浜村弘一氏:「あつ森」「桃鉄」ヒットのカギはコミュニティー

浜村弘一さん
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浜村弘一さん

 ゲーム誌「ファミ通」の編集長などを務めたKADOKAWAデジタルエンタテインメント担当シニアアドバイザーの浜村弘一さんが4月26日、オンラインセミナーを開催。「あつまれ どうぶつの森」や「桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~」など2020年度のヒットタイトルについて、ユーザーによるコミュニティーでの盛り上がりが売り上げに貢献したことを挙げ、今後は巨大化するコミュニティーがさらに大きな影響力を持つとの認識を示した。

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 セミナーは「2021年春季 ゲーム産業の現状と展望 ゲームNEXT ~メタバースの正体~」と題して開催。コロナ禍に見舞われた国内外のゲーム市場やクラウドサービスの現状、eスポーツの今後などについて、データを基に解説した。

 浜村さんは、ポスト・マローンさんやトラヴィス・スコットさん、乃木坂46などの人気アーティストがゲーム内でバーチャルライブを行ったことを挙げ、ゲームの空間を活用した取り組みが活発化していることを指摘。「かつての『セカンドライフ』のような空間が出来はじめている」として、ゲームのメタバース(仮想世界)化が始まっているとした。

 コロナ禍での巣ごもりを背景として、任天堂を筆頭に家庭用ゲーム市場はいずれも好調だとする一方で、ゲームアプリは前年割れの企業も見られるとして、コンテンツの当たり外れが売り上げに影響したと分析した。

 ニンテンドースイッチは国内累計販売台数が1900万台(以下、台数、本数は3月28日現在)を突破したことを挙げ、据え置き機の限界とされる1000万台を大きく上回っていることを指摘。携帯機にあたるニンテンドースイッチライトの存在が大きいとした。

 また、「あつまれ どうぶつの森」が累計販売本数670万本、「桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~」が207万本以上の大ヒットを記録していることについて、ユーザーコミュニティーの存在が大きかったと分析。ツイッターなどでの継続的な盛り上がりが売り上げに貢献したとした上で、特にそれまで50万本前後の販売だった「桃太郎電鉄」については、今回メーカーが実況動画配信を解禁したことで200万本以上の大ヒットにつながったとしている。

 昨年11月に発売され、品薄が続いていたソニー・インタラクティブエンタテインメントの新型ゲーム機「プレイステーション(PS)5」については、海外より3カ月遅れての発売となった前世代機のPS4と比較して、今回は世界同時期の発売となったため在庫が少なかったことを指摘。現在では約58万台を販売しており、同期間のPS4に近い台数まで来ていると分析した。

 一方、PS5は専用タイトルの売り上げが、最も売れている「Marvel’s Spider-Man:Miles Morales」でも約4万6000本と、装着率が非常に低いことを指摘。PS5は、PS4のタイトルが遊べ、読み込み速度はPS4をはるかに上回っているため、PS4の人気タイトルを快適に遊びながらキラータイトルの準備のために購入していると解説。浜村さんは「ハードの切り替えでリセットがかかるのではなく、ハードのバージョンアップという認識。スマホの感覚で買い替えているのでは」と話した。

 浜村さんは、ゲームの主役がゲームIPからユーザーに移りつつあると指摘。人気のゲーム実況者やeスポーツプレーヤーを中心に、ゲームファンのコミュニティーが動画サイトやSNSを通じて巨大化しゲームをメタバース化させたと分析。キラータイトルの条件を、これまでのクオリティーの高さに加え、コミュニティーを刺激できて満足度を向上させられる要素が必要になりつつあると解説した。さらに、プラットフォーマーは、キラータイトルだけでなく、動画サイトやSNS、イベントなど、ユーザーコミュニティーをつかむ仕組み自体の取り込みも必要になってくると展望を述べた。

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