員であった兄を殺されたことで、内部にいる犯人に復讐するため組織に潜入する、という役どころ。役へのアプローチを聞くと、山本さんは「役作りはしないタイプ」といい、「役作りをしてしまうと、決めた型にはめてしまうところがあって。私ひとりで作品を作っているわけではなく、みんなで作る作品だから、『ユウナはこういう人間だと思う』と決めつけた役作りはしたくなくて。現場で感じたものを表現した方が性に合っているんです」と真意を説明する。

 そう考えるようになったのは、以前に三谷幸喜さんが監督、脚本を務めたAmazon オリジナルドラマシリーズ「誰かが、見ている」に出演したことがきっかけだった。「三谷さんに『あなたは型にはまりすぎて、抜け出せないときがある』と言われたんです。武術もそうですが、ひとつ決めると、型から抜けることって難しい。だから柔軟に対応できるようにしています。正解は出てこないと思うけど、自分だけで作るものではない、ということは確実なので。ちょっとやってみてだめだったら変えてみる、という柔軟性が欲しいので、あまりがっちり役作りしないようにしています」と山本さんは語る。

 もともと自分ひとりで練習して、不安を取り除こうというタイプ。「自主練が大好きなんですよ(笑い)。『誰かが、見ている』はコメディーだからこそいろんな人との掛け合いが大事なんですが、自分が練習してきたものをすべてぶつけてしまったんです。そうしたら、佐藤二朗さんに『今は俺と芝居しているんだよ』とアドバイスいただいて……確かにそのとおりだな、と。誰かと演じるからこそのお芝居で、自分のプランだけで動くのはお芝居じゃないなと思って……そこから意識が変わってきましたね」と心境の変化を明かす。

 ◇慣れない縦型アクションに苦戦も…

 山本さんといえば、3歳から親しんでいる得意の中国武術を生かしたアクションが代名詞。今作に限らず、作り手側の期待に応えるため、いつオファーを受けても対応できるように準備は欠かさないという。「毎日体を動かすのは、必ずすることです。アクションに関しては『いつでも準備できていますよ』と言えることが私の使命だと思っているので、体はずっと動かしています。ガンアクションなどチャレンジしたことのないジャンルの場合はイチからのスタートになりますが、そこについていくための体力などは自分自身でどうにかなるものだから、そういうことだけでも最低限の準備はしておこうと思っています」とアクションへの矜持(きょうじ)をのぞかせる。

 そうした上積みに加え、今作ではオファーを受けてから撮影までの期間が短かったため、短期間に毎日、アクション稽古(げいこ)をした。「舞台の通し稽古の真っただ中で、その前後にアクション稽古が入っていたんです。私は体を動かすことがリフレッシュ法なので、アクション稽古に救われた自分もいました」と振り返る。稽古では、ともに主演を務めるパルクールの第一人者・ZENさんとも合同練習を行った。ZENさんについて、山本さんは「久しぶりにアスリートのオーラに圧倒されました」といい、「アスリートって『1位になりたい』という野望がオーラに出ているんです。ZENさんからもそういう部分がメラメラ感じ取れました。私も武術選手時代はこういう感じだったかなと、思い出させてもらいました」と語る。

 アクション稽古は楽しいものだったが、慣れない縦型アクションに「苦戦はしました」と山本さん。「やっぱり縦型の画角にアクションを収めるということが難しかったです。面白かったけど、画角が狭まるという意味では、不自由ではありました。横型に慣れてしまっているので、自由に動いてしまうと『どこで動いていましたか?』というぐらい存在がなくなってしまう」と苦労を明かす。ただ、「縦型ならではの遠近感や、上下の振り幅は非常にかっこいいですし、より出演者の目線に近くて、アトラクションに乗っているかのような自分たちの主観で映像が見られる。それは今のスマホ時代でしかできないぜいたくさだと思いました」と縦型ならではのメリットも語る。
 
 ◇“5万回斬られた男”が「大きな存在」

 これまでに「ウルトラマンジード」や「誰かが、見ている」、直近では連続ドラマ「着飾る恋には理由があって」などに出演してきた山本さん。共演してきた中でもっとも大きな存在は、山本さんがヒロイン役を務めた映画「太秦ライムライト」(2014年)で共演した“5万回斬られた男”の異名を持ち、今年1月に死去した俳優の福本清三さんだという。

 「私にとって、その人を超える人はきっといないというぐらい、大きな存在です。根っこは斬られ役で、主演をされても主演じゃないみたいなたたずまいで。オーラがすごくてかっこいいのに、ものすごく謙虚なんです。誰よりも先にセットに入って、毎日立ちっぱなしなのに座らない。17歳のときに初めての現場でその姿を見たことは、きっとこれから先、どんなことがあっても忘れない。福本さんと出会えたことは財産なんだと思っています」と思いを語る。

 山本さんは「今、このお仕事をさせてもらえているのは、中国武術があってこそ」と語り、これからは中国武術という武器を自身に与えてくれた恩師に恩返しがしたいと目標を明かす。また、17歳のときに時代劇の伝統を教えてくれた太秦の人々の志を表現していきたいと声を弾ませる。最後にこれからの挑戦を聞くと、「今後もいろいろな役を演じてみたい」と山本さん。20代の目標は、「劇団☆新感線」の作品に出ること。「20代で上京して、初めて自分から見に行った舞台が『劇団☆新感線』の作品。立ち回りもあり、お芝居もあり、歌もありで……20代前半から『出てみたいな』という夢があったので、どんどん口に出していこうと思っています」とほほ笑みながら語ってくれた。

 「EXTREME ACTION」は、「LINE NEWS」の動画コンテンツ「VISION」で毎週木曜正午に配信中。全8話。

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